新機動戦記ガンダムSEED DESTINY  -白き翼‐   作:マッハパソチ

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異邦の地にて、戦士はまたしても変わらぬ光景を目の当たりにする。

そのとき、彼が選択する道とは……。


第三話   プラント防衛

『コンディションイエロー発令、コンディションイエロー発令、

 艦内警備ステータスB1、以後、部外者の乗艦を全面的に禁止します、

 全保安要員は―――』

 

ミネルバ艦内に、管制官メイリン・ホークの声が響き渡る。

地球連合軍がプラントへの攻撃を予告してきたのだ。

 

これは、事実上の宣戦布告であった。

 

現在、ミネルバが駐留しているオーブは中立国家であったが、

昨日、大西洋連邦への同盟に参加を表明し、

実質的な地球連合の一つとなっていた、

それは、ミネルバ――ザフトが敵国に入国しているという危険な状況を意味し、

オーブが、すぐにミネルバをどうこうすることはないが、

決して、油断の出来る状況ではない。

 

 

「開戦!?そんな……」

 

新たな戦争開始の合図を聞き、

シン・アスカもまた急な展開に戸惑いを隠せないでいた。

 

 

 

 

地球連合軍によるプラントへの攻撃が開始される数十分前

 

 

デュランダルとの会話の後、ゼクスは自身の機体が運び込まれているドッグへと来ていた。

 

「あんたぁ、すげぇなぁ、こんな訳の分からん機体(バケモノ)を修理できるなんてよ」

 

ドッグに入ってすぐに、機体の損傷を確認したゼクスは、

整備工に頼み、道具とパーツを分けてもらい、自ら修復作業を行っていた。

 

「いや、完全に修復をするのは不可能だ」

 

「だろうなぁ、こんな、カッテェ金属なんか、ここには無ぇからなぁ」

 

ゼクスの指揮の元、手の足りない部分を一緒に直していた整備工は、

自分の知らない機械を弄れて、心底嬉しそうに話す。

 

パーツを貰い、いくらか機械部分の修理できたとしても、

装甲の素材がない、そう、この世界には……、

 

(『ガンダニュウム合金』がない…、)

 

元々、存在自体がないのか、未だ見つかっていないのかは不明だが、

彼の機体――ガンダムエピオンを、元通りにすることができない、

 

「だが、動かないよりはマシだ」

 

「ハハッ、ちげぇねぇ……っと、こっちの言われたとこは終わったぜ」

 

「こっちも…、今終わった。

 一度、起動するか確認したい、少し離れていてくれ」

 

「ああ、分かった」

 

自らの作業を終えたゼクスは整備工に退避の指示を出し、

コックピットに乗り込む。

整備工が安全な位置に移動したのを確認すると、

 

起動を開始する。

 

「ふぅーー……はぁーーー………、―――っ!」

 

目をつぶり、一度だけ大きく深呼吸をする。

息を吐き切ったところで、鋭く目を見開く。

 

操作盤にゆっくりと手を載せる。

 

軽快に起動キーを叩く。

 

そうして、

 

 

エピオンが――、

 

 

 

 

  『SYSTEM-EPYON』

 

 

 

 

       その目を覚ます。

   

 

 

 

装甲がなくても、

 

左腕がなくても、

 

あれだけの酷使しても、

 

(まだ、動く!)

 

 

自分の期待に応えてくれる機体に戦士として喜びを隠せない。

そして戦士は、この機体を託した、

 

    

「感謝するぞ……、

 

 

 

 

   …―――トレーズ」

 

   今は亡き友へ、感謝の意を述べるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

数分間、起動したエピオンの中でシステムの動作確認を行い、

ゼクスはコックピットから出る。

 

(……システムは、あの『システム』も含めて全て正常、)

 

「……いっ!、」

 

(だがやはり、ちゃんとしたパーツが欲しいところだ、)

 

「…お…っ!、」

 

(左腕も――「おいっ!聞いてんのか!?」――っ!?)

