事件のことと次第は片付いて、カエル顔のお医者さんのスーパー医療ですっかり怪我も治してもらった私は、紫さんと一緒に帰り道を歩いていた。
途中、近道をしようという話になって公園と突っ切ろうと私たち二人は公園の中を歩いていると、ブランコに乗った二人組を見つける。
大の男二人がブランコに乗ってるなんてあきらかにやばい光景だけど、その二人を見て私は納得してしまった。
「あぁ……」
「知り合いなの?」
「まぁ、はい」
「個性的ね」
紫さんが言ってもなぁ……まぁなにはともあれ私は二人のそばに行って、うつろな目をしている“上条さん”と“ステイル”に声をかけることにした。
「君がいるということは、日本に違い無いみたいだね」
「は、なに言ってんの?」
「いや、佐天さん俺たちもなにがなんだか……」
え、どういうこと? もしかして私にはとても話せないようなことを男二人でやっていた? なにそれゾッとする。
まぁおふざけはこのへんにしても、この二人が揃ってる事件で魔術師関連の何かがあったのは間違いないんだろうなぁとは思うけど……。
私ですね、テレスティーナ倒したばっかですよ?
「なにか重要なことを忘れているような……まぁ忘れるのだからその程度ということだろう、違うかい?」
「そうなのか?」
「いや、絶対違うでしょう」
頭を押さえていた上条さんが、立ち上がる。
「お前の疑問をさっくり解消させてやる」
「東洋のまじないは神裂の専門なんだ、彼女に聞くよ」
「あら、私も東洋の魔術なら多少心得がありましてよ?」
そんな時そういったのは紫さん、ステイルが訝しげな表情で紫さんを見た。
「誰だいその女は」
「そんなことは良いから、目をつむって舌を出せ、べーって」
「ん……べー」
ステイルがやるとシュールだな、紫さんもちょっと引いてるし。
すると突如上条さんが走り出して、腕を振りかぶる。
「よくも人様をおとりにして逃げやがったな、拳!」
上条さんのアッパーがステイルに直撃し、ステイルは吹っ飛んだ。
いやぁ、気持ちの良いパンチだね!
「痛ぅっ……」
顎を押さえながら起き上ったステイルがばつの悪そうな顔で上条さんを見るあたり、なにかしたのはステイルなんだろうなぁと思う。
ともかくだ、私はこの状況に説明を求めた。
なにがあったか教えてくれと言ったら、ステイルは私も一度誘いに来たのだと言う。それはそれでいやだな。
「まぁなんと言うか、吸血殺しなんてものが絡んだりしていてね」
「へぇ……そりゃ物騒なことで」
私は苦笑いしかできなかったが、紫さんはおかしそうに笑ってる。
「ともかく、今は行こうぜ! 姫神を助けないといけねぇ!」
「また女ですか上条さん」
「涙子が言ってもね」
「へ、なんで?」
まぁともかく、私たちは四人で件の黒幕である錬金術師なんてものを相手にするためにそいつの本拠地である三沢塾という巨大なビルの前までやってきた。
だけれど、そのビルの前に立つのは大勢の甲冑を装備した騎士たち。
上条さんは知っているらしく、ステイル曰く『13騎士団の生き残り』らしいけれどさっぱりだ。
「グレゴリオの聖歌隊ね」
紫さんの言葉に、上条さんが反応した。
「でもそれって大人数が必要なんじゃ?」
「今頃バチカンの大聖堂あたりで3333人の修道士が祈りを捧げてるでしょうね……少し身構えていた方が良いわ」
「はぁ?」
「彼女の言うとおりだ、まったく佐天涙子の知り合いというからなにかと思えばなんでそんな知識を持っているのか」
「ステイルのくせに偉そうに」
「なんで君、ボクだとちょっと強気なのかな?」
とりあえず、赤く輝く騎士たちの剣を見て身構えた。
なにかの管楽器の音色が聞こえて、輝きがさらに増し、上空には暗雲が立ち込める。
ステイル曰く今から始まるのは『爆撃』それを思えばこの事件は私が疲れることなく終わるのかと期待しないでもないのだけれど、中にはどうやら上条さんが助けたい相手がいるそうだ。
それに、無関係の生徒たちも……。
「来るわよ!」
紫さんの言葉と同時に巨大な雷がビルに直撃、それと共にビルは徐々に崩壊を始める。
だけど、それは突如巻き戻されたかのように元の通りへと戻った。
割れたガラスも、傾いたビルまでもが元へと戻っていく。
「
「
紫さんがつぶやいた瞬間、すぐ近くで猫の鳴き声がした。
そちらを見ると、そこには見覚えのある白いベールがあり、中から子猫が一匹出てくる。
上条さんがその猫を『スフィンクス』と呼び、すぐに持ち上げる。
ネーミングセンス的にインデックスがつけたとみた。
「まさか、これ……インデックスの?」
上条さんがビルを見上げる。
