カンピオーネ -魔王というより子悪魔-   作:雨後の筍

17 / 21
どうも作者です
あまりにも久しぶり過ぎる投稿申し訳ございませぬ
言い訳させてもらえるならば東進とか東進とか東進とかのせいなんですけど……
あとアイデアが溢れまくってるのでちょこちょこ短編とか新作とか書いてるせいだったり……
多分このままの流れで行くとOBLに向けて一本オリジナル書きそうですしねぇ
とりあえず話すことはいろいろありますがまずは本編をどうぞ




雷帝ヴォバン降臨‐4

 ということで、祐理が倒れるアクシデントはあったものの今日も時は平和に流れていく。

 昨日あのあと何かあってはことだからと、無理をおして祐理の携帯を買いに行ったのだけど、最近の携帯というのはすごいね。

 私からすると、某パズルゲームをやるためだけにスマホを持っているといっても過言じゃないから、携帯なんてどんなのでもいいと思ってたんだけどね。

 だからお店に行って驚いたよ。

 最近の携帯ってすごい多機能なんだよ? まぁそこら辺は私も祐理も扱いきれないってことで、驚くだけ驚いて買わなかったんだけど。

 結局祐理のも私とお揃いのにしました。色違いだけど。

 やっぱり今更携帯を使い始めようっていう人には、ガラケーよりスマホの方がわかりやすいのかね?

 ここまで比較的ガラケー信者として過ごしてきた私としてはわからないところだけど。

 丁度2年だったのと、某パズルゲームと、アテナ戦でぶっ壊れたのとが重なったからこの度スマホにしてみたけど……やっぱり使い慣れないから放置しがちになっちゃうのは仕方ないよね? 甘粕にもマナーモードにして放置すんなって怒られたけど。

 

 閑話休題

 

 今現在時刻は昼過ぎ、太陽も南中した真昼間である。

 空は些か以上に雲に覆われている気はするが太陽は出ているので問題はないだろう。

 いつもどおりに私たちは護堂君たちと一緒に屋上でご飯を食べていた。

 先日祐理が護堂君にお説教をした時に、折角だからとお昼ご飯を一緒に食べることにしたのだ。

 祐理はあまり意識していないかもしれないけれど、私の今の立場としては正史編纂委員会に使われる立場なのだ。

 つまり、いきなり日本に生まれたカンピオーネの監視役に私たちが抜擢されたというわけだね。

 どっちかっていうとこんな美少女2人をあてがうんだから、エリカ嬢から護堂君を奪い取ってこいって感じの意思が働いてる気はするけど。

 実際甘粕も監視役とは名ばかりの、間に合せの色仕掛け役だと断言してくれたしね。

 でも確度の高い情報を持ってきたのは褒めてあげたけど、言い方が気に食わなかったからお仕置きした。

 最近お仕置きするときの甘粕の目つきが怪しい。

 あのサブカル男は、このままだと幼女にお仕置きされて悦ぶ残念3枚目へと落ちていってしまうのかもしれない。

 ……流石にやりすぎちゃったかな、すこしだけ優しくしてあげよう。

 

 まぁ甘粕の性癖は置いておいて今重要なのは携帯の話だ。

 監視役なのだからなるべく護堂君とお近づきになることはいいことだ。

 素性を隠して遠目に監視なんてのはカンピオーネには逆効果だからね。

 まぁ逆に近づいていって安全なカンピオーネも少ないけど。

 それでも護堂君は身内には優しい。

 ちょっと戦闘時にはっちゃけちゃうだけで仲間だとかそういうものはできるだけ守ろうとする。

 代わりに建造物が犠牲になるけれど、人命と文化遺産どっちが大切なんだろうね?

