吸血鬼は夢をみた。それは幼いときの夢。まだ父と母が健在で、当主様がまだここ紅魔館跡地にいなかった頃。その懐かしい夢、もうすでに定まった未来。――――――――――――――
「お姉さま達、おそいー」
そこには金髪と木の枝に宝石をぶら下げたような羽をもつ、レミリアの双子の妹がいた。容姿もレミリアとほぼおなじといってもいいだろう。そんな少女が後ろで遅れている、双子の姉レミリアに対して怒っていた。
「ごめん、フラン。今日は先生が中々帰してくれなくて」
レミリアは人間が集まっている里の寺子屋で算術と歴史学について学んでいた。ついでに寺子屋といっても、江戸時代のようなものではなく、小学、中学、高校と近代の勉学のシステムに近いだろう。その学校はレミリアのような妖怪でも問題さえ起こさなければ通える。そのためレミリアのほかにも次代幻魔境管理者の異名で名高い、八雲 橙や月の姫君、蓬莱山 輝夜などがいた。
…竹取物語が授業に出たとき輝夜はいじられていた。主に橙にだが。そんななか私は橙と輝夜と同じく高校に通っていた。奇遇にも私たちは息が合い、よく遊びに行っていた。そして今日、
輝夜と橙を家に招待していた。
「あなたの妹さんがよんでるわよ、なにものおもいにひたっているの、それにこの森、虫が多いわ、早くしなさいな」
輝夜は虫が嫌いだ。とくに嫌いなのが腹の虫らしい。さすがお姫様だこと。容姿についてはかたるまでもない、実際教科書にのっているとおりの黒髪美人なのだから。
「輝夜いけないよ、虫も幻魔境を形成する要素の一つなんだから。愛さないと、そして幻魔境も僕をあいさなきゃいけないんだ」
この若干頭がいってるのが橙、猫耳にピアスをつけ今は学校の指定の上下黒のセーラー服をきている。目にハイライトが入っていないことを除けば、こちらも相当な美人であろう。
「はいはい、わかったわよ。フランあまりはなれないようにね。このあたりは比較的に安全だけど妖怪がでるんだから。」
レミリアが忠告するが、フランはそんなこと気にしないといわんばかりに速度をおとさず、飛んでいる。
「まったく、あの子は…」
いつものことなのか、呆れはんぶん諦め半分といった感じで溜息まじりに呟いた。
フランが元気に走り、橙と輝夜と無駄な時間をすごす。これだけに良かったのに。
次の瞬間には、赤黒く染まった部屋と所々に散った肉塊そして、かつて肉体の中にあったはずのピンク色をしたモノ。そして、かつて妹だったものの頭部、そしてソレを抱いて、こちらを嘲笑っているような笑みを浮かべている、緑髪の妖精。―――――――――――――――――――
意識が強制的に覚醒する。
「はぁはぁ…んグゥ……」
胃から胃液が逆流する。それをなんとかあと一歩のところで堪え、額の汗を手で拭った。
「――――また、かしらね…。」
ベットに倒れ、天井に目を向ける。しかしその目の焦点はあっておらず、ただ虚空を見上げていた。
「割り切ったはずなのだけど、ダメね。これじゃあ、チルノちゃんの姉失格ね。」
自分に対する失望か、それとも過去の懺悔か、その言葉が自然と口から出ていた。
後悔などしていない、考えてもしかたにことなのに…まだ迷ってる。なにもできないわけではなかった、だけど私は逃げて、今の自分を取った。妹を見捨て、友達を見捨て
「きっと、恨んでいるでしょうね。私を殺したいでしょうね。苦しめたいでしょうね。」
レミリアはなにかを見据えそう答える。
「でも、今の私を捨てるつもりはもうとうないわ。それでも来るのなら覚悟しなさい。私があなたたちを殺すわ。」
そしてレミリアは立ち上がり、まどをあけベランダに降りる。
「――――月は嫌いね。」
そらに浮かぶ、黒い穴の開いた月を見る
「特に、こんな夜の月は」
レミリアの過去になにがあったのかわかるはずもない。全ては過去の出来事なのだから。それを変えることもできない、すべては決まってしまった物語なのだから。
「レポートがない?ヤッター「提出課題はあるがな」Orz」