真剣で武神の姉に恋しなさい!   作:炎狼

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千李が帰って来たための臨時生徒集会てきな話をしたいと思います。
ではどうぞ。


川神学園 臨時生徒集会

 千李と百代が決闘を始める少し前……

 

 

「こないのう……」

 

「来ませんネ……」

 

 川神学園の校庭に鉄心とルーの姿があった。

 

 すでに多くの生徒達は校門をくぐり、教室へ向かっていた。しかし、その中に千李や百代たちの姿が見えない。

 

「やはり千李の奴、迷ってしもうたかのう?」

 

「そうですネ。川神市も一年で変わってしまったところもありますかラ」

 

 二人はため息をついていた。

 

 理由はいわずもがな、いまだに千李が顔を見せないことにある。

 

 本来千李の脚力と体力ならば、空港から川神市まで三時間とかからずにやってこれるだろう。しかしその千李がいまだに姿を見せないということは、途中で道に迷っているか、道草をくっているかだ。

 

「川神に入るときは気を消せというたのが間違いだったのう。あやつワシが予想していたよりも、気の使い方がうまくなっとる。ワシでもまったく場所が把握できん」

 

「それほどまでニ……」

 

 鉄心の言葉にルーは息を呑んだ。

 

 旅に出る前でさえ、千李の強さは百代をしのぎ、鉄心でさえ千李の本気にかかれば負けてしまうのだ。その彼女がさらに強くなっているとわかれば誰であろうと息を呑んでしまうだろう。

 

「しかし、いささか遅すぎる来もするのう。すまんがルーや周りを見てきてもらえんか?」

 

「わかりましタ。では……」

 

 ルーが動き出そうとした瞬間、鉄心とルーにピリッとした感覚が走った。

 

 多馬大橋のほうから二つの大きな気が発生したのだ。

 

 鉄心とルーはこの二つが誰のものかすぐにわかった。一つは武神といわれる百代の気。そしてもう一つはその武神の姉すなわち千李の気だった。

 

「これは……。まったくあやつらめもう少し場所を考えんか、周りに被害が出たらどうするんじゃまったく」

 

 鉄心は眉間を軽くおさえている。理由は百代と千李の戦闘のことについてだ。

 

 二人が戦うときは、川神院の修行僧数名と、鉄心が結界をつくらなければ周囲に被害を出してしまうことがある。

 

 だが今は結界も何もない状態で二人がやりあっていることならば眉間を押さえたくなるのも頷ける。

 

 しかし二つの気の衝突はすぐにやんだ。

 

「ん?えらく早くおわったのう」

 

「はイ。まだ始まって5、6分しかたっていませんネ」

 

「そうじゃの。じゃが、相手が千李じゃからな。あやつも姉らしくモモをおさえたのではないか?」

 

 二人が話していると、校庭の真ん中に空から影が二つ降ってきた。

 

「ふぃ~。着いた着いた。時間はっと・・・。うん、SHRの8分ぐらい前ね。今から行けば十分間に合うでしょ」

 

 一人は大和たちを担いだ千李でもう一人は百代だ。

 

「くっそ~。あと一息で姉さんを抜けたのに」

 

 百代は悔しそうに歯噛みした。

 

「まだまだ甘いわね妹よ」

 

 それに対し千李はフフンといった様子だ。

 

 二人は楽しそうに談笑しているが千李の足元に死屍累々の姿が。

 

 主に男子三人だが。

 

「姉さん達楽しそうだけど、オレ達はきつかったけどね……」

 

「「同感」(だ)」

 

 大和の意見に卓也と岳人が同意する。それに対し。

 

「でも楽しかっでしょう?またやってあげるわ。」

 

「「「それはいい!」」」

 

 千李の提案に対し男子三人が強く拒絶した。

 

 よほど怖かったのだろう。

 

 まぁ普通の人間が屋根伝いに登校することなんてまずないので、怖がるのは当たり前だが。

 

「おぬしら二人はもう少しまともにせんか」

 

 千李が振り返ると鉄心が、ため息をつきながらつぶやいていた。

 

「そんな気にしないでよ。ちゃんと学校にはまにあったでしょ。じじい」

 

「はぁ…。そういうことじゃないんじゃがの。まぁええわい。それより直江たちそろそろ行かんとSHRがはじまるぞ。早く行け」

 

「ヤバ!!行くぞみんな!はやくしないとウメ先生に鞭打ちされる。じゃあ姉さん達また後で」

 

