カンピオーネ -魔王というより子悪魔-   作:雨後の筍

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原作前にエピソードを一つ
本編スタートです

なお、今物語における『まつろわぬ神』のルーツに関する考察、及び獲得する権能については、物語としての面白みを考えた上で、意図して机上の空論、論理の飛躍などを含んだ独自解釈を採用しているところが多々あります
それは明らかに繋がりが希薄じゃないか?こじつけじゃないか?その見解にはこうこうこういう矛盾があるのでは?などの質問に対する回答として先に示させていただきます
それでも納得がいかない方は感想欄の方にご意見ください
あまりにもおかしい場合は修正を入れますので
一応これでも神話辞典を紐解き、専門書片手に齷齪頑張っておりますので、寛容な御心で受け止めてくださると作者は歓喜します

長くなりましたが、それではどうぞ


彼女たちのプロローグ ‐大いなる詩人‐
こんにちは、大いなる詩人‐1


「全く……容赦の欠片もないな」

「あら? まだ反省したりないのですか?」

「十二分に反省しました! マム!」

「もう、調子だけはいいんですから……」

 

 お説教が終われば、太陽光はとうに燦々と降り注ぎ、夏の残り香たる蜩が、秋の清々しい空模様にアクセントを添えていた。

 祐里は、今日は御母堂が出かけていていないために昼食を作りに行った。

 その際に、散々昼食が遅くなったことについても怒られたのだが、それはお説教をし過ぎた祐里の自業自得だと思ったのは私だけなのだろうか……?

 まぁ、ぷりぷりと起こる祐里は可愛いので問題ない。

 夜叉女様になられると、こちらとしても冷や汗が止まらなくなるが。

 閑話休題

 とりあえず、ずっと正座していて硬った背骨をバキボキと鳴らして背伸びをする。

 ついで肩を回す運動。なんだかリズムに乗ってきた。

 これは……ラジオ体操をする流れっ!

 

 というわけで十二分に凝り固まった体をほぐし終わったので、境内の辺りをうろうろと歩き始める。

 流石にもう秋ともなれば空気も澄み渡り、いい散歩日和だ。

 しかし、このままここで油を売っていたら、また違う理由でどやされかねない。

 昼食ができるまでもうしばらく時間があるはずだ。

 町の方にゆるりと足を伸ばしてみるとしよう。

 もうすぐ、ここに来てからの付き合いだった蜩さんともお別れなのだ……最後の最後にあいさつ回りしたいのだ、とでも言えば彼女も許してくれるだろう。

 彼女たちはなんだかんだで天然だからな。

 それにしても感慨深いものがある。

 私がここに来てからまだ3ヶ月ほどしか経っていないが、万里谷姉妹との関係は良好だし、御両親との仲もそこそこのものにできた、と自負している。

 

 3ヶ月

 

 字面にしてみるとなんでもない期間のようだが、縁と事情があったとはいえ、年頃の女の子を家まで引っ張って帰って養い始める、なんて行動を取られた日には、その3ヶ月ではなかなかに急な展開の変化に慣れることができないと思う。

 いっぱんぴーぷるとの精神力・胆力の違いというものを見せつけてやりましたぜ。

 まぁ逆に、我ながらよくもまぁここまで馴染んだものだとも思うのだが。

 流石に私であっても、出会ってからそんなに経っていないのに、自分の親に必死に私を引き取ってくれるように頼む彼女の真摯な姿勢には、普段のおちゃらけた態度で接するわけにも行かず、その懇願する美しい横顔に気を取られているうちに、話はあれよの合間に纏まってしまったのだった。

 今となっては感謝しても感謝したりない行いではあるのだが、ひねくれ者たる私はなかなか素直に感謝の気持ちを伝えることができない。

 しかし、余りに面が厚いと思われるのも難なので、御両親だけには羞恥の心を隠しながらも蚊の泣くような声で一度だけ「ありがとう」と伝えたのだ。

 それが私の精一杯ではあったのだが、かの御両親はとても人間ができていると見える。

 二人して顔を合わせたかと思えば、こちらに慈愛に満ちた微笑みを向けてくれた上に「気にすることはない、もう私たちは家族なのだからね」なんて、どこの理想のご両親ですかあなたがたは!

 余りにも恥ずかしくて、顔から火が出るような熱さというのを久しぶりに感じたものだ。実際、顔から火が出る呪詛を食らったことのある身としては、言霊でもない言葉一つでこちらに形容し難いダメージを与えてくる彼ら人間はなんと素晴らしいものなのか、と錯乱してトチ狂ったことを考えた記憶がある。

 ああ、麗しき人間賛歌!

