とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~   作:王・オブ・王

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35,新しく見えるモノ

 人里の寺子屋でいつも通りの授業が行われていた。

 授業を受けている子供たちは全員、畳の上で正座をして本を持って教師の言うことに耳を澄ます。だがやはり子供というのはやんちゃで落ち着きが無いものであり、少年二人が何かを話ながらくすくすと笑っている。

 教師は少年たちの背後に気づかれないように立ち、両手で持った本から片手を離して軽い拳を二人の少年に軽く落とす。

 

「いて!」

「うわっ、なにすんだこのババァ!」

 

 子供たちが抗議をする。

 

「ババァじゃないでしょうがぁ!」

 

 大声で怒る教師、だがその瞬間に鐘が鳴る音がした。

 

「わかったよ佐天先生」

「はい良くできました、今日の授業はここまで! みんな宿題忘れないようにね、明日は慧音先生の日だから大変だよ!」

 

「はーい!」

 

 生徒たちが一斉に返事をして身支度をするとぞろぞろと帰っていく。生徒たちは『さようなら』の言葉を言って去っていくので、現在教師である佐天涙子もさようならを返して先ほどまで持っていた教科書を脇に抱えて歩いていく。教室を出て少し離れた部屋に入ると教科書を本棚に入れる。

 服装は教師ということもありロングスカートと白いワイシャツにベストを着ていた。メイド服やら戦闘服なんて着れるわけもない。

 涙子は部屋を軽く片付けて、寺子屋を出る。

 

 

 

 あれから、永夜異変からすでに一ヶ月半の時が過ぎた。涙子としても学園都市にそろそろ帰りたい気持ちがあるが、帰り方だってわからないのだから今は今で頑張って教師をやるのが自分の精一杯である。

 教師と言えば、学園都市の方で小萌にも色々と迷惑をかけたことを思い出す。主に家の屋根を吹き飛ばしたあたりはかなり申し訳ない。もれなく幻想入りでもしていれば若干でも笑い話になるのだが……。

 

「佐天!」

 

 声をかけられて、涙子はそちらを見た。人里の中を歩いている一際目立つ服装、ひいては向こうの世界で言う学生の制服のようなものを着ている少女。片手にバスケットを持ちながら歩いてくるのは鈴仙・優曇華院・イナバだ。

 この一ヶ月半の間でお互い人里に顔を出すこともあり、良く会っていた。ついでに言うといきつけの茶屋までできる始末だ。ということで、涙子は教師のバイトを終えるとそこに来る。

 

「どうも~」

「ああ、いらっしゃい」

 

 茶屋に入って椅子に座る涙子と鈴仙、お互い仕事が終わった後の休憩時間と言ったところだろう。お互いがとりあえず最近メニューに追加された“ホットケーキ”を頼むこととする。最初は『パンケーキ人気にホットケーキが幻想入りした!?』と騒いでいたがそんなことも無いようでただ料理本を見つけただけという話であった。

 お茶を飲みながら話をする涙子と鈴仙の二人、そこに新たな人影があらわれる。

 

「よう佐天、あと鈴仙、だったか?」

「妹紅、珍しいね茶屋に来るなんてさ」

「あたしだって甘い物は大好きさ」

 

 そう言うと妹紅さんは私の隣に座った。

 

「あの、最近姫様は迷惑かけてませんか?」

「あぁ最近はまったく仕掛けてこないし……ていうかチルノがこの前遊びに行ったら引きこもってゲームやってたらしいじゃんか」

「へぇ、こっちにもあるんだ」

 

 古いものばかりあるイメージの幻想郷にゲームがあるとは思わなかったが、良く考えれば幻想入りしそうなゲームだって山ほどあるだろうしおかしくは無いのだろう。だがそれにしても電気はどこから?

