戦国生活日記   作:武士道

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どうも武士道です。更新遅れました。
駄文ですがよろしくお願いいたします。


昌秀 姫巫女様と出会う

「まったく、何で俺までこんな所に……」

 

「こら昌秀っ! 文句を言わないでさっさと働きなさいっ!」

 

「……ちっ」

 

「あっ!? 今舌打ちしたわねっ!? 万千代っ! やっぱりあいつ打ち首にしましょ!」

 

「姫様、落ち着いてください。今の昌秀は織田家の客将という扱いなのですから、殺してしまっては織田の悪い風評が出てしまいます。そうなっては十五点です」

 

「……分かったわよ。昌秀っ! あんた万千代に感謝しなさいよねっ!」

 

「……はぁ」

 

 昌秀の介入もあり、織田軍は無事に長津の国を通り抜ける事が出来た。

 近江の浅井家も織田と同盟を組んでおり織田の通行を認めた。

 現在織田軍は南近江を支配する大名、六角家と戦を開始。

 昌秀は長秀に無理矢理客将として従軍させられていた。

 

 昌秀は客将でありながら六角家を打倒する策を練るように命令された。

 とは言っても、それをハイソウデスカと受ける昌秀ではなく、悩んでいるフリをしてサボっている昌秀であったが、それを見た信奈がカンカンに怒り現在に至るわけである。

 

 

「昌秀、少しだけでいいので知恵を貸してくれませんか?」

 

 長秀の笑顔に少し眉を動かす昌秀。

 

「……六角家は兵力を分散させている。恐らく奴らは俺らを一つの城に集中させて、挟撃する腹積もりなんだろう」

 

「打開策は?」

 

 長秀はうんうんと頷きながら続きを促す。

 長秀の続きを促す仕草にばつが悪そうな顔をする昌秀。

 

「……幸い織田の家中には優秀な将がたくさんいる。それぞれに兵を分散し、敵の支城を多方面から攻め立てる。それが一番だろう」

 

「流石は昌秀です。八十八点」

 

「そうね、それが一番ね」

 

 翌日、信奈は軍勢を再編成しそれぞれの将に支城を攻略に当たらせた。

 信奈、長秀、昌秀の軍勢は堅城として知られる箕作城を昌秀の奇策により攻略。

 箕作城が落城すると、恐れをなした和田山城の城兵たちは逃げ出して和田山城も同日に落城した。

 六角義治は織田軍の快進撃に怯えて、戦いもせずに甲賀へと落ち延びていった。

 ここに織田家の上洛が完成したのである。

 

 

 

「……な~んで俺がおつかいしなきゃならんのだ」

 

「仕方ありませんよ。今の我々は長秀殿に逆らえないのですから……」

 

 織田家が上洛してから数日後、やることがない昌秀が部屋でゴロゴロしていると長秀が

 

『昌秀、ゴロゴロしているのなら京の町でも見てきたらどうですか? 皆、京を立て直すために大忙しなのに一人だけ寝ているの言うのは如何なものかと』

 

 と嫌味を言ってきたので、『じゃあ、何か仕事でもよこせよ』と冗談まじりに昌秀が返すと長秀は懐から小さな紙を渡して、とりあえず今夜の食材を買ってきてください、とお金と袋を渡すと部屋から追い出されてしまったのである。

 

「殿、ご覧を」

 

 高虎が指差す方向には、巫女装束を着ている女の子が木の上を見上げていた。

 

「どうかしたの?」

 

 高虎が女性らしく優しい声で尋ねると、女の子は木の上を指差した。

 そこには白い凧が引っかかっている。恐らく、飛ばしている最中に引っかかってしまったのだろう。

 

「そっか、ちょっと待っててね」

 

 女の子は無言で頷く。

 

「殿、取ってあげましょう」

 

「そうだな。どれ……」

 

 昌秀が高虎を肩車をしようとしゃがむと高虎は中々上に乗らなかった。

 

「高虎、早くしろ」

 

「と、殿……私、上はちょっと……」

 

「?? 何でだ?」

 

 ワケがわからん、と首を傾げる昌秀。

 

「と、とにかく……私が下になりましょう」

 

「え、でもお前……俺の事持てんのか?」

 

「試せば分かります――――――――」

 

 

 

「「「…………」」」

 

 全然平気でした。むしろこっちの方がしっくりくるくらいです。

 肩車とは思えぬ軽快な動きで、スムーズに凧をゲットする昌秀達。

 

「ほら、今度は引っ掛けんなよ?」

 

「……」

 

 女の子が凧に手を伸ばそうとした瞬間、女の子と昌秀の手が触れた。

 すると女の子は手が触れた瞬間、目を瞬かせ何かに驚くようにパッと手を放した。

 

「わ、悪い。ビックリしちゃったか?」

 

 女の子は無言のままだったが、昌秀には何となくだが否定の意を示しているように感じられた。

 女の子は凧を手にとると、昌秀達にお辞儀して何処かに行ってしまった。

 途中、足を止めて俺の事をジッと見ていたが気にしない事にした。

 

 

 

「不思議な女の子でしたね」

 

「そうだな。それにしても、京はかなり廃れているようだな」

 

「そうですね。町の至る所に物乞いが見られます。こんな所で買出しなんて出来るのでしょうか?」

 

「いやぁ……無理だろ」

 

 荒廃した町並みを見ながら昌秀が呟く。

 さらに進むとやせ細った子供達が、雑草を食おうと手を伸ばしていた。

 昌秀はそれを見ると、目の色を変えてその子供に近づいた。

 

「雑草を食っても腹は膨れないだろ? これでも食え」

 

 懐から昼飯用のおにぎりを取り出し子供に渡すと、子供は目に涙を浮かべながら必死におにぎりにかぶりついた。

 

「殿、それでは殿の昼餉が……」

 

「いいんだ。腹いっぱい食えよ?」

 

 昌秀の言葉に子供は無言で頷いた。

 子供は腹を撫でるとお辞儀をして、走り去ろうとした所、牛車に轢かれそうになった。

 

「馬鹿っ! 急に飛び出す奴があるかっ!」

 

「殿っ!? 危険ですっ! お下がりください! 私が参りますっ!」

 

 言葉より体が動き出す。

 昌秀は滑り込んで子供を救出すると、子供はいきなり泣き出した。

 

 牛車の中から偉そうな人物が下りてくる。

 

「危ないでごじゃるっ! その方……麻呂を関白、近衛前久と知っての狼藉でおじゃるかっ!?」

 

(関白 近衛前久……か。チッ、厄介なのに関わっちまったな)

 

 心の中で舌打ちする昌秀。

 無言の昌秀に対し、無視していると思ったのか近衛はムキーと足をばたつかせた。

 

「お主、麻呂の問いを無視するとはいい度胸でごじゃるっ! 貴様のような奴は、麻呂が直々に手を下してやるでごじゃるっ!!」

 

 とうっ! と勢い良くジャンプする近衛。

 この時代の人間ってここまでジャンプ力あるのかと感心する昌秀。

 

 そして次の瞬間、メキッと言う嫌な音がその場に響いた。


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