結局上白沢さんの家にしばらくお邪魔させてもらうことに決まった。そして夜が明け日が昇る前に慧音が起き学校に向かう準備を始めたみたいだ。
「起こしてしまったか?」
その言葉に俺はいまだ
寝ぼけている目を擦り視界を安定させる。
「いや、大丈夫だ。それより朝食の準備をするなら手伝わせてくれ。住まわせてもらっているのに何もしないのは心地が悪い。」
「それなら浅漬けをつくるから野菜を切ってくれ。」
その言葉に「わかった」と返事をし、厨房へと向かう。厨房についたとき周りにある物に驚いた。てっきり釜をつかいお米を炊くのだとおもっていたのだが炊飯器が置いてあった。かなり古そうなものだがちゃんと動いている。しかもタイマー機能までついていた。
「あぁそれか。外ではそれより新しいものがあるはずなのだが炊飯器がそんなに珍しいか?」
俺が驚いていると後ろから上代沢が声を掛けてきた。そしていたずら子みたいな笑顔を浮かべこちらによって来た。そして手あるエプロンを自分に差し出した。
「厨房にたつならこれをつかえ。ちゃんと浄化の符が張ってあるから常に綺麗な状態を保っているはずだ。」
その手にはハートマークが胸にあたる部分に大きく裁縫されたエプロンが握られていた。
「これを着なきゃダメか?」
その質問に上白沢は「駄目だ」と即答し、しぶしぶそのエプロンを着ることにした。
ご飯を食べ上白沢が学校へ行きすっかり暇になった私はそういえばチルノさんたちに上白沢さんの家に厄介になることを伝え忘れていることに気づいたため、そのことを伝えにいく。その途中で久遠に会い一緒に紅魔館に向かっていたのだが…背後から気配がする。またか…。そして俺が振り返るとそこには緑色のリボンが木々の隙間から漏れていた。
「またかよ…」
やっかいごとに巻き込まれたくない俺はそれを無視し急ぎ紅魔館へと向かおうとしたのだが久遠がそれを見つけ大声をあげてしまった。
「何奴!お姉さまの隙を狙おうとするとは卑怯者め!正々堂々と勝負せんか!」
しまった…久遠はさいきょーだった。その声に緑のリボンは反応しビクッと揺れる。そしてそのリボンはすぐさま隠れてしまった。
「ハハハハ!お姉さまと私に畏れをなしたか!小心者めぇ~」
その言葉を言い終えるとともに久遠は消えた。そしてそれとともに目の前に突然現れた緑のリボンを付け巫女のような服を着た少女。なにより注目すべきはその肌と髪であった。その肌が不健康なまでに白くそしてその髪は色素がなく真っ白に染まっている。
「こんにちは、初めまして。そしてさようなら」
その言葉とともに意識が落ちかけた。しかし直前でなんとか意識を繋ぎ止めなんとか耐えた。
「てんめぇ!?なにもんだ」
まだ意識があることに驚いているのか、はたまたまだ意識があることに喜んでいるのか表情が笑っているのか怒っているのかそれとも驚いているのか、読み取れない。しかし彼女は行動を続けた。続いて放たれたレーザーそれを障壁で弾く、そして私は刃のない剣を手に出しそれを握りそのまま正面より少女に突っ込んだ。それに対してなんども放たれる細いレーザーのようなものを弾き返し、そしてあと一歩のところで彼女が巫女服の袖口よりお札のようなものをこちらに投げてきた。その札が当たるとともに障壁がはじけ飛び右肩にレーザーが貫通した。その痛みとともに右手に握っていた剣を落とす。そして一瞬俺は痛みにより目を閉ざしてしまった。
「堺符~スキマ~」
その声とともに上下の感覚がなくなりいつの間にか上下左右に目が無数に存在する空間に浮いていた。
「あぁクソッアイツどこいった!」
その声はどこまでも突き抜け終りなど見えない。そのことからこの空間が相当に広いことが感じられる。そして先ほどより危険信号を送り続けている右肩を見ると肩の中央に穴が開いて、そこからだらだらと血が漏れ出していた。
「止血の仕方なんてわからないぞ」
その言葉とともに上よりひらひらと何やら長方形の紙が落ちてきた。それを左手で取ると空間に声が響いた。
「それを傷にかざしなさい。完全な回復とはいかないものの傷口程度なら塞がるはずよ」