 謎は深まるばかりであり涙子はとりあえず考えるのをやめた。正直紅魔館も不思議な部分は大概魔法だったりする。

 

「そういや近くに面白いもんが落ちてきたんだよ」

「幻想入り?」

「まぁそんなもんだ、お茶が終わったら見に行こうぜ」

 

 楽しそうに言う妹紅に、涙子は少しばかり楽しみになりながら注文したものを待つのだった。

 

 

 

 しばらくしてから、涙子と妹紅は鈴仙と別れて人里を出てから少し離れた場所へと向かう。涙子はバイク(フェンリル)を押しながらその場所へとつくと、バイクを止めて驚いた。明らかな人工物が幻想入りするというのは珍しくもないのだが、やけにそれは近未来的なものだった。まるで学園都市にあるんじゃないかというコンクリートの塊。

 

「なに、これ……」

「な、すごいだろ?」

 

 確かに凄いという言葉に同意せざるをえない。目の前の巨大なコンクリートの塊はただのコンクリートの塊というだけでなく窓も原型をなんとかとどめていて、それが建造物の一部だということはまるわかりだ。ならばそれはどこから来たのか? 幻想入りするものは大概あまりにも形をとどめていないゴミか、綺麗に忘れ去られたもののどちらかが多いがこんな破壊されたものが幻想入りというのは、涙子にとってはじめて見るものだ。

 

「妹紅、こういうのって良く幻想入りする?」

「いやぁ、ここまで大きいものも初めてじゃないか? あたしが見る限り」

 

 破壊されたなにか建造物の一部が幻想入りなんてことがあるのだろうか?

 そんな巨大な粗大ゴミがあれば間違いなく“忘れられる”前に廃棄されて他の使い道をされたりするはずだ。なら、これは破壊されてそのまま幻想入り? 

 間違えての幻想入りというのも中にはあるらしいが、これはあまりにも不自然な気がした。

 

「ちょっと調べてみるか!」

「お、良いかもな」

「妹紅と佐天じゃん、なにしてんの!」

 

 その建造物の残骸を調べようとした矢先、元気で聞きなれた声が聞こえる。二人してそちらを見ればそこには氷の妖精ことチルノが居た。やかましく馬鹿()だが、確かに頼りになるし、友情には熱く義を尽くす。そこをみれば頼りになるのだがあいにく弱い。

 まぁ何とかとハサミは使い様、とも言うしそういうことだろう。

 

「ああ、つい最近幻想入りしたってやつね。調べるなら手伝うわよ……紫にも頼まれたしね」

 

 そう言って微笑するとチルノがメモを取り出す。

 

「さて調べるわよ!」

「おう」

「うん、気を付けてね!」

 

 三人が一緒に巨大な残骸の中へと入っていく。崩れた建造物と言っても原型はまだ残っているようで、まだ中に入ることもできるだろう。それが崩れても死ぬような面子でもないだろうからあまり怖がらずに入っているのだろう。涙子だってあぶなくなったら妹紅に任せるなんていう考えでもいる。

 中に入って妹紅がすぐに炎で明かりを灯すと、周囲を確認。崩れていると言っても結構内装はわかるもので事務仕事を主にやっていたのだと簡単にわかり、壊れたパソコンなどが転がっている。

 

「これは、まさしくと言った感じだ」

「いやはや、目新しいもんばっかで楽しいな」

 

 妹紅は周囲を確認しながら楽しそうにモニターなどを軽く弄る。もちろん点かないが……。

 

「ん、やっぱりこの数の文字があると面倒ね」

 

 紙の枚数じゃなく、文字の数で言うあたりはチルノらしいだろう。紅魔館の図書館で本を探していた時と同じように、チルノはメモ用紙を一枚取り出してそれを見ながら資料を流し読む。

 一方の涙子はパソコンなどを調べながら、点くものが無いか見回るがどうにもどれも壊れているような気がするが……それよりも前に誰かがパソコンを持って帰った形跡がある。まぁ一番に自分たちが来たわけではないのだからおかしくは無いのだろう。

 

「ん~点かないかぁ」

 

 何度かパソコン本体を叩いてみるがどうにも点くわけも無い。そもそも電気が通っているわけでもないから当然なのかもしれないが、ならば携帯端末はどうかと周囲を探してみるがやはり無い。軽い物だから誰かが持ち去ったのだろうと、ため息をつく。

 

「チィルノちゃぁん!」

 

 転がり入ってきたのは無論大妖精であり、語るまでも無く相変わらずの過保護というか愛により……。

 