 

 ごほん、すぐに思考がとりとめもない方向に飛んでいくのは私の個性であり欠点だ。これ含めて私であるからして、切り捨てるべき蛇足ではないことは確かだが。

 そして、目下一番の疑問。

 はてさて、朝はあんなに涼しかったくせに、昼になれば春のような陽気とはこれいかに。

 というより春の陽気と表現しはしたものの、これはどちらかというと初夏の日差しといった印象か。

 夏は一月も前に終わったはずなんだが?

 残暑って言うならまだ受け入れられなくもないが、なんだかとてもイヤーな予感がする。

 異常気象ってのが大体あいつらのせいであり、今朝方あんな夢を見てしまったことを考慮すれば、なんだか最もらしい推論を導けてしまう。

 まだ深読みするのは早い、と理性は言うが、本能は警戒すべきだ、と苛烈に主張している。

 久しぶりに平穏な日々を過ごすことができていると思っていたというのに……

 私たちカンピオーネにとっての本能の警告というものは、啓示に等しいレベルで的中するのだ。

 しかしこれが外れることだってないわけではない。

 だから念のため、そう! 念のために此処等一帯を調べてみよう。

 この身に感じとる違和感の正体が、あのろくでなしどもの気配ではないことを証明してくれるわ!

 

「疾く吹ける風よ! 我に恵みの息吹を齎し給へ!」

 

 しかして、現実とは常にこんなはずじゃなかったことばかりな訳で……

 私が言霊を唱えれば、あら不思議。

 あの駄神、思いっきり探査の網に引っ掛かりやがった。

 私のせっかくの平穏をこれ以上脅かさないでいただきたいのだが。

 ちょっとプチっときてしまった。

 この体になってからトラブルに巻き込まれやすくなりすぎだ。

 そろそろ鬱憤を晴らす目的で神をボコしても許されるレベルのはずだ。

 私は、他の野蛮なカンピオーネ達と違って本来は穏健派だから、いつも神との戦いというのは大体なし崩し的に戦闘せざるを得ない状況……というかほっといたら街がぶっ壊されるーとか人が大量に死ぬーとかの状況での対処が主だ。

 そういう状況にならなければ、自身の存在を隠蔽するためにも、私は基本的にノータッチで一般市民と同じように振舞うからね。

 今回みたいにストレスが爆発して、自分から神をぶち殺しに行くようなのは極々稀な事例であり、決して今まで同じサイクルで2体も神を屠ったなんてことはなかったはずだなー、ハハハハハハ……ふぅ……

 

 しかし、なんでまたこんなところにあんなのが降りてくるのだろうか。

 私の見立てが間違っていなければ、あれは太陽神に関係する神のはず。

 どこのどいつだかまでは正確には把握できなかったが、太陽を主に司る神にしては影響が少ないし、どちらかというと私の探査に感づいた点をとっても、繊細な感覚を持った神。それもとびっきりのやつだ。

 そんやつは神話を思い浮かべてもそう多くはいない。

 私の探査に気づいたということは、軍神が持ち前の戦士の勘でそれを察知した、というのが一番有力な考え方だ。

 また、私と同じく鋭敏な探査能力を有している。

 または、魔術に精通している、風との相性がいい、など理由はいろいろ考えられるが、軍神という可能性はないだろう。

 軍神が降臨したにしては、破壊や争いの喧騒が全くこちらに伝わってこないのだ。

 これはおかしい。

 寝ぼけていても周りを破壊し、覚醒したらしたらで災厄を振りまいて回るのが軍神や戦いの神と呼ばれる存在だ。

 一般的な『まつろわぬ神』はもれなくそんな性格のやつばっかではあるけれど、その中でも際立っているのだ。

 つまり、ここに今回降臨した神は軍神の類ではない可能性がかなり高い。

 そう考えると、今回の神様は戦い向きではないという希望的観測が成り立つ。

 まさか、私のファウォーニウスの探査に気づくとは予想外ではあるけれど、これに気づくほどのリソースを探査、魔術、風あたりに割いているならその神は私の敵ではない。

 さぁ……いざ往かん! 世に混沌を齎さんとす『まつろわぬ神』は私が成敗してくれようぞ!フハハハハハ!

 

 ……流石に万里谷にこの人有りな祐里と雖も、私がカンピオーネだとは気づけないよ……ね?

 

 ()()は気づかれなかったんだから今回もいけるはず。

 その考えがフラグだと、冷静に考えることができたなら気づけただろうに……

 まさに、エピメテウスの落し子とはこのことか。

 後々思い出しては頭を抱えて転がりまわることになるとは、あの日の私には予想できなかったのだ……

 




いかがだったでしょうか

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句点の打ち方はどうしてこうも難しいのだろうか……
そして俺の受験勉強はどこに家出してしまったのだろうか……

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