 そんなことは今はどうでもいいんだけど。

 つまるところグダグダ言ってきたけれど、今日の昼食の時間のメインの話題は祐理が携帯を買ったということなのだ。

 祐理も昨日の夜に簡単な使い方を説明してあげたら、最低限の操作はできるようになったみたいだから、早速護堂君とエリカ嬢のメアドと電話番号をもらって花のような笑みを浮かべている。

 私が思っていた以上に、祐理は機械がうまく扱えたことが嬉しかったようだ。

 まぁそんなこんなで危機感はあれども今日も平和に時は流れていくのでした。

 

 

                  ◆◆◆◆◆

 

 

 さて、放課後の話だ。

 特に用事があるわけでもなし、いつもどおりに3人で帰ろうかと思っていたところ、祐理がもう一度青葉台の図書館に行きたいと言い出した。

 もう一度あの本を霊視すればなにかわかるかもしれないとは言うけれど、なんだか嫌な予感がビンビンにするので返答を考えていた折だ。

 雨が降ってきた。

 そもそも、今日の天気は雨どころか曇りでもおかしいはずなのだ。

 自分自身嵐を操る権能を持っているから毎日の天候には気を配っている。

 各番組の天気予報も見るし、自分でも毎朝占っている。

 さらにその上に直感がのっかっているのでわかるが、これは異常、それも一般の術者ではなかなか手を出せない大儀式レベルの異常だ。

 私なんかは権能を応用して大儀式クラスの魔術をバンバン撃てるけど、正史編纂委員会にしろ在野の術者にしろここまでの天候操作は骨が折れて当然。

 しかも甘粕から報告がなかったということは正史編纂委員会が行ったわけでもなく、在野の術者がやっているにしては正史編纂委員会が情報をつかめないとも思えない。

 そこから逆説的に考えると、神様が降りてきたか、それこそ考えたくはない可能性ではあるけれど、候爵様が降臨なすったかの2択となる。

 現存するカンピオーネの中で嵐を操ることができるのは私と候爵だけだから、私が存在を感知できないことも加味すれば、この東京に降り立ったのは候爵だと予想できるのだ。

『まつろわぬ神々』のお歴々は自信満々だから自分の存在を隠すって発想がないからねぇ、それに比べて候爵がなんでまた東京なんぞに来たかはわからないけれど彼が正体を隠すのはまだ理解できる。

 カンピオーネともなるとそこらへんの魔術師はご機嫌伺いにやってくるだろう。

 東京にいるなんて知れたら謁見が凄まじい数で申し込まれるだろうから、その面倒を嫌ったとかじゃないのかな。

 むしろそうとでも考えなきゃあの理不尽の塊が気配を隠す理由なんてさっぱりわからなくなるのだけれど。

 まぁとりあえず色々とやることはあるけれど、隣のクラスの護堂君を捕まえることから始めよう。

 

「祐理、アテナ、やばい予感がする。とりあえず護堂君に声かけてくるから少しだけ待っててもらえる?」

「あ、はい、わかりました。昨日の幻視に関することですよね? ということはもしかして候爵が……?」

 

 祐理も内心違和感を持っていたのか、特に驚くこともなく普通に受け入れている。

 アテナに至っては我関せずの境地に立っているように見受けられるが、候爵との争いに巻き込まれたら一体どうするつもりなんだろう?

 そういえば全く考えることをしていなかったけど、アテナの気配は私が隠蔽しているとは言え、流石に面と向かえば候爵程の相手にはバレてしまうはず。

 前回前々回とカンピオーネ相手に私が正体を隠していられたのは、自分自身が対象だったからだ。

 流石にアテナを対象にしている時点で効力は減衰しているし、彼女自身の『まつろわぬ神』としての呪力軽減もあるから、多分護堂君が今のアテナと初対面だったとしてもバレてしまっていただろう。

 未熟な護堂君でも見破れる隠蔽だ、まして候爵ほどの相手に通用するわけがない。

 頭が痛くなってきた。

 候爵が東京に来ているってだけで気が滅入るのに……その上これは正体バレのピンチじゃないですかヤダー。

 候爵が『まつろわぬ神』を下した相手を当代きっての、と枕詞がつくとは言えただの媛巫女だと思ってくれる可能性は0に近い。

 というより0だろう、迷うことなく喧嘩を売られるか、下僕にしようと殺しにかかるかの2択だと予想させてもらおう。

 そしてそうなったときには流石に私も抵抗せざるを得なくなるはずだ。

 ああ、ここまで6年間隠し通してきたのについに正体バレかぁ、全部護堂君に押し付けたらなんとかならないかなぁ、ならないよなぁ、流石に役者不足ってやつだもんね。

 目的はわからないけど流石に放置するわけにもいかないし……護堂君に丸投げしても普通にやられちゃいそうだ。

 出来ることならもう少しだけ平穏な日々が続けばよかったのに。

 さて、とりあえず護堂君に声をかけて、甘粕と対応を協議して、話はそれからかなぁ。

 教室の中に護堂君は……ああ、いるね。

 