なるほど、そういうことですか……これは厄介なことになってきたなぁ。
ついてないなぁ。
ビルの中を歩く私たち四人。
どうやらステイルは私たちの行き先である錬金術師、アウレオルス・イザードが居る場所はすでに掴んでいるらしい、記憶を消される前にだいぶ探検したとか言ってるけど結局上条さんが居なかったら全部ぱぁだったわけだから、今回ばかりは二人のファインプレーだ。
ともかく、これで時間の無駄遣いはなさそうだ。
「それにしても、言葉一つでなんでもどうにでもできちまう奴からどうやって姫神をっ……それにインデックスの奴も来てるみたいだし……」
「借りにあの子が来ていたとしても、ボクらみたいにいきなり危害を加えられることはない……待てよ」
立ち止まるステイルに、ぶつかる上条さんと私。
「なんだよ!」
「なるほど、そういうことかっ」
苛立ってるのか、ステイルは地面に煙草を投げ捨てた。
「三年も潜伏していれば、世情にも疎くなるということだ……というよりもだね」
「ん、話は聞いてるよ?」
「なるほど、インデックスと上条当麻については良くわかったわ」
「勝手にペラペラと喋らないでくれるかな、一応重要機密と言っても良いぐらいのことなんだよ?」
「あら、でも話を聞いている限りではそれを決定するのは涙子と、上条当麻でなくって?」
紫さんの言葉に片手で頭を押さえるステイルは、しょうがないというような表情で再び歩きだす。
なにはともあれ、紫さんの先に話してくれた
とりあえず、なにもかもは向こうに着いてからだ!
私たち四人はアウレオルス・イザードがいると思われる部屋の前へとやってきた。
扉は開きっぱなしでその中にいる緑色の髪をオールバックにしてるのがアウレオルス・イザードなんだろうと思う。そして黒髪の巫女さんが姫神さんと……いやはや、どこかで見たことあるよね。
私は紫さんに前にすれ違って近づいたら激痛に見舞われたという話をする。
「たぶん、
「なるほど」
ぼそぼそと話していると、アウレオルス・イザードが私たちを見る。
だがアウレオルス・イザードは私たちを見てる中、その机の上に横になってるインデックスを見て上条さんが今にも飛び出そうとする。
それを止めて、ステイルはアウレオルス・イザードに言う。
「残念ながら君は目的を成し遂げられない」
「ふん、今更ながら我が真意に気づいたか……ならばその大成を前に、己が無力を嘆き、嫉妬に身を焦がすが良い」
どういうこと?
「上手くいくなら焦がし甲斐もあるんだけどねぇ……くりかえすが、君に彼女を救うことはできない。インデックスを救うことはね」
インデックスを救うって……なにが?
「貴様はしくじったというだけのことだ、だが私は……私はこの子を……」
アウレオルス・イザードは眠っているインデックスを見て、優しく笑みを浮かべる。
「十万三千冊もの魔導書を一身に背負い、決してその呪縛から逃れることのできぬ少女……にも関わらず、その運命を受け入れてなお、己が不幸より他人の幸福のために……」
インデックスを知っていた、どういうこと?
「そう、彼もインデックスのパートナーだったのさ、今年は君……いや君たち、去年はボク、そして三年前はこのアウレオルス・イザードというわけだ」
だったら、なんでインデックスを攫って?
愛しさ余って殺したいなんてわけじゃないよね、なんか重福が思い浮かんだんだけど……。
ともかく、目の前のアウレオルス・イザードがインデックスを愛したロリコンの一人ってことは間違いない。
「これまで禁書目録は、一年ごとに記憶を消さねば生きていけなかった……これは必定であり、人の身には抗えぬ宿命……しかし!」
アウレオルス・イザードがこちらを見る。
何かに感づいたのか紫さんがあきれたような表情をした。
「逆に言えば人なれぬ身を使えば済む」
「吸血鬼とは無限の命を持つ者、無限の記憶を人と同じ脳に蓄え続ける者……あるのだよ吸血鬼には! どれだけの記憶を取り入れても、決して自我を失わぬ術が!」
いや、無いから、ていうか記憶のしすぎでどうにかなるとか無いから。
もしかしたらあるのか? いやないと思うけど……。
「ないわよ」
紫さんが私にボソッと言う。まぁつまりはこういうことだろうけど、今会話に突っ込む勇気は無いので黙っていることにする。
それにしても、吸血鬼と会いたいからこその
ステイルがタバコをくわえる、早く言ってあげなよ。
「なるほど、吸血鬼からその方法を教えてもらおうってわけか……念のために聞くけど、その方法が人の身には無効だとしたら?」
「当然、禁書目録を人の身から外すまで……」
なっ!?