「またね。千姉様。モモ姉様!」

 

 大和たちは教室へと駆けていった。大和たちの担任は規則を守らないものにはとても厳しい。それの罰が鞭打ちというわけだ。

 

 彼らが校舎の中に消えて行ったのを見送っていると鉄心が口を開いた。

 

「さて、ではモモ、千李お前達は此処でわしらと残れ」

 

「なんで?百代なんか聞いてる?」

 

「いや。どういうことだよじじい」

 

「うむ。実はのこれから臨時生徒集会を始めることになってな。千李。お前が帰って来たことを全校生徒に伝えておこうと思ってな。特に1年と2年の中にはお前をしらんやうもおろうて」

 

「げっ。本当に?私かなり嫌なんだけれど」

 

 それを聞いた千李は一気にげんなりとしてしまった。

 

 実は千李はこう見えて人前で話すことが嫌いなのだ。

 

 対人恐怖症とかそういうんではなく、ただ単に人前で話すことが嫌いなだけなのだ。

 

「別にやらなくてもよくないかしら?ねぇ百代?」

 

 味方を得るために百代に話を振った千李。だが百代から帰って来たのは思いもよらない言葉だった。

 

「いや、姉さん。私達は双子だろう?しかも外見はそっくりときた。だから間違ってしまう、1,2年生がいないようにやっといたほうがいいだろう」

 

 百代の提案に千李は驚いた。

 

 普段ならこんな面倒くさいことをしなさそうな百代がそんなことを言うとは思わなかったのだろう。

 

 ……そっ、そんな!?あのモモがこんなことを言うなんて……。まさかあれ?さっきの勝負で私が蹴りを入れたことを根に持っているの!?

 

 そんなことはさておき、千李と百代はかなり似ている。

 

 二人は一卵性双生児で生まれ外見的にはほとんど同じだ。今は千李が髪をポニーテールにしているが髪を下ろしてしまえば、長く付き合ってる大和たちでやっと見分けがつくほどだ。

 

 違うところをあげるとすれば、胸の大きさと、前髪クロスくらいだろう。百代は前髪がクロスがしているが、千李は前髪がクロスしていないのだ。

 

「はぁ……。わかったわよ。やればいいんでしょ?」

 

「うむ。腹も決まったようじゃのでは、少し待っていろ。そのうちみんな出てくるじゃろう。それまでに何を話すか考えておくんじゃな」

 

「はーい」

 

 

数分後

 

 

 校庭に全校生徒が集まっていた。

 

 みな臨時の集会ということもあってかざわついている。すると鉄心が壇上にあがった。

 

「みな、よく集まってくれたのう。臨時ということもあって多少ざわつくのもわかるが……。喝っっっ!!!!」

 

 鉄心の一喝でざわついていた生徒達が、一気に静まり返った。

 

「うむ。では今日集まってくれたのは、去年から一人この川神学園から海外にいっとった者が今日帰って来たのでな、みなに合わせておくかと思ってな。三年生はすでにしっとるものが多いと思うが、一、二年生は知らん者も多いじゃろ。というわけでそのものに今から自己紹介も兼ねて多少話をしてもらうからのよく聞くように。ではあがって来い」

 

 鉄心が言うと壇上に千李が上がってきた。

 

 千李の登場に対し、生徒達がまたざわめき始めた。

 

 生徒達からすれば百代と瓜二つの人間が現れれば驚くのも無理はない。

 

「えー。驚いてる子もいるとは思うけど……。私がさっき紹介に預かった川神千李よ。3年生は全員知ってると思うけど、1,2年生は知らない子も多いと思うから一応ざっと自己紹介しておくわね。苗字のとおり私は川神院の関係者。簡単に言うと百代の姉よ」

 

 千李の姉貴発言に生徒の半分以上が驚いていた。

 

 それもそのはず千李のことを知らない学生もいるのだ。そもそも百代に姉がいたこと自体初耳の生徒も多いだろう。

 

 驚いている生徒を尻目に千李は話を進めていく。

 

「まぁ、世界を旅してたのはただ単に世界を見てみたかったからなのよ。とりあえず自己紹介はこんなところかしらね。他になんか聴きたいことある人はいる?」

 

 千李が聞くと数名の生徒が手を上げた。

 

 その中の目に留まった子を千李は指名した。

 

「じゃあ、そこの何でかわかんないけど体操着の女の子どうぞ。名前と組よろしくね」

 