「護堂君! ちょっと用事があるんだけどもちろん放課後は空いてるよね?」

「もちろんではないけどな……雨も降り出しちまったし、予定はなくなったぞ。なんか用か?」

 

 エリカ嬢と話をしているところにいきなり話しかけられて少し驚いていたようだけど、すぐに返答を返してくれた。

 予定がなんだったかは知らないけど雨が降ったらおじゃんになる類いだったらしい、スポーツかなんかかな? 護堂君は昔は野球の選手だったはずだから、試合の約束でもしてたのかもね。

 

「ちょっとばかし長い話になるから、とりあえずうちに来てくれる? 甘粕さんも呼ばなきゃいけないしね」

「また面倒事か……もしかしてヴォバンとかいうじいさんの話か?」

 

 !?

 驚愕の事実、護堂君は候爵の存在を私たちよりも早くに察知していたらしい。

 情報を仕入れたとするなら『赤銅黒十字』経由しかありえないが、あそこは名門とは言っても正史編纂委員会よりも規模で言えばはるかに格下のはずだ。

 しかし、甘粕から報告が来ていないということは正史編纂委員会はまだその情報を掴んでいないということ……これが欧州と日本との差というやつなのだろうか? やはり本場は違うのだなぁ、と少しだけ遠い目をしてしまう。こんな身の上ではあるけれども愛国心くらい持ち合わせてるつもりだ。

 さて、護堂君が不思議そうな目でこちらを見ているけど、あと少しだけでいいからこのなんとも言えない虚脱感を味あわせて欲しい、切実に。

 

「あー、遠い目してるとこ悪いんだが万里谷達も来たみたいだぞ? 行かなくていいのか?」

「あ、うん、今行くよ。ただちょっとだけ世の不条理を嘆いていただけだから。エリカ嬢も突然のご招待になっちゃうけどいいよね?」

「うーん、私の護堂に声をかけるなら先に一言あっても良かったと思うのだけど、ヴォバン候爵の話なのね? それならしょうがないのかしら」

 

 エリカ嬢も了承してくれて何より。

 まぁ彼女の場合は護堂君が頷けば大体のことには頷くんだろうけど。

 

「さて、祐理、アテナ、一旦話はうちに帰ってからにしようか。帰り道で甘粕さんにも連絡しなきゃだし」

「はい、わかりました。それでは参りましょうか。草薙さんも申し訳ありません、私たちでは対応しようにもどうにもできそうになくて……」

 

 一同揃って下駄箱へ。

 窓から外を見やれば雨は先程よりも勢いを増している。

 いよいよもって暗澹とした心持ちになってしまう。

 彼の候爵は権能のコントロールなんてお茶の子さいさいなくせに、気分が昂ぶると無意識のうちに嵐を呼ぶだなんて傍迷惑なことをやってのける。

 それでいて権能を暴走させるわけじゃないんだから、どれだけの年月の経験が成している技なのかは想像もつかない。

 私も相性と数年の鍛錬の甲斐あってかなり精密なコントロールは出来るけれど、あれほどの掌握率は誇っていない。

 護堂君なんかは多分まだ10の権能全てを掌握することすら出来ていないんじゃないかな?

 まぁそんな話は今考えてもどうにもならないことなのだ。

 そんなことより困ったことに、話は七雄神社についてからと言ったおかげかさっぱり会話がない。

 流石に5人もいて無言で歩き続けるというのもどうかと思うのだけれど……エリカ嬢にSOSのアイコンタクトを送ってみる。

 魔眼でも魔術でもなんでもないけど、ここまで視線に助けてオーラを込めれば彼女ほどのムードメーカーなら気づいてくれるはず。

 果たして彼女は私から溢れ出るそのオーラに気づいてくれたらしい。

 密かに私にサムズアップすると、彼女は自身の傘を両手でへし折った。

 

「あら大変、傘が壊れちゃった。護堂、そっちに入れてくれる?」

 

 私たち全員が突然のことに唖然とする中、彼女だけはなんのてらいもなく護堂君の傘の下に入り込もうとする。

 

「こら! 壊れたじゃなくて壊しただろ! 何言ってんだよ!?」

 

 あー、うん。

 助けを求めたのは私だけど、些か以上に予想の上をいったかな?