「インデックスを吸血鬼にしようってわけ!?」
私は気づいたら言っていた。
「必然、それでも禁書目録は救われることに違いは無い、貴様にもそれはわかるはずだ。この子の最後を見たであろう貴様には! あの時、この子は告げたのだ。忘れたくないと、胸に抱えた思い出を消したく無いと! 指一本動かせぬ体で、この子は笑いながら告げたのだッ!」
感情を昂らせて叫ぶアウレオルス・イザードを見ていると、なんだか悲しい気分にもなる。
ずっとこの人は戦っていた、すべてを犠牲にしても、インデックスを救う術を見つけると……だから私も憎み切れない、木山先生と同じだ。この人はただ一人を救うために走り続けている。
そのために超能力者たちを操って魔術を使わせ、姫神さんを利用するだけ利用したことは別だけど……。
「どうあっても自分の考えは曲げない、か……だったら、ほら言ってやれよ今代のパートナー二人、致命的な欠陥を抱えた目の前の錬金術師に……」
二人って、まぁあれか、ステイルと神裂さんみたいなもんか……。
とりあえず今回は上条さんに任せるとしよう。
「お前、一体いつの話をしてるんだよ?」
「……なに?」
「そういうことさ、インデックスはすでに救われてるんだ……ここにいる上条当麻と佐天涙子によってね」
私ってなんにもしてない気がするけどなー。
「君にはできなかったことを、こいつらはもう成し遂げてしまったんだよ、ローマ正教を裏切り、三年間も地下にこもっていた君には知る由もなかっただろうけどね」
「そんな、ありえん、人の身で……魔術師でもなければ、錬金術師でもない者に……一体なにができるというのだ!」
ごもっとも、でも私は純粋な人間じゃないんだよね。今微妙なラインだけど?
「
ステイルが笑みを浮かべて言う。
ふらつくアウレオルス・イザード、だけど良かった良かった、この事件はこれで終了だね。
めでたしめでたしだ。
「とーま……」
突然、寝ているインデックスが寝言を言いだした。
「るいこぉ……」
「インデックス!」
私たち二人が同時にその名前を呼ぶ。
なんだかんだ言って上条さんにインデックスを託したつもりでも、インデックスは寝言で私の名前を呼んでくれるぐらい好いてくれているみたいだ。
なんだか感慨深い気分になって、ジーンとしていると、再びインデックスは私たちの名前を呼ぶ。
「とーま、るいこ……お腹減った」
上条さんがこけて、私は笑わざるをえなかった。
お腹を鳴らしたインデックスが寝返りを打って、楽しそうな表情をしている。
「りんご……りんごぉ……」
ステイルと紫さんはクスクスと肩を揺らして笑っていて、私と上条さんも顔を見合わせて笑ってしまう。
すると同調したのかアウレオルス・イザードも笑い出す。
でも少しばかり雰囲気が違い私たちが笑いを止めると、アウレオルス・イザードは私たち鬼の形相で見る。
「倒れ伏せ、侵入者共!」
私たちはその男の言うとおり、倒れ伏す。
紫さんもステイルも上条さんも私も、全員が床にはりつけられたように動けなくなる。
―――ていうかなんでこんなこと、終わってるのに!
「我が想いを踏みにじり、嘲笑い……」
ポケットから金属の針を出し、首に突き刺した。
なにをしているかはわからない。
「貴様らの死を持って贖ってもらう!」
瞬間、私たちの前に両手を広げて立つ巫女さんこと姫神さん。
上条さんは『やめろ』と言うけれど、姫神さんが動くことは決してない。
「私、わかるよ。貴方の気持ち」
「そいつはっ……もうっ」
アウレオルス・イザードがポケットから針を出したことで、私も気づいた。
この錬金術師はインデックスを助けるという
たった今、それを気づけるだけの要素は見つかった。
だからこそ私は全力で腕を伸ばして上条さんの腕を掴むと、すぐに体が動けるようになり、次は上条さんの腕を上条さんに触れさせる。
―――これでお互い動けるようになった!
