とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~   作:王・オブ・王

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40,トラブル・マイライフ

 朝っぱらから、私は美人のために御飯を作ると言う大役を仰せつかって……ってなんだろうこのテンション、朝だから?

 ともかく、私こと佐天涙子は現在同居人こと八雲紫さんに朝さっそく起こされて、朝食を作って食べて、食べ終える。今その段階だ。

 

 今日はやることもないから、あとはどうするかなぁ。

 テレビを見ながら、お茶を飲む私と紫さん。紫さんは昨日買った部屋着、タンクトップのシャツとハーフパンツだけ、私が男だったら垂涎ものですよ。

 

「あぁ、そう言えば八雲さん」

「なにかしら?」

「……あ~、いや、なんでもないです」

 

 ―――ローラ=スチュアートって名前を聞かれたことを思い出して、ついでに言うとローラ=スチュアートとって言う名前にも聞き覚えがあったんだけれどそれを言うとまた“不幸”なことになりそうなので、言わなくても言いや。

 紫さんはジト眼で私を見てくるけど、完全に怪しんでるんだろうと思います。ハイ。

 まぁ私が幻想郷の異変の犯人っていう証拠があっても、犯人じゃないって証拠が無いんだから仕方ないよねぇ。

 

「ところでちょっとした疑問なんですけど、吸血鬼や妖怪ってこっちの世界じゃどういう扱いなんです?」

 

 私がふと、気になることを聞いてみた。すると紫さんは私を一目見てから少し考えるそぶりをしてから話し出す。

 

「こっちの世界がどうかは興味も無いから調べもしないけれど、私が知っている“あの男”なら間違いなく私たちの存在を無いものとして扱っているでしょうから……たぶん若い魔術師たちにとってはお伽話やらの世界の生き物の話よ。だからこそ、貴女のその左目と左腕はどこぞの計画にとってもイレギュラーだったりするんじゃないかしら?」

 

 そこまで話して、紫さんは止まり私の方を先ほどと違う顔で見る。私は正直“あの男”と言うのが誰かもわからないまま話を聞いていたけれど、紫さんは何に引っかかったのか私を良くわからない目で見ている。

 どうしたんだろう?

 

「解せないわね、貴女が―――」

 

 紫さんが何かを言おうとした時に、インターホンが鳴った。

 私はすぐに立ち上がって玄関へと向かいドアを開ける。

 

「どなたで―――」

「佐天さん、私ですよ」

「どしたの初春?」

 

 メールも電話も無しに家に来るとは珍しいと、正直驚いた。

 

「電話はしたんですよ?」

「あれ、ごめん気づかなかったや」

 

「こんにちは佐天さん」

「ごきげんよう」

 

 そして初春の後ろに出てくる御坂さんと白井さん、これはこれは大所帯でどうも……じゃなくて!

 この状況は不味いんじゃないだろうかと、私は内心で少しばかり焦っている。

 ただでさえ最近は白井さんから『たらし』だのなんだのと言われているんだから、これで私の家にあんな恰好した女の人がいたらこれはこれは不味いことになるんじゃないでしょうか?

 

「どうしました佐天さん?」

「いや、そのね……ちょっと待っててくれる?」

「はい、構いませんけど」

 

 私はすぐにドアを閉めて居間へと向かい、紫さんの方を見る。

 

「出かけてきます」

「ええ、そう……」

 

 怪しんでるなぁ、いや怪しまれるか、そりゃそうだよね。

 やっぱ紫さんは私にこのまま気を許すわけには行かないんだろうなとは思う。状況証拠ってものがあるし、私が紫さんの警戒するほどの相手の手下だったらそう簡単に手の内を見せるとも思えないだろうし、やっぱり怪しまれるのは当然か……よし!

 

「八雲さん、一緒に行きましょう」

「は? 何考えてるのよ」

「ただ私と八雲さんはあくまで親戚、ということでなら……」

 

 私の提案に、少しばかり考えるような顔をする紫さん。

 

「わかったわ、つまり私は貴女の親戚をやれと言うことね」

「はい、監視ついでにこの学園都市のことを調べられればいいんじゃないですか?」

「……そうね、わかったわ」

 

 紫さんは立ち上がると、テレビを消して着替えを始めた。同性の前だから気にしないのはわかります、わかりますけど……さすがにその凶悪ボディを見せつけられる私の身にもなってください。

 着替えを終えた紫さんが準備完了という状態で、ブロンドの髪を軽く払う。親戚で通じるかなぁ?