なにやら紙には文字のようなものが書かれていたため少し警戒したがどのみちこのままでは血を流し過ぎて気絶しそうなため試しにその紙を傷口にかざした。するとその紙から淡いほのかな蒼い光が傷口に流れていく。そしてその傷口がみるみるうちに塞がっていき、穴は完全になくなった。そしてそれとともに紙は効力を失ったのか黒ずんでいき砂のように霧散していった。
「大丈夫?まぁ私がやったのだけど…」
まるで表面上だけは心配しまるで罪悪感のない声に俺はイライラする。
「ふざけんな!ここはどこだ!ここから出せ」
張り上げた声も相手の心まで届かない。どこかそう感じながら声を出さずにはいられなかった。
「まるで手負いの獣ね。首輪でもかけて飼い犬にでもすれば大人しくなるかしら」
その甘美な声が今は鬱陶しく感じ、その言葉にはらわたが煮えくり返る。そして背後から抱き付かれるように優しく白い腕によって引き寄せられた。それとともに全身の力が抜けていく。
「てめぇ…なにしやがった」
しかしクスクスとこちらを嘲笑うかのようにこちらの質問には答えない。
「あらためてこんにちは。私の名前は『博麗 幻夢(ハクレイ ゲンム)』博麗の3柱中最弱の巫女よ」
そしてその返事の代わりに舌打ちをする。それが気にくわなかったのかその細い腕で首を背後より締め上げられた。
「ッッッ!グ……カッ…」
だんだんと意識が遠のいていく。そして落ちかけたその時腕は離れた。それとともに肺が必死になり酸素を欲する。それにしたがい私の体は音をたてながら酸素を吸う。
「あらあら…大丈夫?落ちかけて漏れたりしてないかしら?もし漏れてたらごめんなさい」
「テメェ…なにが目的で俺を襲いやがった」
それに少し考えるように黙る幻夢、そして口を開きとんでもないことを言ってきた。
「あなたを私の式神にするためよ。私はそもそも先代を式神にしようと思っていたのだけれど、私じゃあの人には届かなかった…だからあの人と同じ目をしたあなたを式神にすることで私のちっぽけな支配欲と嗜虐欲を満たそうとしたわけなんだけどね。あなたがかわいすぎてつい虐めすぎたわ、御免なさいね。」
式神にするために力で支配しようとした。ある意味それが幻魔郷なのだろう。しかし人間の守手である博麗がそんなことを言ってもいいのか。人間とはか弱い側で、それを守る博麗が妖怪のような振る舞いをしてもいいのかと私の中で疑問が生まれる。
「まるで妖怪のような振る舞いだな…人間の守手であり調停者でもある博麗がそんなことをしてもいいのか」
その言葉を聞いたにもかかわらず表情一つ崩さず幻夢は言い放つ。
「博麗が調停者だったのは昔の話よ。今博麗はそれぞれ別々に行動をし、己の本能に身を任せている。たとえばあなたといた久遠なんかがいい例じゃない?あの子は人里の為と自分の戦闘欲を満たすために守っている。所詮そんなものよ」
そしてどこか遠き場所をみるようになにもない空間を見つめる幻夢。
「人間なんて欲深い生き物。自分が助かるためならば家族でさえ差し出す。どうしてそんなものを守ろうと想えるのか私には疑問でしかないのだけれども…先代は違ったらしいけどね」
そしてこちらを見て徐々に近づいてくる。そして顔が目と鼻の先に迫り、そのまま俺の唇と唇が重なった。
「ヌグッ!?」
そのままなにか自分の体から入ってくると同時に力が抜けていく。それが束の間続き体の力が完全に抜けたとき幻夢は唇を離した。脳内が侵され麻痺し、思考力が低下しているせいか視界がおぼろげに映る。
「これであとはあなたを屈服させるか、主とし認めさせたら私の式神。私だけの式神になるのよ。あぁ楽しみでしかたないわ」
「…この変態め」
その言葉にさらに顔をサディスティックに歪め、熱い視線をこちらに向けた。そして何やら手に符が出現し、それを見せつけるように構える。
「この符はとっておきなのよ?私の作った符は全て相手を滅する方向にいってしまいがち、だからこんな相手に仮初の痛みを与える符なんて滅多に作れないの。そのなかでもえりすぐったものだからとても楽しみだわ」
そしてそれを私の恥部に着けようとしたその時、横より現れた手によって阻止される。
「チッ!」
その手の相手に対して幻夢は舌打ちをする。そしてその現れた手はそのまま幻夢を投げ飛ばし、俺を結界の外に引き上げた。
「大丈夫ですか!?お姉さま!」
「あぁ助かった」
俺の無事な姿とみて安堵したのだろうか「ふぅ」と久遠が息を吐いた。そしてその直後に前方の空間が裂けそこより幻夢が現れる。
