不定期更新で申し訳ありません。
「ぐっ……」
「殿っ!? 大丈夫ですかっ!?」
近衛の蹴りをまともに喰らった昌秀は膝をついて顔を押さえた。
高虎が心配して近寄るが昌秀が手で来るなと合図すると、傍にいた子供を連れて少し離れた。
「ほっほっほっ! 己の身分が分かったでごじゃるか?」
「……さて、どうだろう?」
「むむっ!? まだ懲りないでごじゃるかっ!? ならば……」
近衛は懐から蹴鞠を取り出すとそれを空中へと投げる。
それを追う様にジャンプすると、空中で一回転してオーバーヘッドキックを放った。
「これでお終いでごじゃるっ!!」
「殿っ!!」
昌秀はハァと溜め息を吐いて、目を細めると物凄い勢いで迫り来るボールを蹴り返した。
蹴り返されたボールは近衛の腹に命中。
「げっほぉ!?」
「ふん。重秀殿達の修行に比べればあの位の球なんて止まって見える」
「き、貴様……誰に手を出したか分かっているのでおじゃるか?」
「関白様だろ? 大体、俺が出したのは手じゃない鞠だ」
嫌味たっぷりの笑みで自分の足をちらつかせる昌秀。
「……覚えておるでおじゃる!! 後で後悔するなでおじゃる!」
牛車に乗って行く近衛を昌秀は満面の笑みで見送った。
「あぁ、スッキリした」
「殿、大丈夫でしょうか? あの方は関白様なのですよ?」
「大丈夫だ。あっちは俺らの名前を知らないからな」
「それはそうですが……」
買い物を済ませた帰り道の途中、高虎が心配そうに尋ねたが昌秀は軽く笑ってやり過ごした。
そんな話をしていると、長秀……と言うよりは織田家の屋敷に到着する。
「ただいま~と」
「昌秀? 随分遅かったですね?」
「まぁな。ちょっとした問題があってな」
「問題なのはこっちの方ですよ。お陰で夕飯がかなり遅れました」
「それについては謝るよ」
昌秀が買い物袋を長秀に手渡すと、長秀も笑いながらそれを受け取った。
その光景をじ~と見つめる高虎。
「どうかしましたか高虎殿? 何かおかしい事でも?」
「い、いえ……お二人はその、お似合いだなぁと思って……」
「「お似合い……??」」
二人が首を傾げて顔を見合わせる。
瞬間、高虎の言葉の意味に気付いてハッと手を放す二人。
「た、高虎殿? 私と昌秀はそんな仲ではありませんよ?」
「そうだ。大体、俺はこいつとはどうも上手くいかないんだ」
「そうやって反論する所も怪しいですね……」
昌秀達が必死に反論するが、高虎は目を細めてハイハイと聞き流していた。
二人は諦めたようにハァと深い溜め息を吐いた。
「は? 仕事を手伝って欲しい?」
「えぇ、実はやまと御所の修復のために視察に行こうと思ってまして昌秀も一緒に来てもらえると助かるのですが……」
「……いいぜ。正直、やまと御所ってのがどんなのか気になってたんだ」
「いい返事です♪ 九十点 それでは参りましょうか?」
「そうだな。行くぞ高虎」
「はいっ!!」
昌秀達がやまと御所へと向かうと、そこにはボロボロの御所が存在していた。
恐る恐る壁に手を当てると、ガラガラと音を立てて崩れ去った。
昌秀は引きつった笑みで長秀を見る。
「な、長秀さ~ん? これを修復って無理じゃね? いっそ、新しいの建ててやれば良いと思うんだが?」
「文句を言うなら姫様に言って下さい。それにしても、これは想像以上に酷いですね……」
「酷いなんて物ではありませんよ。 見てくださいこれ、触れただけで崩れる壁なんてありえませんよ?」
「確かにこれは流石に……」
長秀達がう~んと悩みながら、やまと御所を眺めていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そちたちは一体何をしているでおじゃるっ!?」
「さて、それじゃ次は二条御所だっけか? さっさと行こうぜ」
「そうですね」
「ふ、二人とも……無視ですか?」
やれやれと歩いていく昌秀達をポカンと口を開けて見ている関白、近衛前久。
あまりに華麗なスルーっぷりに呆けていた近衛であったが、ハッと気付いて昌秀達を呼び止めた。
「ま、待つでおじゃる!!?」