「本当は、本当の貴女は!」
「姫神さん、その男はもう貴女の利用価値を無くしてる! 上条さん!」
「おう!」
上条さんが姫神さんの肩を抱くと同時に、アウレオルス・イザードが言う。
「死ね」
だが、姫神さんはそのままだ。
死なない姫神さん、それに驚愕するアウレオルス・イザード。
「なに、我が
「どう、して?」
姫神さんが聞くと、アウレオルス・イザードは笑う。
「油然、約束は守る……貴様を呪われた血の運命から救うという約束!」
「ごちゃごちゃうっせぇ、んなことはもうどうでも良いんだよ……良いぜ、テメェがなんでも思い通りにできるってなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」
盛大に啖呵を切る上条さん、だけれど申し訳ないなぁ。
「ここは、私がやりますから上条さんは姫神さんに触れていてください」
「え、佐天さん、俺今」
「良いですから、ね?」
「で、でも佐天さんが危険で」
それ以上の言葉を、私は聞く気なんて無い。
私は今、異常に頭に来ているのだ。なんでこんな男と木山先生を一緒だと思ったのか、違う全然違う。
木山先生は精一杯に犠牲を無くそうと頑張っていた、頑張っていたからこそ苦悩していた、でもこの男は犠牲をなんとも思わず……逆上し、自らの仲間を……姫神さんを殺そうとした。
アウレオルス・イザードは明らかに私を馬鹿にした表情をしている……。
「ねぇアウレオルス・イザード、吸血鬼を見たことある?」
「見たことは無い、知ってはいる、その存在もな」
「吸血鬼は私たちと変わらない、違うことと言えばその若き、幼き容姿をいつまでも保っていることぐらい……」
「なにを言う?」
私は笑みを浮かべたまま、錬金術師を見る。
「吸血鬼って言うのは頭を打たれても死ななければ失った体の一部を再生すらさせられる……いくら日に燃やされようが再生もする……」
「不快、貴様の言動に疑問を抱く」
「でしょうねぇ」
左目を隠す眼帯を外す。
「この紅い眼が、見えますか?」
「ッ……なにが言いたい?」
私はアウレオルス・イザードに聞こえないようにぼそぼそとつぶやく
―――妖魔結界、血呪封印、解除。
「“鬼”―――解放……!」
本日三回目なんて、実に多様しすぎだなぁ、これ咲夜さんに知られたらめちゃめちゃ怒られるんだろうなぁ。
なんて思いながらも私は軽くなる体に快楽すら覚える。
甘い匂いは、しない……なら平気だ。
「貴様っ、何者!」
「私ですか……吸血鬼ですよ?」
笑みを浮かべて言うと、アウレオルス・イザードは驚愕に表情を歪めた。
針を首に刺すと、すぐに冷静な表情になり針を投げ捨てる。
私は今できる全力を持って未来を見た。
「銃をこの手に、弾丸は魔弾、用途は射出、数は一つで十二分ですか」
「銃をこの手に、弾丸は魔弾、用途は射出、数は一つで十二分……!?」
私が同時に言った言葉は一期一句間違いない、いや同時というよりは私の方が少し早かった。
未来を見て、音を聞いた、それだけ。
―――ただ、やけに疲れるっ。
「なっ!」
「なにを驚いているんです、私は吸血鬼ですよ?」
笑って言うと、アウレオルス・イザードは少しばかり後ずさる。
「人間の動体視力を超える速度で、射出せよ!」
銃を撃つが、当たるわけがない。すでに私にはどこに撃つか見えているのだから……。
アウレオルス・イザードがもし『必ず当たる』とでも言っていれば当たったんだろうけどねぇ?
