FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~ 作:ジャージ王子
「う~ん、いいトコ見つかったなぁ」
お湯の溜まった浴槽の中でルーシィが伸びをする。先日からルーシィはこのアパートで生活することになったのだ。
「家賃7万はちょっと高いけど間取りは広いし、収納スペースも広い。それから・・・」
よほど気に入ったのか身体を乾かしながら自分の部屋の良い所を次々と挙げていく。
そしてリビングのドアに着いた所でルーシィは一呼吸置いた。
「何より一番素敵なのは・・・」
ガチャリ・・・
満を持してドアを開けた先にはこれから自分色に染めようと思っているお気に入りのリビングが迎えてくれる。
・・・筈だった。
「よっ」
「あたしの部屋ー!」
しかし現実にはナツとハッピーがソファーでくつろぎながら菓子を食い漁っていた。
哀れルーシィ、その状況に部屋に対する讃辞の言葉が惨事のツッコミに変わってしまった。
「何であんた達がいるのよ!」
「まわっ」
ルーシィの怒りの回し蹴りがナツとハッピーをまとめて壁に叩きつける。
「だってミラから家が決まったって聞いたから・・・」
「聞いたから何!?勝手に入ってきていい訳!?」
ナツの言い分にルーシィが正論を振りかざす。するとドアの方からフライパンを持った男がやって来た。
「わりぃ、ルーシィ。やっぱり勝手に入ったら怒るよな」
「アルト!?・・・って、何でエプロン姿?」
そこにいたのはエプロンを着けたアルトだった。
「俺もナツ達と一緒に来たんだけど、この時間だとまだ夕飯は食ってないだろうなぁと思って作ってた」
「作ってたって、これをアルトが?」
「まぁな」
フライパンの中にはトマトソースとアサリの匂いが食欲をそそるボンゴレロッソが出来上がっていた。
「もう全部出来たし飯にしようぜ」
「なんか、はぐらかされたような気がする・・・」
「いつまで怒ってんだ?早くアルトの飯食おうぜ」
「誰のせいよ、誰の!」
正直まだ言いたいことは多々あったルーシィだが、アルトお手製の料理を見たら怒りより食欲の方が勝った。
†††††
「ふぅ~、食った食った」
「相変わらずいい食べっぷりだったな」
「アルトのメシは美味いからな」
ひと騒ぎあったがナツとハッピー、そしてアルトも含めてルーシィ宅で夕飯を食べた。
「でも、ホントに美味しかったね、アルトの料理」
「アルトは暇があればギルドの酒場でコックやってるんだよ」
「そうなの!?」
「ここ最近は忙しくてできてないけどな」
(絶対あたしより上手だと思う・・・)
想い人の方が自分より料理が上手い。その事実にルーシィは1人の女性としてなんとも言えない心境になる。
「ん、何だこれ?」
「!!」
部屋を眺めてたアルトが机に置いてあった紙の束を手に取った。
「ダメェー!」
「うおぉっ」
目にも止まらぬ速さでルーシィがアルトから紙の束を取り上げた。
「何なんだそれ?」
「な、何でもいいでしょ!」
「う~ん、気になるな」
「それより!今日は何でアルトもきたの?」
さすがにルーシィも夕飯を作ってくれに来ただけとは思っていなかった。
「あ、すっかり忘れてた。あれだ、タナカさんから貰った
「そういえば“ニコラ”とは契約がまだだった。ちょうどいいわ。星霊魔導士が星霊と契約するまでの流れを見せてあげる」
「おぉっ!」
ルーシィの提案にナツ達も食いついた。
「血判とか押すのかな?」
「痛そうだな、ケツ」
「ケツってそっちじゃねーだろ…」
「血判とかはいらないわよ。見てて」
そう言うとルーシィは銀色の鍵をかざした。
「我、星霊界との道をつなぐ者。汝、その呼びかけに応え
ルーシィが言葉を紡いでいくと鍵の先から鍵穴のような形の光が浮かび上がる。
「「「!!!」」」
3人もその反応に驚く。
「開け、小犬座の扉。ニコラ!」
バフッ!
周りに煙が立ち込めニコラがその姿を顕す。
「プーン」
しかし、ニコラの頭には耳がなく鼻(?)はドリルのように尖っており、マスコットのようなその姿は“犬”と呼ぶには若干不相応だった。
「ド…ドンマイ」
想像とかけ離れた姿をしたニコラに戸惑いながらも、ナツが声を絞り出した。
「失敗じゃないわよ!」
「…」
ナツとルーシィのやり取りは聞こえていないのか、アルトはニコラをじっと見ている。
(俺はこいつを知っている…?)
