戦闘描写は楽しいけどうまくできてるのか不安できついですねー。
一子ちゃんとの仕合が何となくのきっかけとなり、武神と戦うことにしたのだが……。
「いや、それ完全に死亡フラグだろ。大丈夫か? なんなら後日に回すか?」
武神にまで言われちゃってます。
「あーもう大丈夫だっての。あんなの迷信とかジンクスの類だろ?」
「いや、確かにそうなんだが……、なんとなく……な?」
クソ!
なんか怖くなってきたぞ。
だがそんなもんで引いてたまるかってんだ!
「ふん、そんなことばっかり言って。倒してしまっても構わんのだろう?」
「ん?」
「それに、僕は負けられないさ。約束したからな……」
「お、おい?」
「だからどんなことをしたって生き残ってやる!」
「わかった、分かったからな?」
「僕、この戦いが終わったら結婚するんだ……。なんだろう、すごく体が軽い……。武神? ふっ、小娘じゃないか僕の敵ではないな」
「おい、馬鹿止めろ! わかったから! オイジジイ! 早く来い!!!」
はははは!
楽しくなってきたぜ!
もう自棄だ。
死亡フラグっていうんならありったけ立ててやろうじゃないか!
「なんじゃ? 仕合前だというのに騒がしいのう」
「来たかジジイ! 早く開始を! この馬鹿がこれ以上死に急がないうちに!」
「本当に騒がしいのう。……ん? 高坂よ、お主死相が……」
「全部聞いてるじゃないか! ふざけんなジジイ!」
おー、何の抵抗もなく殴られる鉄心さんとか珍しい。
結論、突っ込みは不可避。
――――
「ゴホン……、それでは気を取り直して、西方、高坂 虎綱」
「はい」
いや、さっきまであんなこと言ってたとは思えないくらい重々しい雰囲気を出している。
総代とか言われているのは伊達じゃないね。
「東方、川神 百代」
「応!」
こっちは切り替えと言うより始まったら始まったで楽しくて仕様がないといった感じだな。
もう爛々と目を光らせて正直怖いです。
まあ、望んでやっていることだ。
相手の強大さなど承知の上だ。
「それではいざ尋常に、始めい!!」
「無双正拳突き!!」
開始早々の正拳一撃は彼女のポリシーなのだろう。
予想できているだけにいつも通り伸び切った瞬間に力の方向を暴走させて手首の関節を外してやる。
「はああ!!」
しかし彼女は直す間も取らずに蹴りでの追撃、しかも崩しの取りづらい下段。
仕方がないので腿の部分が腰に当たるような位置へ、加えて衝撃の瞬間に僕が動く形で力を殺してやる。
「痛っ!」
そうすることで必死であるはずの一撃もせいぜい青あざができる程度に減退する。
次いで、化け物との戦いで捕まらないように距離を置くために、
「どっせい!」
腿を腋で挟むように持ち上げ、そのままひっくり返すように持ち上げる。
「おお!?」
もちろんこんな力技では武神にダメージを与えられるはずもないが、それでも捕まえられない程度の距離は空く。
再び、五体満足に回復している武神と対峙……
「おろ?」
おかしいな。
手首はずれたままだぞ?
「うん、鈍っていないようで安心したぞ……っと。くっ、うん嵌った」
ゴキンっ、と言う音と共に自分で嵌めやがった。
「あれ? 瞬間回復は?」
「あ? この前はこういうのいちいち回復していたせいでしてやられたからなー。今回は回数やられて駄目になるまでは自力で何とかすることにしたんだ」
うそーん。
「言っただろう? スマートに勝ちたいってな。喜べ! こうすればもし私の技でお前の防御を破れなくともだ、節約した分爆発できるぞ?」
ニヤリ、っと悪魔のような笑顔で、悪魔のような宣言をされた。
「死亡フラグってこれのことかな……?」
「ハハハ! とりあえずいろいろ試させてもらうぞ?」
そう言いながら、再び拳を放ってくる武神。
こちらのやることも決まっているとはいえ削りが不十分になりそうだ――。
「あー、クソ! やっぱりまだ破れんか。うん、そろそろ関節も限界かな……、っと。喜べ。わたしの回復一回ほど削れたぞ」
「あー……、やっとすか……」
十数回ほど手足の関節いろいろ外してやっと一回。
それでも、一度戦った慣れと言葉通りいろいろ試してくれているおかげで回数の割にこっちにもダメージは少ない。
「フム、少しでも打点をずらす余地があれば勢いを殺されるか……」
考え込む武神。
しかしその隙をついて動いたところでそう効果的な一撃を与えることもできない。
地力の開きと言うのは歯がゆいものだ。
「ふむ、ならばまだ未完成で疲れるが……」
行動の一つも見逃さないように見ていると、手のひらが光りだす。
気弾が来るか。
「かー」
一応受け流せるようになったとはいえこの前も結局削りに削られた。
「わー」
しかし慎重を期せばあの勢いの分、それを使えば僕でも武神に多少のダメージを与えることができる。
「かー」
故に身構えているが……
「みー」
いつもより溜めが長い?