 とりあえず私は紫さんを連れて家を出る。

 

「お待たせしましたー」

 

 私と、その後ろから紫さんが出てくると三人が同時に『うぉう!』と声を上げる。

 

「こちら、私の遠い親戚の八雲紫さんです」

「しばらくこの子の家に泊まることになったのだけれど、よろしくね」

 

 そう言う紫さんだけれど、私の友達と言うこともあって少しだけ警戒気味だ。私ほどじゃない、あまり怪しんでいないようにも思える。

 

「よろしくお願いしますの」

「よ、よろしくお願いします」

「よろしく……お願いします」

 

 白井さん、初春、御坂さんの三人が挨拶を返すと、紫さんは笑顔を浮かべて頷く。私の対応とは大違いじゃないですか、やだー!

 まぁ仕方ない……けど、紫さんともう少し仲良くしたいな、なんて思うわけですよ佐天さんも。

 

「で、今日は学園都市をもっと案内したいんですけど、三人なら私より色々知ってそうじゃないですか?」

 

 裏道なら負けませんけど。

 

「ああ、じゃあ今日は八雲さんに学園都市を案内するってわけね」

 

 御坂さんがそう言うので私は頷いた。

 

「よし、なら行くわよ!」

「もうお姉様ったら、そんなにハシャイで……」

「じゃあ行きましょうか佐天さん、八雲さん!」

 

 三人がこんな感じでほんと助かったよ。

 私は家の鍵を閉めてから、御坂さんを先頭に白井さん、初春、紫さんと並ぶ最後尾を付いていく。

 基本四人なのに珍しく五人になっている私たち、少しばかりいつもと違う、変わった日が楽しめそうでわくわくしてくる半分、怖さ半分。

 

「そう言えば八雲さんっていくつなんですか?」

「17歳よ」

 

 ―――!?

 

 

 

 八雲紫さんじゅうななさいの変、私の中でそう名づけられた事案は呆気なく片付いてしまった。案外信じられるらしい、御坂さんにはとても同い年だと思えない知り合いがいるらしい。白井さんと初春は風紀委員(ジャッジメント)の事件でずいぶん老け……げふんげふん、大人っぽい学生を見るらしいし。

 ていうか今思えば小萌先生も大概だよね、実年齢いくつよ。……いや、逆に怖いから聞くのはやめよう。

 

「へぇ成層圏外までエレベーターね」

「はい、エンデュミオンって言うんですけど、学園都市じゃないと絶対作れないとまで言われた速度でできたんです!」

 

 今は紫さんと初春が話をしているけれど、軌道エレベーターの話をしている。好きだよねぇ初春はこの手の話、やっぱり科学側としては正しいよね……私は魔術側なのかな? いやでも、科学側とも言えるはず……私はどっち側に扱われるんだろう。

 そもそも紫さんがどっち側かも私にはわからないし……。

 そんな時、白井さんがふと口に出す。

 

「そう言えば、八雲さんはどちらからこちらに?」

「……長野よ」

 

 あれ悩んだな、たぶん……。

 私は紫さんの隣に行って軽く顔を寄せて聞いてみる。

 

「なんで長野なんですか?」

「……海が無いから」

 

 おぉう、もしかして海嫌い……?

 

 とりあえず、私たちはいつものファミレスに入ることになり、五人で座る。もちろん私は紫さんの隣で、私の隣に初春。紫さんの隣はさらに御坂さんが座りその隣に白井さん。

 一人増えるだけでずいぶん新鮮な感じがする。まぁ誰も嫌な顔をしないあたり本当に嬉しいね。みんな優しい。

 ドリンクバーを頼むと初春と白井さんが飲み物を組みに行ってくれ、残ったのは御坂さんと紫さんと私。

 

「そう言えば、能力レベルっていうの、貴方たちはいくつなの?」

 

 紫さんは興味本位でそう聞いてたんだろう、丁度白井さんと初春も帰ってきた。

 

「私がレベル1で、白井さんがレベル4ですよ」

「そして! そして我らがお姉様が学園都市に僅か7人の一人! レベル5の|超電磁砲(レールガン)ですのよぉ!」

「ちょっ! 抱き着くな馬鹿!」

 

 白井さんがいつも通り御坂さんに抱き着く。紫さんは御坂さんを見て少しばかり顔をしかめたのは、なんでだろう?