「なっ!」
「吸血鬼っていうのは、貴方の常識じゃ計り知れない存在だ、そう……貴方には私に勝てるビジョンが見えているの?」
「ッ~!?」
「ほら、言葉のままに現実を変えるなんて嘘っぱち、私のこの紅い眼には見えてる……貴方のその力は全部自分が信じるからこそできること、ほら、自分で信じてみてよ……吸血鬼を殺せるって」
私はこれまでにないような笑みを浮かべて一歩一歩、彼に近づく。
「ほら、してみなよ……貴方ならできるよね?」
そこで私は気づく。
「上条さん、姫神さんから手を離して平気ですよ」
「で、でも佐天さんっ……佐天さんはそのきゅ、吸血鬼なん、だろ?」
「平気よ上条当麻、涙子の言うことを聞きなさい」
「あ、あぁ」
上条さんが手を離しても、私には何もない。
「フフ……ハハハハハハッ!」
私は笑ってアウレオルス・イザードを見る。
種は簡単、私はもう吸血鬼じゃない。
「な、なぜ
「簡単なことだよ、私には聞かない……あんなの効くのは雑魚だよ、ほら……私を殺すにはその力を使うしかないよねぇ、
「さ、先の手順を量産、十の機銃にて同時射出!」
すべての弾丸は私に当たるが、私に痛みを与えない。
だって、信じてないもの、私を殺せるって……。
「痛くもかゆくもないけど……?」
「ひぃっ!」
針を出そうとするが、動揺しきっているのか針をばらまき、かき集める。
「それがなきゃ、ハイにもなれないよねぇ……雑音だらけの世界で、自分の思い通りにもできないよねぇ?」
「ひっひぃっ……ああぁっ! 来るな、来るなぁぁぁっ!」
走って、私たちから遠ざかろうとする。
「きゅ、吸血鬼! これが吸血鬼だというのかっ!」
「そうだよ、そして貴方の力はもう、なんの役にも立たないよ、ほら」
私が指差した方向には、地面に倒れ伏すことなく立っている紫さんとステイル。
「ひぃぃっ!? やめろ、考るなっ、私の力を持ってすればこんな奴らにっ!」
「言葉のままに世界を歪める? 詭弁も良いところだ……お前の能力は違う、考えたことを現実にしちゃう能力、なんだからねぇ?」
「こ、これがっ……ほ、本物の、吸血鬼っ!?」
私は、錬金術師に手を伸ばした。
「ううあぁぁぁぁぁぁっ!!?」
翌日、私は公園でステイルと話をしていた。
つまりは昨日の説明、もちろん紫さんもついてきたけど問題もないでしょう。
ステイル曰く、アウレオルス・イザードはすべての記憶を無くしていたそうだ……理由はと言えば、おそらく彼が最後に『自分は何も知らない』と思い込んだことにあるということ。
顔を変えて野に放ったって、大丈夫なのかな?
「まぁなにはともあれ、三沢塾は閉鎖、君にも礼を言いたいんだがなんだか馬鹿馬鹿しいんだよね、君がやったことはその眼を見せて吸血鬼を語り、アウレオルスを自滅させただけだからねぇ」
「んなこと言ったってあの状況じゃあれが打開策でしょ、あたしだってびくびくしながらやってたんだから」
「でも、先読みだけがわからない」
それに関してはわかられても困る。
ある意味これは、能力として扱われるのかなぁ?
「あはは、あれはちょっとした頭の回転ですよ」
「ふぅん……」
「なるほどね、おっとそろそろ時間だ失礼するよ」
ステイルは踵を返してその場から去る。
すると、タイミングよく現れるのはインデックスと上条さんと姫神さんの三人。
私と紫さんが軽く手を振ると、インデックスが走って私に抱きついてくる。
「るいこー!」
「はいはい」
「ご飯食べよ!」
「おい」
軽く突っ込みにデコピンを入れると、額を押さえるインデックス。
上条さんと姫神さんの二人に笑いかけると、姫神さんは少しばかりばつの悪そうな顔をした。
わかってるのかな、私が混血だってこと……いや、わからないか?
「とりあえず、こっちが姫神
「まぁ、昨日ぶりですね」
「改めて、よろしく」
「はい」
握手をするけれど、何もない……?
頭痛とかすると思ってたんだけどなぁ。
「あいさの能力は歩く教会の一部で封印してるからもう大丈夫なんだよ!」
「うん、ありがとうインデックス……貴女、佐天も」
「いえ全然大丈夫ですよ、まぁこれからよろしくお願いしますってことで」
「うん、よろしく」
姫神さんがそう言って笑ってくれる。
とりあえずお互い手を離して食事に行こうということになった。
上条さんと私の割り勘にするのが妥当だろうけれど、いやそれにしても……。
「これとこれとこれ」
「あとこれも食べたいわね」
「良いセンスなんだよゆかり!」
「あら褒めてもなにも出ないわよ」
二人して色々と頼んでいく。
いやぁ、良く食べますね紫さん、お祭りの時にご察しでしたけどー! ハハハハッ!
私と同じく瞳に光が無くなった上条さんと顔を合わせて、私たちは頷いた。
これで良いんだけど、良いんだけれども!
「不幸だぁ!」
「不幸だぁ!」
あとがき↓ ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。
吸血殺し編終了!
一話ではじまり一話で終わり、まぁ原作もアニメも短かったからね、しょうがない!
書き直さないでござる!絶対に書き直さないでござる!
まぁ吸血殺し編って話の伸ばしようがないっていうか、まぁとりあえず佐天さんがガッツリ前に出た話となりましたが……まぁまぁ
とりあえずアウレオルスを追いつめられたのは上条さんと違いガッツリ人外の力使ってるというのもある感じです
まぁなにか疑問などがありましたら感想で
では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!
PS,読者さん!妹達編ですよ妹達編!