これなら気を乱す意味でもこちらから攻められたか?
ニヤリと笑った武神にいやな予感が走る。
「波あああああ!!!!」
向かってくる気の塊に掠めるように身を逃し受け流そうとするが
「ヤバ!?」
その気の塊は回転しながらこちらに向かってきていた。
「ちいっ!!!」
落ち着け、幸いまだ未完なのか回転は荒い。
反撃――無理だ、荒くても流石にそこまで綺麗に受けきれそうもない。
回避――微妙、少し動揺した分最初の狙い通り掠めてしまう。
受け流す――一応可能、ただし力の流れが複雑な分、防御に全力を向けても体が流れる。
ならば、
「くあ!?」
接触点を最小にした上で全力で受け流すがやはり体が流れる。
反撃を完全に捨てたおかげでダメージは最小に抑えたが体が流れる。
「ハハハハハハ!! 禁じ手 富士砕き!!」
やはりできた隙に武神は詰め寄ってきていた。
だが
「獲ったああああああ!!!!!???」
先の気弾の受け流しに使って受けたダメージで痺れていた左腕を無理やり受け逃しの起点に受ける。
体制の分いつもより深めに受けてしまい砕けるような鈍い音が響く。
が、分かっていたからこそ痺れている左手を使った。
深く受けた分、受けた勢いは今まででも最大と言ってもいい。
右足を軸に回る勢いに乗せて武神の皮膚を無理やり掴み、勢いに任せて投げる。
「ぐあああああ!!!!?」
投げの勢いが強く、よろけてしまったが、尋常じゃないくらい痛がる武神。
しかし、武神に怪我は一切ない。
武神相手に考えた小細工、皮膚を使った投げだ。
美少女を自称して許されるほどの武神の美貌、そのやわらかい肌、前から疑問だったがやはりこれは鍛えようがなかったようだ。
痛覚だけが非常に敏感に働いていることだろう。
関節、脳、血流、皮膚、人間として鍛えるのに限界のあるものは共通だったようだ。
そしてこの手の痛みと言うのはいくら鍛えようとも慣れることのないもので、
「ああああああああ!!!」
隙だらけになった武神の顎に掌を当て、投げながら地面に叩きつける。
おそらく落とせたと思うが、掴まれでもしたらことなので急いで間合いを取る。
そして、少し空いた時間で素早く自分の左腕の不自然に曲がる個所に隠し持っている棒手裏剣を当てて、道着の帯を使って絞めつけておく。
「ふむ、そこまで、勝者……」
数瞬起き上がらない武神に鉄心さんが終了の合図をかけようとする。
「あああああああああ!!!!!! まだだああああ!!」
が、いまだ、脳が揺れているだろう武神が気力で起き上がり、意識が戻った瞬間に吠え、衝撃から出血していた口内もきれいに回復した。
「いや、モモよ。お前落ちておったろーに……」
「それがどうした! 私はまだ立っている! 水を差すな!!」
気を失っていた、と言う点を見て勝負ありと見る鉄心さんだが、
「いや、まだでしょう」
「そうだ! 私はまだ戦えるぞ!」
「しかしのう……」
「このくらいの時間じゃあ、僕じゃあ、止めさす前にやられてますよ。これじゃあ、納得できない」
そう、絞めにでも行ったならば、起き上がった武神に殺されていただろう。
ずっと目指していた勝利だが、こんな形でおまけしてもらったように手元に入ってきては納得できない。
「ふむ、両者がそう言うのならしょうがないのう……、続けなさい」
「ハハハハハ!!! そうだ、それでこそだトラ!! ああ、こんなふうにダメージを通してくるとは!痛さで我を忘れるなど久しぶりだったぞ!!」
「うわあ……」
完全に出来上がってしまっている武神に正直ちょっと早まったかなあ、と思いながらも、譲れないのだから仕方がない。
なに、絶望的な差なんて初めて負けた時からわかっていたことだ。
以上でした。
明日朝から予定があるので分けさせてもらいました。
前の一気に描いたしまとめるべきだったのかな?