 私みたいに疑うべき証拠が、あるのかな?

 学園都市から私が来ていたことを警戒していたぐらいだし、学園都市トップとなるとやっぱり敵を警戒しているんだろう……。

 

「八雲さんはどうして学園都市に来たんですか?」

「ちょっとした観光よ、学校も休みだし」

 

 ―――17歳設定、続いてたんですか。

 

「今の時期は夏休みですもんね」

 

 初春がそう言って頷くと、少し紫さんは不思議そうにした。

 

「その割にはこの子以外は制服、なのね」

 

 私を指差して言う紫さん。

 

「わたくしと初春はこの学園都市の治安を守る風紀委員(ジャッジメント)の役職についていまして、その仕事の際は基本的に制服ですの、そしてわたくしとお姉様は休日だろうと制服着用が義務付けられている常盤台中学に所属していますので、制服なのですわ」

「なんだか堅そうね」

 

「そりゃそうですよ八雲さん! なんたって常盤台は学園都市女子生徒の憧れ、超お嬢様学校!」

 

 初春のお嬢様への憧れが久しぶりに炸裂、紫さんは御坂さんと白井さんを見て『お嬢様?』なんて感じの顔をしてる。わかります、はいわかりますともその気持ち。

 

「佐天さん、タイが曲がっていてよ?」

「何言ってんの?」

「ひどい! ノってくださいよ!」

 

 嫌ですよ、佐天さんはお嬢様なんて興味無いんです。どっちかというと使える側に居る方が性に合ってる感じだしねぇ、すっかりメイドが板に着いちゃって……。

 私普通のシャツだしタイも無いし!

 

「そう言えば能力者狩り、まだ頻発してるらしいですよ」

「ん、能力者狩り?」

「佐天さんと違い、無能力をひがんで能力者を無差別に襲う事案が発生していますの……見ていると佐天さんってほんとできた方だと思いますわ」

 

 あはは、そんなに褒めても何も出ませんよ?

 というより、ビッグスパイダーがつぶれてもやっぱり能力者狩りは止まないか、これは厄介極まりないなぁ。能力者狩りを全部終わらせるためにはやっぱりあの“音”の発生源をつぶすしかないだろうし……あれ、あんな特殊な音をスキルアウトたちはなんで持ってるんだろう?

 誰かが、能力者狩りを促してる?

 

「でも佐天さん、私たちの仕事に首を突っ込むのはいかがかと思いますわよ」

「うっ」

 

 痛い所を突かれたなぁ、今余計なことに首突っ込もうと考えてたし……。

 でも、能力者狩りに関しては私が絶対関わると決めたし、白井さんと初春には悪いけどね。

 

「まぁそれを言えばお姉様もですけれど」

「うっ」

 

 私と同じような反応をする御坂さん。

 

「御坂さんと佐天さん、固法先輩からも二人が出張らないようにって言われてますから! 特に佐天さんですよ。問題があったらレベル5の御坂さんは大目に見てもらえますけど……」

「な、なんかごめん佐天さん」

「いやいや、なんで謝るんですか! しょうがないですよ、私ももっと頑張ってレベル上げないと!」

 

 その方が色々な問題に顔を突っ込みやすいんだよねぇ。それにもっと強くなれるかもしれないし!

 

「色々大変なのね」

「まぁ、色々な異変に首突っ込んでますからね」

 

 落書き事件しかり、レベルアッパーしかり、永夜異変しかり、能力者狩りしかり。まぁこういうことに顔を突っ込むのが私らしいというか、私たりえると言うか……まぁヒーロー見習いですからね。

 そんなことを考えていると、私の電話が鳴った。表示されるのは小萌先生の名前。

 

「もしもし、どうしました?」

『佐天ちゃん、黄泉川先生が仕事でたった今呼び出されました』

「……はぁ」

 

 どういうことだろう?