「こんな暗がりにチルノちゃんを連れ込んでなんのつもりですかァ!?」

「こわっ!」

「相変わらずだなこのチルコンは」

射命丸文(ロリコン)と一緒にしないでください!」

 

 あまり変わらないと言いたい涙子と妹紅だったがそこは大人の対応でスルーすることにしておいた。

 とりあえずこの二人は置いて行くことにして涙子と妹紅の二人は残骸から抜け出す。大妖精は危険と言えば危険だがチルノの貞操の危機を感じるほどでもないし、まだ大丈夫だろうという判断の元である。日も落ちてきたこともあり妹紅と別れることにした涙子は、そのままフェンリルで紅魔館へと帰るのだった。

 さすがに魔力を動力源とする魔力駆動と呼ばれるタイプに改造されていることもあり、燃費の良さは尋常ではなく給油的なこともそうそう必要ではない故に便利さと環境への良さは現実世界を超えるだろう。

 

 紅魔館の門に立っている美鈴、ではなく妖精メイドに軽く挨拶。その後フェンリルを玄関近くに停めてカバーをかけると、涙子は玄関へと入ってただいまを言う。

 

「おかえり涙子!」

 

 まず最初に突っ込んでくるのはフランドールであり、悪魔の妹のタックルを何十回と食らっている涙子は受け止めると同時にその衝撃を回転にして発散させるという技を覚えてそれを実行する。抱き着いてきたフランを抱きとめてくるくる回り衝撃を消すと、フランを下ろして軽く頭をなでる。

 日課ではないがいつもと同じようなものだ。そしていつも通りならばここで咲夜が来るのだが……。

 

「涙子さん、お帰りなさい」

「あれ、咲夜さんは?」

 

 やってきたのは小悪魔で少し驚いてしまった。

 

「今はレミリア様と美鈴さんとパチュリー様で部屋でお茶をしていますよ」

「珍しいですね、四人でなんて」

「まぁいつも堅苦しいのも、ね?」

 

 なんとなく理解できて、涙子は頷く。たまにはそういう日があっても良いだろう、とりあえず涙子は部屋へと戻り着替えることとした。もちろん小悪魔とフランは部屋の外であり、涙子はメイド服を着るとすぐに部屋を出ていつも通りだ。

 どうせ四人で楽しくお茶会をしているのだからそっとしておこうと、思い三人は晩御飯を作ることとした。

 

「よし、フランと小悪魔さんはそっちをお願い!」

「うん! 頑張ろうね小悪魔!」

「妹様、お怪我には気を付けてくださいね?」

 

 咲夜ほど高級感あふれるものは作れないだろうけれども、紅魔館のメンバーがそこまで気にするとも思えない涙子は無難なもので行くことにした。庶民的だろうけれど、あの四人がフランと小悪魔が力を合わせて作ったものを『エレガントじゃない』とか言うわけがないし、それに案外これを気に気に入るかもしれない。ともかく涙子はつい先日“香霖堂”で買ってきた本を取り出す。

 涙子は今日初めて“調合”に手を出すのだった。

 

 

 

 晩御飯ができたのはそれから数時間後、食堂で珍しく咲夜は座って晩御飯を待っていた。小悪魔からの『晩御飯は私たちが作りました!』という一言でレミリア、咲夜、美鈴、パチュリーの四人は現在食事を待っているのだ。

 涙子に移植したレミリアの片目も美鈴の片腕もすっかり元通りとなり、そこにはいつもの紅魔館が広がっている。ただ違うのはやはり今日の晩御飯を作ったのが涙子とフランと小悪魔の三人ということだろう。

 

「お待たせしましたー!」

 

 そう言って食堂へと入ってきた涙子とフランと小悪魔が四人の前に皿を一つ置き、さらにサラダの入ったボールを置く。やはり咲夜ほど本格的ではないにしろ、庶民的で親しみやすい料理でもある。

 

「カレーと温玉のシーザーサラダです!」

 

 比較的楽に作れる料理であり、フランと小悪魔に食材を切ってもらい涙子がスパイスを調合してルーを作った。時間はかかったがフランと小悪魔が下準備を済ますころには調合も終わってテンポよく調理完了、ちなみにフランと小悪魔が切った食材は見てわかるがそれもまた味が出るというものだろう。

