戦国生活日記   作:武士道

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昌秀 部下と領地を手に入れる

 浅井を奇襲した次の日、昌秀は重秀から屋敷を与えられ藤堂高虎、片桐且元両名は正式に昌秀の家臣と認められる事になった。戦場での武功もあり、昌秀が奪い取った吉備津城は永重に任されたがその代わり、霧生賊が使用していた霧生山の砦を元に城を建てる事にした。

 

 現在、昌秀は高虎と且元を連れ自分の家となる城の建築現場に視察に見に来ていた。

昌秀は渡された城の設計図を見て驚いた。

 

「これ、豪華すぎじゃね?」

「それはここが長門家の重要拠点になるからでしょう」

 

 城の設計図は新卒の俺が入るにはあまりにも、堅牢でしっかりとした城になっていた。

おそらく津川城と同等かそれ以上だろうと思っていると、高虎が興味深そうに俺が持っていた設計図を見ていた。

 

「何だ、興味があるのか?」

「は、はい。実は私、城作りって大好きなんです」

「へぇ、知らなかったな。じゃあ、この城の普請はお前に任せた」

「えぇ!? 良いのですか? 私がやっても・・・?」

「だって城作んの大好きなんだろ?」

「ま、まぁ・・・」

「なら大丈夫だ。ま、やるだけやって見ろ」

 

俺はニカッと笑いながら設計図を高虎に渡して、手をひらひらとさせ去るとそれを高虎は口をあんぐりと開けて遠い目で見ていた。

 

 

 

(確か、藤堂高虎は築城の名人と聞いた事がある。まぁ、任せて大丈夫だろ)

 

そう思いながら、歩いていると且元が後を追って来た。

 

「昌秀殿!これから領地の視察に行くのですね!お供します!」

「いや、昼寝に行くんだけど・・・」

「ふん!」

「痛い!?」

 

 且元のグーパンチが俺の顔面に減り込んだ。勢い良く壁に直撃する俺をみて、兵卒は楽しそうに笑っていた。

 あの戦が終わってから且元は、戦の時よりも厳しくなった。

 俺が何かと出かけようとすると、『何処に行くのです!?まだ仕事が終わってませんよ!?』とか『仕事は山積みです。逃げないでくださいね?』と言った時の笑顔などはトラウマ物だった。

まぁ、そんなこんなで現在はしっかりと俺の副官として働いてくれている。

 

「ほら、さっさと行きますよ。重秀様より、昌秀様はこの霧生山とその周辺の土地の管理を仰せつかったのですから。しめて、六万石ですよ?六万石」

 

「いや、二回言わんでいいよ?大体、俺に六万石の領地の統治なんて無理な話なんだよ。分かるだろ且元?」

 

「泣き言を言わないでください。ほら、さっさと領地視察に向かいますよ」

 

「はいはい・・・」

 

俺は且元に引っ張られる形で視察に向かった。

視察は順調に終わり、津川城へ帰還すると城の人たちが慌ただしく動いていた。

俺が何かあったのか?と声をかけると、斉藤家が織田家に美濃を渡したという事だった。

 

「何だと・・・?ってことは斉藤家からの援助は受けれなくなるのでは?」

「だからこんなに騒いでおるのだ!」

 

家臣の一人はそう言うと走って行ってしまった。

 

(やれやれ・・・・騒いだ所でどうにもならぬと言うのに)

 

心の中でそう思いながらも、重秀がいる部屋へと急いだ。

 

 

 

 

 部屋の扉を開けると、既に永重と義重、珍しく重勝も集まっていた。

 

「おう昌秀。やっと来たか・・・話はわかっておるな?」

「えぇ、城の中は大騒ぎですよ」

「まったく、道三殿は何を考えておるのだ・・・?」

 

義重が愚痴ると、重秀が重そうな体を起こした。

実は重秀、先の戦で腕に怪我を負い城の中で養生していた。

 

「道三殿を悪く言う出ない義重。道三殿も何か訳があったに違いない」

「兄上、斉藤家が無くなった以上、美濃は織田家の物となり申した。どうなされますか?」

「我らは浅井、織田とは仲がよくない。幸い、織田家の丹羽殿とは昵懇の仲だから、丹羽殿に仲介をお願いして本領安堵を願い出るか」

 

「父上、それはなりませぬ。祖父様の事をお忘れか!?」

 

永重が熱心に話すのを見ながら、怪訝な顔をして俺は義重に事情を聞いた。

義重は、『あぁ、まだ話していなかったな』と言うと事情を説明してくれた。

 

 どうやら、重秀の祖父は斉藤家の要請の元出陣中、織田信長の父、織田信秀に殺されたらしい。

その時から織田家と長門家の確執が始まった。ある時は、斉藤家の領地を越えてまで織田家の領地を荒らしに行った者や、またある時は単騎で織田の城まで乗り込んだ者もいると言う。

 

「にわかには信じがたい話だな・・・」

「まぁそうだろうな。だが、事実なんだ」

 

俺らがそんなこんなで従属か独立か話し合っていると、織田家から使者が参ったと伝えられた。

重秀は怪我をしているものの、何とか体を起こして皆で広間に向かった。

 

 

 

 

広間に入ると長髪にリボンをつけた、綺麗な人が座っていた。

綺麗な人だな・・・と思いながら広間に腰を降ろすと、長髪美人は丁寧に頭を下げた。

 

「お久しゅうございます。重秀殿」

「おぉ、長秀殿か。ご謙遜で何よりじゃ」

「そういう重秀殿は腕を怪我なされたのですか?」

「まぁの、浅井との戦で不覚をとってしまったわい」

「まぁ、それは四十点です」

「がっはっは、相変わらず手厳しい」

 

重秀ががははと笑うと、長髪の女もふふふと笑い返し楽しそうに談笑していた。

俺はそれを見ながら驚愕の声をあげる。

 

「お、おいあの女、重秀殿のあの大音量の笑い声を聞いてもビクともせずに笑ってやがるぞ!?

た、只者じゃねぇ・・・」

 

「昌秀・・・・お主、ご先祖様に失礼だと思わんのか?」

 

「はぁ?ご先祖様って、俺の先祖は丹羽長秀かもしれないってだけだぞ」

 

「じゃから、あの女が丹羽長秀殿じゃよ」

 

「・・・・・は?」

 

 俺は『いきなり何いいだすんだ』と永重の肩を叩く、すると長髪の美しい女性はこちらに向きなおすと『皆様、お久しぶりです。丹羽長秀です』と言いながらお辞儀をする。

 それに挨拶を返す重臣一同と、長門一門・・・と唖然とする俺。

それに気付いた長秀?は不思議と思ったのか、声をかけてきた。

 

「あの・・・初めてお会いしましたよね?」

「へ?あぁはい、はじめまして。長門昌秀っていいます。以後、お見知りおきを」

「まぁあなたが長門昌秀殿ですか?」

  

 長秀?は俺の名前に反応すると、先の戦の話をした。やれ、どうやって敵を殲滅しただの、どうやって敵の襲来を知ったのかだのと・・・延々と続けられた。

 重秀はそれを見かねたのか、長秀?に早速用件を話すようにと伝えた。

 

「あぁすいません。私とした事がつい話題がそれてしまいました」

「何構わんよ。それで用件とは?」

「はい、それでは・・・」

 

一門、重臣一同はしんとした空気で息を飲んだ。

そして長秀?から出た言葉は予想外な言葉か出てきた。

 

 

 

「恐れながら申し上げます。重秀殿、織田に降ってもらいませんか?」

 

 


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