「あーん、可愛い~」
「そ、そうか?」
「ニコラの
「ナツ~人間のエゴが見えるよ~」
「うむ…」
唖然としている3人をおいてルーシィはメモ帳を取り出した。
「じゃ、契約にうつるわよ」
「ププーン」
「月曜は?」
「プゥ~ウ~ン」
首を横に振る。どうやら駄目なようだ。
「火曜」
「プン」
今度は縦に振る。OKのサインだろう。
「水曜」
「ププーン!」
「あ、木曜も呼んでいいのね」
「地味だな」
「あい…」
ナツとハッピーがいまだに戸惑っている。
「はい、契約完了!」
「ププーン!」
「ずいぶん簡単なんだね」
「確かに見た感じはそうだけど、大切なことなのよ。星霊魔導士は契約…つまり約束ごとを重要視するの。だからあたしは約束だけは破らないって決めてるの」
「!」
―あたし約束は絶対に破らないって決めてるの―
ルーシィの言葉でアルトの頭の中にとある風景がフラッシュバックする。
「そうだ、名前を決めてあげなきゃ」
「ニコラじゃないの?」
「それは総称でしょ」
う~んとルーシィが考えている中、先程まで黙っていたアルトが口を開いた。
「…プルー」
「え?」
「あれ、俺なんか言ったか?」
「うん、今プルーって。それこの子の名前?」
「あ、あぁ。…多分」
「多分?でもプルーか。可愛くていいかも。よし!今日からあなたの名前はプルー。よろしくねプルー!」
「プーン!」
喜びを表しているのか、プルーが飛び跳ねた。
(プルー…駄目だ、思い出せない。星霊魔導士が俺の過去に関係あるのか?って、ん?)
考えを巡らせていたアルトだが、足元にある違和感に気づく。
「プゥーン」
「あはっ、プルーったらアルトに懐いちゃったみたい」
「そうなのか?」
「ププーン」
プルーがどこからともなく飴を取り出し、アルトもそれを受け取る。
「サンキュー、プルー」
すると、突然プルーが踊りだした。
つたたたたっ
しゃかしゃかしゃかしゃか
まるっ
「え~と…」
「どういうことだ?」
「プルー!お前いいこと言うな!」
「「なんか伝わってるし!」」
アルトとルーシィには意味が分からなかったが、ナツには伝わったようだ。
「星霊か、確かに雪山じゃ星霊に助けてもらったからなぁ」
「そんなことがあったのか」
「そうよ、ナツはもっと星霊に敬意を払いなさいよね」
ちなみに雪山とは
「よ~く考えてみればお前、変なヤツだけど頼れるしいいヤツだ」
(コイツに変なヤツって言われた!)
「よし決めた!プルーの提案に賛成だ!」
「な、何のこと?」
「ここにいる俺達でチームを組もう!」
「なるほどー」
「チーム?」
聞きなれない単語にルーシィが頭を横に傾ける。
「チームっていうのはギルドのメンバー同士で結成するグループのことだ。1人じゃ難しい依頼もチームでやれば楽になるだろ?」
「へ~、面白そうね!」
「おっしゃー!決定だー!!!」
「アルトも入るんだよね?チーム」
「まぁな、前からナツとはチームみたいなもんだったし。ルーシィがいてくれると俺も助かるよ」
(助かるってことは、アルトがあたしを頼りにしてくれてるってこと!?)
よしっと人目もはばからずガッツポーズをするルーシィ。しかしアルトが言った“助かる”とは、主にナツのストッパー的役割であることには気づいていない。
「仕事はきめてあるんだ。早速行こうぜ!」
「もう、せっかちなんだから~」
アルトの一言ですっかりご機嫌な今のルーシィは、ナツの強引さも笑顔で許容すことができた。
「シロツメの街かぁ…。えっ!エバルー公爵って人の屋敷から本を取ってくるだけで20万J!?」
「な?おいしい仕事だろ?」
「随分と面白そうなの見つけてきたな」
「あら?」
依頼書を読んでいたルーシィがあることに気づく。
“※注意!エバルー公爵はとにかく女好きでスケベで変態!ただいま金髪のメイドさん募集中!”
「ルーシィ金髪だもんな」
「だね!メイドの格好で忍び込んでもらおーよ」
「ハメられたーっ!」
「星霊魔導士は契約を大切にしてるんだろ?えらいなぁ」
「ナツ!あんた騙したわね!」
「諦めろ、ルーシィ…」
「アルトまで…メイドなんてイヤよーっ!!!」
マグノリアの街に今日一番の悲鳴が鳴り響いたのだった。
どうも、ジャージ王子です!
今回も大分時間をかけてしまいました、申し訳ないですm(_ _)m
では今回の話を。今回のキーパーソンはやっぱりプルーですね。アルトの過去とはどんな関係があるのかはこれからのお楽しみということで←
引き続き、感想やご指摘などありましたら是非コメントしてくださいm(_ _)m
以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