 

『近場で銀行強盗が起きて、車でそのまま逃走していったらしいんですが』

「はい、それは大変です」

『佐天ちゃんはすぐ巻き込まれますからねぇ、気を付けてください』

 

「テメェら大人しくしてろ!」

 

「遅いです」

『まぁ気の付けようがないですからねぇ』

「はい、とりあえずヤバそうなので切ります」

 

 小萌先生からの『はいはーい』という声を聞くと、たぶん信頼されてるんだと思う。うん、思おう!

 人数は五人。

 

「何事ですの!?」

「強盗だそうです」

「え、なんでこんなファミレスに!?」

 

 こんなって……いやまぁ、なんでここに来たんだろう。だって車があるならそのまま逃げた方が楽だと思うし、だけどそこまで馬鹿じゃないはずだし……。

 

「いたぞ!」

 

 なっ、なんで強盗が私たちの方向いてんの!?

 

「お姉様!」

 

 白井さんが鉄矢を取り出した瞬間、強盗が音楽プレーヤーをポケットから取り出して再生ボタンを押す。瞬間、例の能力者狩りのスキルアウトたちが使っていた能力者を無力化する音楽が流れる。店内でも何人もの人が頭を押さえて蹲ったりする。

 

「ぐぅぁっ!」

「お、お姉様っ……!」

「な、なんですかこの音はッ」

 

 御坂さん、白井さん、初春の三人が苦しそうに頭を押さえるけれど私と紫さんにはまったく効かない。店内にはほかに効かない人たちもいるけれど、銃を持っている大男五人に抵抗しようと思う人たちは居ないに決まってる。

 なら、動くべきは私だ。男たちが私たちを見ているからこそ、私が動けば四人に危険がおよぶ。

 

「私が伏せろと言った瞬間、伏せてください」

「ぐっ、えぇっ?」

 

 なにを言っているわからないと言う様子の御坂さん、白井さんは少し怒ったような顔をしているけれどこれが一番だってわかってる。

 

「伏せろぉぉォッ!」

 

 私の指示と同時に背後で音がした。ちゃんと伏せているようでなにより!

 周囲のお客さんたちもワンテンポ遅れて伏せ、男たちは私がいきなり叫んだことに動揺したのか一瞬躊躇した後にトリガーに指をかける。最初にかけてないってことは、素人!

 私はすぐにテーブルを踏み台にして天井近くまで跳ぶと同時に手に持っていたナイフを出して―――投げる!

 

「なっ、ぐぁっ!?」

 

 一人の腕を掠り“傷をつける”ナイフ。そりゃいつもの魔法でコーティングされたナイフじゃなくてお店のナイフなんだから、基本的に危険ではないし店のナイフっていうのは刺さりはしないけれど、掠ればそれなりに切れる。そしてどうせなら!

 ほかのテーブルに着地すると同時に、ナイフやらフォークやらが入っている小さなかごを踏んで中身を宙へと放り出す。

 目の前まで飛んできたナイフとフォークを両手に持って、すぐにそれを投げる。

 

「がぁっ!?」

「うあっ!」

 

 トリガーを引こうとしてる二人の指にナイフを掠らせフォークを突き刺す。それだけで十分時間稼ぎになるから。

 

「次ぃッ!」

 

 テーブルの上っていうのはさすがに危ない。残り二人が私に銃口を向けた瞬間、私はテーブルの上からすかさず降りて物陰へと入る。

 銃声と共に銃弾がぶつかる音が響く。

 

「うひゃ~、どうしよ」

 

 思わず苦笑。私は左手を見る。

 

「……やる?」

 

 出し惜しみをしてみんなに被害を出すわけにはいかない。でも……。

 

「あら、中学生一人にご熱心ね?」

 

 この声っ、紫さん!? なるほど!

 私はすぐにジャケットの中からナイフを六本出して両手の指の間に挟んで、物陰から飛び出す。

 

 強盗は紫さんの方を見て銃を構えている―――ん? なんだろうこの違和感……でも、今はそれを考えてる場合じゃない!

 すぐに両手を振るいナイフ六本を強盗二人の体に突き刺す。それでも魔法のコーティングを得ているナイフで傷つくことは無く、男たちは悶えるだけ。

 

「このっ!」

 

 私はすぐに走って一人の鳩尾に掌底を打ち込んで、少し跳んで後ろの強盗の延髄に回し蹴り。ナイフとフォークを食らった三人がまだダウンしてるわけも無く私にまた銃を向けるけれど……そんな速度なら私の方が早い!

