せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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どもどもです。
ノートパソコンの熱がすごい季節だぜ……。
これってどうにかするいい方法あるん?


第二十九話 若獅子タッグマッチトーナメント前篇

 試験の翌週、今回の結果が張り出されることになった。

 39位、何とか三十位台で残留っと。

 正直今回は気が気じゃなかったぜ。

 

 「お、高坂、お前も見に来てたんだ。どうだった?」

 

 直江、椎名、師岡、クリスの三人が掲示板を見に来たようだ。

 

 「39-、なんとかSに残ったよ」

 

 「良かったじゃん。お、流石にクローン組は10位以内だな」

 

 「おお! 四位とは流石マルさん!」

 

 「いや、一応年上じゃ……なんでもありません」

 

 なぜこの手の話題は突っ込みたくなってしまうんだろう。

 間違いなく死地だとわかっているのに。

 

 「そう言えば今回ワン子の点数が異常によかったんだけど。高坂に教えてもらったってたんだ。どんな教え方したの?」

 

 「へー、どのくらい取れてた?」

 

 「なんと! あのワン子が平均越えを数教科出した!!」

 

 うわぁ……、うん、うわぁ……。

 

 「あー、一日でそれならまあ妥当なところなのかな?」

 

 「トラ、あのワン子だよ? 今まで大和が頑張っても平均には届くことがなかったんだよ?」

 

 「あはは、僕も目を疑っちゃったよ」

 

 「あの犬、そんなに酷かったのか……」

 

 なんかクリスを除いた三人、一子ちゃんの成績をよく知る三人に尊敬の目を向けられている。

 

 「いや、特別なことはなくて、考えさせるの諦めて覚えさせただけだよ?」

 

 そもそも体を動かす人間と言うのは瞬間的な記憶には意外と長けていたりする。

 難しいこと一切のぞいて答えになりそうなもの只管おぼえこませてみたのだ。

 

 「なるほど……、躾と似たような感じか」

 

 納得する直江。 

 躾っておい。

 

 「そう言えば、一子ちゃんが犬チック、てのは認めるとしても服従のポーズとかあれはやり過ぎだろう」

 

 「な! お前はあれを見たのか!? いや、なるほどそう言われてみれば条件を達しているのか……」

 

 なんか驚いていた。

 

 「いいか、高坂。ワン子の服従のポーズは現在のところファミリーのヒエラルキートップの姉さんか、マジ説教の時の俺と京にしかしていないんだ」

 

 いや、そう言われましても……。

 

 「つまり、あれを見るためには絶対的な力関係と一定以上の懐き度が必要なんだ。だから俺と京でさえこっちの立場が一方的の時しか見られないんだ」

 

 なんだろう、本当に動物の群れの解説みたいになってる。

 

 「いや、そんな解説なんてどうでもいいけど、調教しすぎじゃねって話」

 

 「う……、いやー、そういえばさんねんせいのけっかはどうなってるのかなー」

 

 あ、逃げやがった。

 師岡と椎名も目をそらしてそれについていった。

 残された僕とクリスは目を合わせてため息をつくのだった。

 

 

 その日の全校朝礼は、TVカメラが入ったりと騒がしかった。

 そんな中、学長である鉄心さんが朝礼台に上ってきた。

 

 「さーて、楽しい夏休みは目前じゃのう皆、生水には気を付けて昆虫採集や川原遊びをするんじゃぞ」

 

 時代遅れな前置きをかます鉄心さん。

 

 「さぁ、ここからが本番。テレビ、よくとっておくんじゃぞ」

 

 そう言って離された内容は、毎年川神院主催でやっていた武闘会を、義経たちもいることだし規模を大きくしようということであった。

 

 「ワシはこの大会のことを……、若獅子タッグマッチトーナメントと名付けることにした」

 

 タッグ……興味が一気に失せたな。

 ルール説明? どーでもいーです。

 景品……はまあ欲しくはあるなー。

 九鬼重役待遇確約? すでに囲い込みされそうですが。

 武神との決闘の権利? もう持ってます。

 と言うことで、周りが真剣に聞いている中、大してやる気も出ずにボーっとしていた。

 まあ、誘われたら出ればいいかな?

 そんな風に軽ーい気持ちでいた。

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 先日、発表された若獅子タッグマッチトーナメント。

 そのタッグ決めに今学園内外の若者たちは躍起になっている。

 そのくみ方はいろいろあるが、今変態橋で組み合っている島津と長宗我部は視覚的な公害だと思う。

 がっちりと握手をしていた二人をまとめて川に投げ込んだ僕は悪くない。

 正直突っ込みどころ満点なペアがちらほら目についてしまうのはここがKAWAKAMIだからだろう。

 

 そんなこんなで8月1日、つまりタッグマッチトーナメントの前日である。

 僕はと言うと、九鬼本部にいた。

 

 「では、明日からよろしく頼むぞ!」

 

 「はい、了解しました」

 

 何とも面白いことに声をかけられたものであった。

 

 

 ――――

 

 