 以外としっかりしたできにレミリアは感心した顔をする。

 

「自分で調合するなんてやるじゃない」

「へへ、結構大変でしたが」

「本当ですね、涙子さん頑張ってましたよ」

「私も頑張ったよ!」

 

 まぁなにはともあれ初めてのフランが手伝った料理ということで、味にも問題はなく好評であった。もちろんそれは妖精メイドたちからも同じく好評で、フランが『また料理したい』と言ったりもして微笑ましい家族のやりとりともなったという話だ。

 その後、涙子はレミリアと軽くお茶をすることになった。

 

「ありがとう、涙子」

「え、なんですか?」

 

 突然のレミリアからの礼に少し驚く涙子。

 

「フランのことよ、やっぱり貴女が居た方があの子も楽しそうよ」

「それでもレミリア様といるのがつまらないわけではないですから、落ち込まないでください」

「べべべ、別に落ち込んでなんて!」

 

 明らかに動揺しているレミリアを見て微笑する涙子。もう仕事も終わっているので私服でいる涙子は紅茶を飲みながら確かにレミリアとフランはすっかり仲良し姉妹になっているなとは思う。なんだかんだ言って色々とフランに教える立場だってレミリアが多い。自分はその補足を聞かれる程度だ。

 とりあえず、レミリアが心配するような妹が誰かに取られるなんてことあるはずもないので安心してもらいたいと思う涙子だった。

 

 レミリアとのお茶会を終えて、『紅茶を美鈴に届けてあげて』というお願いを聞いて涙子が門に向って廊下を歩いていると、動かない大図書館ことパチュリーと会う。

 

「こんな時間に歩いてるなんて珍しいですね」

「まぁこの時間は大概篭ってるからね」

 

 いつも篭ってるじゃないですか。という言葉を飲み込む涙子。

 

「そう言えば、霊装の件だけど」

「あぁ、どうですか?」

「一応“作る”ことも視野に入れるなら良いのができるわよ、こっちには悪魔もいるんだし」

「ん、それってどういう」

「まぁ詳しくは小悪魔に聞いて、大図書館にいるから」

 

 涙子の疑問もどこへやら、とりあえずパチュリーは大図書館に戻るようで残された涙子はなにがなんだかと言う風に門へと向かうことにした。霊装、魔術を使用する場合にその動作が必要で無くなるというショートカットアイテム的な物なのだが、涙子にとっての一番の利点としては霊装の中には“能力開発をしていても問題なく使える”物もあるということである。それさえあれば高能力者や魔術師相手に遅れをとることもないだろう。

 霊装に関してはもっと細かい話をパチュリーにされたのだが、涙子が覚えているのはそのぐらいだ。それ以外は涙子にとって不要な知識だった。

 

 涙子が門へと辿りつくと、そこには美鈴の他に咲夜もいた。

 

「美鈴さん、レミリア様からお茶です」

「ああ、ありがとう」

 

 美鈴は涙子がそのまま持ってきたティーカップを受け取る。なんともシュールな光景だがいつものレミリアの気まぐれだろうと、そのまま紅茶で体を温めた。

 

「咲夜さんはどうして?」

「美鈴が寝ないかどうか見張ってたのよ」

「昔はしょっちゅう一緒に居たんですけどね、最近はめっきり―――って痛い!」

 

 美鈴の脇腹に手刀を打ち込む咲夜は、顔が赤い。涙子でもわかるぐらいの照れ隠しであり、先ほどの理由もそれを見れば嘘だったとわかる。なんとなく一緒に居たかったのかもしれないな、なんて涙子は察してさっさとここから離れようかと思っているが美鈴が脇腹への手刀が変なところに入ったのか少し蹲っている。

 少しやりすぎたかな? と思っているであろう咲夜を見て言う。

 

「咲夜さんって、反抗期?」

「涙子、変なこと言わないで」

 

 だが似たようなものだろうと思った。どうしてもツンケンしてしまうのは咲夜の性格故なのかそれとも反抗期か、だが瀟洒なメイドにも完璧じゃない部分はあるようでそれが美鈴なのだろう。単純に気恥ずかしいと考えて良いのか、まぁこの二人にも色々あるのだろうと頷く。