「邪魔しないでくれないかしら?久遠ちゃん」
「そちらこそちゃん付けしないでくれませんか幻夢さん」
自分に邪魔されたことに憤っている幻夢にいつでも動けるように体に霊力を循環させる久遠。一触即発。そんな空気の中、幻夢はまるで興味をなくしたかのように顔をそらした。
「まぁいいわ。今回は引くわ。最弱の私が真正面から久遠ちゃんと戦っても勝てないだろうからね。でも次会うときが楽しみよ。次は久遠ちゃんも私のペットにしてあげるからね」
その言葉とともに空間の裂け目が消え静寂が流れた。そしてしばらくの間俺と久遠は周りを警戒していたが気配が完全に消えていたためその警戒を解いた。
「はぁ…疲れた。なんなんだよあの変態は」
その言葉に非常に言いづらそう表情を浮かべる久遠に俺は尋ねた。
「アハハハハ…すいません。あれうちの姉です。」
博麗幻夢と名乗っていたことからなんとなく予想はついていたがまさか姉妹だとは…たしか原作では人里より一番、霊力や八百万の神との親和性が高い者を選ぶはず、そのためため血のつながりはないため実際の親子じゃなかったはずなんだが、いや博麗が3人いる時点で原作など崩れているはずだろう。とそんな考え込んでいる自分に久遠は近づいてきて右肩の先ほど負傷し、塞がったはずの場所を見ていた。
「お姉さま…お姉さまの中に呪が侵入しています。幻夢さんからなにか呪術をくらいましたか?」
あの巫女めやはりあの回復符になにか仕込んでやがったか…。そしてそのことを久遠に教える。
「右肩を負傷して幻夢から渡された回復符を使った。」
その言葉にジト目でこちらを見、そして溜息をつきながら「動かないでください」と言う。そしてそのまま俺の右肩に手を添えなにやら言葉を唱えた。
「汝が怒りを鎮めよ」
短い言葉だったがどこか頭の芯に響き、脳を揺さぶれる感覚が残る。
「はい、大丈夫です」
「…結局なんだったんだ?」
なにをしているかわかない俺に久遠は丁寧に説明を始める。
「おそらく幻夢が回復符に呪を仕掛けていたのでしょう。それが傷口に侵入していたため、呪を取り除きました。まぁ呪自体が監視をする簡単なものなので何も準備が必要なかったのですが…気を付けてください。これが死などの呪いを乗せた呪だったら現状では祓えませんでした」
呪…か、言葉どおりなら呪いということなのだろう。そういえば式神がどうだこうの言っていたがどういうことなのだろうか。久遠なら知っているか?
「そういえば幻夢が式神のことをどうのこうの言っていたんだが…ッ!」
その言葉に久遠の顔が一瞬怒りに染まったように見えたのは気のせいだったのだろうか…。だが改めて見てもいつもの明るい顔のままだ。
「お姉さま…アイツにキスされましたか?」
「あぁ…したな」
久遠はその言葉に一瞬目をつむりそして決心したようにこちらを見る。
「それならば私とキスしましょう」
「……ハ?」
そして問答無用かというように俺の四肢を抑え込む無理やり唇を合わせてきた。
(なんだなんだ!?さっきからこれはあれか?モテ期ってやつなのか!)
「失礼しました。これで大丈夫です」
久遠は唇を離すと潤んだ瞳でこちらを見つめてきた。同性でもその姿に胸の動悸を抑えられないほど彼女の姿は悩ましかった。
「…あのお姉さま?そんなに見つめられると恥ずかしいのですが」
そっちがキスしてきたせいだろという言葉を胸にしまいこみ、なぜキスをしたのかを聞こうとし、口を動かそうとするのだがうまく舌が回らない。そしてそのまま眠るかのように意識を失った。
「ちょッ!お姉さま!?お姉さま、おねえーさまーーー!?」
(最近、気絶してばっかりだなー。…アハハハ。)
そのあと偶然キスの現場に居合わせたメイドが近くにてキス現場を目撃し鼻血を出しながら彼女を運んだのはまた違うお話にて…。
山「なにこの初見バイバイ」
作「深夜テンション恐るべし。というかこれ昼間の内に読み返してみて書き直そうかガチで迷った」
山「なんで書き直さなかったんだよ」
作「えーブレイブルーできないじゃん」
山「シカタナイネー」
作「うんシカタナイシカタナイ。だから目の前に出てるKENをしまってはもらえないでしょうか(^_^;)」
山「無理☆彡」C連打
作「アバババババ」