 当日、予選会場。

 おーおー、観客保護兼監視員として鉄心さん、ルー師範代、釈迦堂さん、鍋島館長。

 おっかねー。

 それにしても順調に進んでいくねー。

 まあ、予選だし残る人間は残るべくして残るってことかね。

 あ、天神館の石田、また覚醒前にやられてる。

 ドンマイでーす。

 それにしても暑いなー。

 いやー、僕は予選も終わっちゃったし見てるだけってのも暇だなー。

 いや、面子的には退屈しないんだけどね流石KAWAKAMI、あ、一応このスタジアム七浜か。 

 おー、これで最後のペアも決まりか。

 あとは明日の本戦だね。

 

 

 

 

 ――――

 

 

 「タッグマッチトーナメント、本戦開始でございます!」

 

 大会本戦、豪華にもあの大佐さんが実況とか豪華だなー。

 そして、

 

 「さて、解説は引き続き皆のアイドル川神百代と」

 

 「西野雄、天神館は西方十勇士の石田がお送りする」

 

 「頼もうと思ってたやつが見当たらなかったから予選落ちした有力者に解説補佐頼むことになった」

 

 なんか増えてる。

 まあ、ちょっと自己顕示が強い以外は常識人だから妥当かね。

 交渉やら何やら説明があった、手筈やらトーナメント自体は合い方に任せることにして僕は観客だ。

 本当に暑い……。

 

 本戦も進んでいく。

 しかし正直隠れた強者ってほどのいないから退屈っちゃあ退屈なことで。

 しいて言うなら風間と西の女の子、大友 焔とか言ったか?のペアが見ていて面白いかもしれない。

 お、相方に呼ばれた。

 出番だねー。

 

 

 

 「ホワっちゃああああ!!」

 

 「くらいやがれ――!」

 

 ふむ、この程度の相手に一撃くらうほど俺も相方も弱くはない。

 それにしても暑いなー。

 

 「あーと、二人の攻撃が全く効きません!」

 

 「っく、いったい何者なのだ?」

 

 お、相方から合図が来た。

 ここからが見せ場か。

 

 「フハハハハ! 九鬼揚羽降臨である!」

 

 「雇われ助っ人、高坂虎綱参上!」

 

 「おーっと! 遂にマントを脱ぎ棄てた―!!」

 

 はい、そうです。

 今回揚羽さんに誘われてミステリータッグ組んでました。

 

 「うおい! トラ!! お前怪我治りかけだし無理しないように参加しないんじゃなかったのか!!?」

 

 解説席うるせぇ。

 

 「姉上、なぜこのような大会に?」

 

 「ひとつは、大会に不穏なものが参加していないか、なかから見張るため」

 

 はい、そんなのいなかったです。

 つまらんねー。

 

 「もう一つは?」

 

 「お前に無理をさせないためだ。ここで負けてもらう」

 

 おー、麗しき姉弟愛。

 

 「んで、因みにお前がそんなことしてる理由聞いていいか?」

 

 九鬼姉弟が盛り上がってる間に井上が聞いてきた。

 

 「んー、タッグってことでそう興味湧かなかったし雇われたからかな。あとはこういうのって隠しキャラみたいでちょっとやってみたかった」

 

 「いや、そんなにきれいな目で言われても……」

 

 えー、かっこいーじゃんかよー。

 

 

 「わ、分かりました……、姉上」

 

 「うむ、安心したぞ」

 

 あ、あっちも話しついたみたいね。

 あれ? 井上どうした? そっちは何となく地雷だと思うぞ?

 おー、おー、よくあの場面でからかえるなー。

 

 「なぁ……、義兄ちゃん」

 

 あ、これはだめだ。

 最大級の地雷踏みやがった。

 

 「……、高坂よ。このハゲはまだ納得いっていないらしい。戦ってやってくれないか? 壮絶に」

 

 はーい、ご指名入りました。

 一応目で揚羽さんに確認を取るとすっごく怖い笑顔で頷かれた。

 イエス・マム。

 全力でやらせていただきます。

 

 「あー、ごめん井上。雇い主の意向だからさ、大人しく蛸みたいになってくれない?」

 

 「え? いや、ちょっと待って! ほら、見てよ! 俺もう十分蛸みたいじゃないかなー?」

 

 おお、禿を強調してまで助かりたいか……。

 後ろの姉弟に確認してみると二人して首を横に振っていた。

 

 「まあ、あれだ? 後遺症残らないように丁寧に外してやるからさ?」

 

 「ちょ? え? いやーーーーーーー!!」

 

 一つ一つ丁寧な作業によって井上を蛸さんにしてあげた。

 

 「勝者! ミステリータッグ!」

 

 「フハハハ! 選手諸君は安心してよいぞ。我々は二回戦で棄権する」

 

 「まあ、怪我人だしそう言う約束ですからねー」

 

 とりあえず、揚羽さんがいなくなることに選手の全員が、僕のことについては知っている人が安心していた。

 

 




ありがとうございました。
次回作については案が活動報告に挙げてありますので引き続きご意見おまちしております。

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