 痴話喧嘩を始めた2人をなんとも言えない顔で見守る私たち3人。

 ああ、周りからの視線が痛い、私たちとあの2人が別グループだと主張できたらどれだけ良かっただろうか。

 

「傘が足りないようでしたら、私の車で送って差し上げますよ。その代わりと言っちゃなんですが、ひとつ頼みを聞いてもらえると助かります」

 

 声が響くと同時にエリカ嬢が準戦闘態勢に入る、がすぐに楽な姿勢に戻る。

 私の方から連絡する前に向こうからやってきてくれたようだ。

 甘粕の方も別ルートで候爵の情報を手に入れたってことだねこれは。

 それはつまり正史編纂委員会がその存在を確認したという凶報に他ならないわけだけど。

 

「しばらくぶりですね、王よ。まぁ今回の件については幾分かの余裕があります。ちょうど皆さんも七雄神社を目指していたようですし、とりあえず話はそちらでいたしましょうか」

「いきなり出てきて図々しい話ね? また護堂の力を利用するつもりかしら」

「それについてはお互い様ではありませんか? それに前回の件はたまたまそういうことになったのであって、別に草薙王の出番だとかを意図して奪ったわけではないのですよ。そもそも神殺しにならずに神を屈服させるというのがどれほどの偉業であり難行なのか、あなたならわかるはずですが」

 

 そうだぞー、一般人に『まつろわぬ神』なんて対処しようがないんだぞー。

 そして『まつろわぬ神』からすると、カンピオーネとか天位地位の魔女とかそんなのじゃないと一般人と大差ないんだぞー。

 つまり私は完全無欠な一般人ってことですねわかります。

 ……祐理、そんな残念なものを見る目でこっちを見ないでよ。

 実際問題あれは調子に乗っただけであって本来は護堂君に譲るつもりだったんだよ?

 ちょっとばかしアテナが可愛すぎたのがいけないのさ。

 結果も上々、そう眉をいからせなさんなって。

 とりあえず甘粕とエリカ嬢があーだこーだ言い合っているけど……周りからの視線が痛い。

 そろそろ2人も気づいてくれないかなぁ、正直私の方から今の2人には話しかけたくないかな。

 護堂君任せにすれば一発解決しそうだ、善は急げ。

 

「護堂君、護堂君」

「ん、なんだ?」

「王の一喝よろしく。このままじゃ話が進まない上に明日から学校で嫌に目立っちゃうよ」

「ああ、それもそうだな。おい、エリカそんくらいにしとけ。甘粕さんもいいですか? とりあえず続きは燐音ん家行ってからだ。燐音の話にしろ甘粕さんの話にしろこんなところで話し込むもんじゃないだろ」

 

 流石に王様に窘められたんじゃ2人も喧嘩を続けられなかったようだ。

 うーうー唸りながらも両者引き下がった。

 仲良きことはよきかなよきかな。

 喧嘩も一段落したので、全員甘粕の用意した車に乗って一路七雄神社を目指す。

 雨はますますざんざか降りに。

 ああ、私の平穏はいつになったら訪れるのやら。

 かねてからの目標である美少女を侍らせるが達成できたから、あとは隠居でもいいはずなんだけどなぁ。

 願わくば護堂君だけで対処できる案件に落ち着いてくれますように! 神様仏様サージャリム様!




いかがだったでしょうか?

そういえば気づいたらお気に入り300件超えてました
皆様ありがとうございます!
超☆絶不定期更新と常に頭のトチ狂った設定とモノローグばかりの謎の長文書きな作者ですがこれからも見捨てないでやってください!

というわけでいつもどおりに感想批評評価批判文句質問疑問指摘推薦、荒らし以外の全てを歓迎しております
それではそれでは

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。