「はい。1年Sクラスの武蔵小杉といいます。率直にお聞きしますが千李先輩は、どのくらい強いのでしょうか?」

 

 武蔵小杉という子は千李に対し臆することなく聞いた。

 

 それに対し千李は。

 

「私の強さね……。あなたは百代とは戦ったことはないのよね?……ふむ。他の子たちもそういう口?」

 

 手を上げていた数名の生徒がうなづいた。

 

「そっか。じゃあ武蔵小杉ちゃん今戦ってみる?」

 

「え?いいんですか?」

 

 武蔵小杉は突然の提案に一瞬キョトンとしてしまった。

 

「ええ。かまわないわよ。いいわよね、じじい?」

 

 千李は振り向き鉄心に許可を取る。

 

「かまわんが、時間内に終わらせろよ?」

 

「はいはい。了解。じゃあやりましょうか?もちろんさっき手を上げた奴ら全員参加よ。前にでてきなさい」

 

 すると列の中から数名が出てきた。

 

 誰も彼も腕っ節が強そうな者達だ。

 

「ざっと10人くらいね。じゃあさっさとやりましょうか」

 

 千李そういうと朝礼台から降りた。

 

「では、すまんがみな真ん中を空けてくれ」

 

 鉄心が言うと千李と武蔵小杉たちだけを残し生徒が捌けていった。

 

「ルールは一本先取。時間がないからの。よいな?」

 

 鉄心の問いかけに二人はうなづく。

 

「では、はじめ!!」

 

 という掛け声とともに武蔵小杉が倒れた。

 

「はい。おしまい」

 

 

 

 武蔵小杉は自分がどうなったのかわからなかった。

 

 学園長が合図をした瞬間、自分の後頭部に強い衝撃が走ったのだ。そしてそのまま意識が薄れていった。

 

 だが武蔵小杉はこの戦いで思い知った。

 

 自分がどれほどの相手と対峙していたのかを。

 

 薄れ行く意識の中で彼女は千李のことを思った。

 

 ……バケモノと。

 

 

 武蔵小杉の後ろには千李が立っていた。

 

 観客はみな唖然、呆然といった感じだ。

 

 ほぼ開始直後に、武蔵小杉が倒れたのだ。しかもその後ろには千李の姿がある。

 

 まさに、瞬間移動、という言葉がふさわしいくらいに常人の目には写っただろう。

 

 

 大和たちも呆然としていた。

 

 ただ一人大和たちと戦闘を見ていた百代は笑っていたが。

 

「姉さん。さっきの見えたの?」

 

「ん?ああ。しっかりとな。さすが姉さんだ動きに無駄がなかった。これは次戦うときが楽しみだな」

 

 百代は千李と戦えることについて喜びを感じている様子だ。

 

 その様子に大和は苦笑いするしかなかった。

 

 それと同時に大和は思い出していた千李の二つ名を、彼女の二つ名はそれはすべてを屠り、そして撃滅させるという荒々しさからとり人は彼女をこう呼んだ「鬼神 川神千李」と。

 

「さて。じゃあ残りの奴等かかってきなさい。言っておくけど私は百代より強いわよ」

 

 そう言う千李の瞳はまさに標的をつぶすための鬼の目と化していた。

 

 その後残りの者達がどうなったかは言わずともいいだろう。

 

 

 挑戦者達を瞬殺した千李は壇上に上りただ一言。

 

「まぁ。というわけで。これから一年よろしくね。私に挑戦したい人はいつでウェルカムだから。私は24時間365日誰の挑戦でも受け付ける。以上」

 

 どこかの生徒会長のような台詞を残し千李は壇上から降りた。

 

 ちなみにこの日から千李には誰も挑戦しようとする人がいなかった。

 

 が百代と同じく、ファンクラブはでき、1,2,3年生の女子のほとんどは千李と百代のファンクラブに所属した……らしい。

 




今回は以上でございます。
どうでしたでしょうか?とりあえず武蔵小杉はやられキャラとしてのイメージが強いので瞬殺させてもらいましたが。(武蔵小杉好きの人ゴメンナサイ)

出しましたよ。千李の二つ名。本当は魔神か鬼神で迷ってたんですけど、なんか鬼神の方が自分的にカッコイイと思ったので鬼神にしてみました。それにこの辺で出しとかないと、出す暇がなさそうですからけっこう早めに出しときました。後悔はしていません。

次は土日くらいに更新できると思いますです。

7月6日修正

では今回はこれで。感想などまってまーす。

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