 ジャケットから大型のサバイバルナイフを出して咲夜さんに教えてもらった通り、流れるように斬る!

 

「うあぁっ!?」

 

 一人目っ!

 私に向けられた銃口を上に蹴りあげて天井に撃たせてから、喉元を搔き切る! 痛みだけ、だけれど喉元に切られるような痛みを与えられれば十分なダメージ!

 これで二人目ッ!

 そして三人目の方を見てみれば、すでに私に銃口を向けていた。

 

「ッ!」

 

 死ぬかと思った。正直、ヤバかった。けれど突如どこからか飛んできたドリンクバーのグラスが強盗の頭に直撃し、トリガーが引かれ銃弾は私の頬を掠る。

 

「ラァッ!」

 

 右足を軸に回転してからの蹴り。

 強盗の顎を横から打つ。白目を向いて倒れる最後の一人を見届けてから、私は悶える強盗たちの傍にある銃とナイフを全部拾う。

 ナイフはジャケットに入れて、銃はテーブルの上にまとめて置く。

 最後に音楽プレーヤーを手に取って、音楽を消した。

 

「もう出てきて平気ですよ」

 

 そう言うと、御坂さんと白井さんと初春はフラフラしながらソファに座る。まったくもって厄介なことに巻き込まれたなぁなんて……。

 あの音楽があればさすがに白井さんも出張れないか。

 それにしても私たちの座っていたテーブルの上のグラスが一つ足りないんだけれど……紫さんのが無いのかな?

 

「ありがとうございました、助かりましたよ」

「なぜだか私に殺気が向いている気がしてね、利用させてもらったわ」

 

 いやはや、ほんと助かった。

 ほかの三人はまだ頭が良く働かないようで……あの音楽そんなにヤバいんだ。

 

「あぁ、申し訳ありませんの佐天さん……風紀委員(ジャッジメント)として情けなくありますわ」

「いえいえ、困った時は助け合いでしょ」

「ふふっ、おっしゃる通りですの」

 

 笑う白井さん、今回は怒られなさそう。

 

「あぁぁぁっぁ!」

「うわっ、どうしたの初春!」

「さささ、佐天さんの顔にっ! 佐天さんの顔に傷がッ! 許しませんよぉ!」

 

 おぉう、私のためにわざわざ怒ってくれるなんて、良い友達を持ったもんだよ。

 私は何度か頷いて考えてみる。

 ―――今回のこの強盗たちは、本当にただの銀行強盗なのか……。銀行強盗というのが建前で、本当はここが目的だったとか……?

 

「いや、無いか」

 

 馬鹿馬鹿しいことを考えたもんだなぁ、とか思いながら私はとりあえずアンチスキルの人が来る前にこの場から撤退しようと思った―――んだけれどもアンチスキルの人たちがぞろぞろと入って来て伸びてる犯人をすぐに確保する。

 まだ大丈夫、逃げられると思って私はそっと裏口へ回ろうと席を離れるんだけれど―――。

 

「サテェンッ!」

「こ、この声は……」

 

 私が声のする方を見れば、笑顔で私を見ている黄泉川先生がいた。

 もうこのパターン飽きたよっ……。佐天さんは心底疲れてるんですよ。

 

「私と私以外のアンチスキル、誰に事情聴取されたい?」

「……黄泉川先生が良いです!」

 

 私のジャケットの中のナイフを見ている黄泉川先生。私は頷かざるをえなかった。

 まぁ、私がナイフとかを持ってても唯一理解してくれる人でしょうからねぇ……やば、紫さんどうしよ。

 相変わらず事件あり、学園都市は今日も佐天さんを飽きさせませんよ、ホント……。

 

 ―――不幸だ!

 

 

 

 




あとがき↓  ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。















オリジナル話はこれでおしまいです。超電磁砲に入りますでございまする!
とりあえずこの話を入れたのはゆかりんを三人に紹介したかったということ、それと伏線を立てておきたかったことですな。まぁ賛否両論あるでしょうけれどもとりあえずこんな感じで。
今回は更新が少し遅れましたが、ただいまフランの短編執筆中にて許してください、うん。

では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!

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