 

「ともかく、ただ話してただけよなにもないわ」

 

 なんだかそう言われると妙に怪しく思えてしまうのだがなにも無いと本人が言うのだから信じようと、信じることにして紅茶を飲み終えた美鈴のティーカップを受け取ろうとしたのだが……。

 

「私が片すわ」

 

 そう言って咲夜が受け取ると、瞬時に消えた。なにか詮索されるのが嫌だったのだろうかと思う涙子だったが今はそれは良いと思いながらとりあえず美鈴と少し話をすることにした。なんてことない涙子の生徒たちの話、腕が上がったとかいう話、やっぱり両手の方が便利だという話。結局、両手が戻った美鈴には勝てないという話。

 

「咲夜さん、いや咲夜ちゃんも大きくなったなぁって思うんだよね。つい最近まで私の後付いて回ってたのに」

 

 そう言う美鈴はなんだか懐かしむというより少しばかり切なそうで……。

 

「そうですかぁ」

「涙子もそうなるのかなぁ?」

「本人に聞かないでくださいよ……でも、私ってふつうに自立してる方だとおもいますけど」

 

 美鈴は『それもそうか』と笑いながら頷く。咲夜ほど幼い頃からいるわけでもないので小さい頃の涙子を誰も知らない、けれど昔の涙子と言えど誰かに付いて歩くほどでもなかったのはやはり下に弟が居たからだろう。考えてみればしばらく家族とも会っていないなとも思った。

 

「昔の咲夜さんも気になるなぁ」

「そうだねぇ、パチュリー様に作ってもらおうか、幼児化する薬とか!」

「うわっ、怪しいですねそれ」

 

 二人して笑いあう。いつも通りのくだらない話、それを終えると涙子は門前から去る。

 

「それじゃまた明日」

「うん、おやすみ」

 

 紅魔館内に入って小悪魔の待つ大図書館へと足を進める涙子だが、突如目の前がぼやけて膝をつく。それでも目の前のぼやけが晴れることはなく、しかもなんとなくだが目の前の光景が歪んでいるような気もする。なぜこうなるのか、なぜこんなことになっているのかなんてわかるわけもない。

 

「これ、まずいっ……!」

 

 涙子はそのまま前のめりに倒れる。

 

「なっ、にが……ぁっ」

 

 涙子の意識が徐々に刈り取られ―――間もなく涙子の意識は飛んだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 暗闇の中、私は意識を取り戻したと自分が感じた瞬間に起き上り、頭を整理。私は佐天涙子、紅魔館のメイドで学園都市の柵川中学一年生……。

 よし、なにも不備は無い。私が寝てるのはベッドの上だからとりあえず運んでくれた咲夜さんか妖精メイドか、誰にしろお礼を言うことにしよう。

 

「……あれ?」

 

 ふと気づけば自分が居る場所が紅魔館で無いことに気づく。

 

「び、病院?」

 

 窓の外から差し込む日光に私は眼を細める。眩しい……。

 

「そっか、帰ってきたんだ」

 

 自分の服装を見れば紅魔館に居た時と同じく、シャツとベストとハーフパンツ。それからニーソとブーツなんていうオシャレな恰好、見繕ってくれたのは咲夜さんだけど。

 そう言えば服装はそのままなんだなぁとか思いながら、私はベッドから降りてカーテンを開く。幻想郷では見れないビルやら“軌道エレベーター”やらが見えるけど、まぁどうでも良いかとりあえず……。

 

「帰ってきたんだ、私」

 

 学園都市へと帰ってきた私を待ってるのはきっと楽しいことばかりじゃないけど……私をもっと大きくしてくれる。それは自信をもって思えることだ。

 

 

 

 

 

 




あとがき↓  ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。















幻想郷編終了! みなさんお待ちかね!(?)である学園都市編!
さてさて、最初の方は少しオリジナルの学園都市での話が入ります。久しぶりに初春やら黒子やら御坂やら上条さんやらインデックスやらetc.
色々な人との絡みが書ける! ということで頑張るでござりまするよ!

では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!

PS
感想などもお待ちしておりますので是非!

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