 

機体を眺め、しばらく自分の考えに没頭していると、

いつの間にか、先ほどの整備工が至近から自分を呼んでいる。

 

「やぁっと気づいたか、さっきから何度も呼んでたんだぜ」

 

「すまない、考えごとをしていた、……それで?」

 

「それが、さっき上から連絡が入ってな、ちょっと急な仕事が入っちまってよぉ、

 別んとこに行かなきゃならなくなっちまった。」

 

「急な仕事?」

 

「ああ、なんでもナチュラル共がプラントに攻め込んで来るってんでよぉ…、」

 

「っ!」

 

「そんで俺は――「待て」――あぁ?」

 

「それは、ここが狙われているということか?」

 

「だから、そう言ってんじゃねぇか」

 

ゼクスの頭によぎるのは、

 

OZによって虐げられるコロニーの光景と、

 

『強者など何処にもいない!人類全てが弱者なんだ!、俺もお前も弱者なんだ!!』

 

最後の戦いで告げられた、好敵手である少年の言葉。

 

(だがヒイロよ……、例え私が弱者だとしても、どこの世界でも変わらない縮図に…私は…、

 私は、お前のように割り切ることはできない!)

 

 

「モビルスーツを宙へ出すにはどうしたらいい?」

 

「へ?、すぐ隣に、修理したモビルスーツの試運転をするためのカタパルトがあるがよぉ、

 それを聞いて、あんたぁ、どうする気だい?」

 

「悪いがすぐに開けてもらえないか?

            ―――私も出る」

 

 

 

   戦士は再び戦場へと赴く。

 

 

 

 

プラント防衛対策本部

 

 

「最終防衛ラインの配置はどうなっている!?」

「全市、港の封鎖完了しました」

「警報の発令は?」

 

デュランダルを含むプラント政府並びにザフトの指揮官たちは対応に追われていた。

 

プラントのすぐ傍では、既に連合、ザフトの両軍はモビルスーツの展開を終え、交戦が開始されている。

 

「議長、万一に備えて市民たちに脱出の用意を」

 

「逃げてどうする?、我々、コーディネイターには他に行くところなんてないんだぞ」

 

「……っ」

 

「何としてもプラントを守り切るんだっ!」

 

ユニウスセブンの落下テロで使われたモビルスーツがザフトのものであるということは、世界中に知れ渡った。

家、家族、恋人、友人、自らの大切なものを奪われた憎しみの矛先はコ―ディネイターへ向けられた。

 

地球ではコ―ディネイターが無差別にテロに会うなど、

反コ―ディネイター、反プラントの思想が高まる。

 

また、地球連合はプラント側からの

「テロリストは事件の際に全員死亡した」という「事実」を報告されるが棄却、、

逆に「テロリストの身柄引き渡し」や「武装解除」などといった、

プラント政府としては、到底受け入れられない、無理な要求を突き付け、

受け入れられない場合はプラントに対し武力をもって排除するという

事実上の宣戦布告を行った。

 

その裏には反コーディネイターを掲げるブルーコスモスの暗躍があったのだが……。

 

 

地球に今、コ―ディネイターの安寧はない。

もし、プラントまで失われれば、コ―ディネイターは世界から完全に孤立する。

 

そんな想いもあり、デュランダルはこの窮地に全力で対処に当たる。

 

彼がこれからの戦局について考察を深めていると、

 

 

―――「ナスカ級より入電!」

 

突如、報告が入る。

 

「これは……?」

 

「どうした?」

 

「戦闘宙域にて未確認のモビルスーツを確認、

 次々と地球連合側のモビルスーツを撃墜しているとのことです!」

 

「何っ!?」

 

(未確認機だと……まさか…、彼が……?、)

 

 

 

 

「結局はまたこうなるのかよ!」

 

イザ―ク・ジュールはスラッシュザクのビームアックスで、

地球軍のモビルスーツ、ダガーLを切り裂きながら叫ぶ。

 

『まあまあ、そう、お怒りなさんなって』

 

「うるさいっ!!」

 

『おー、恐い、恐い』

 

旧友、ディアッカ・エルスマンの通信を一蹴し、

さらに2機、3機と敵機を撃墜していく。

 

『それに、2年前から何となくこうなることは、

 ―――とっ、…分かってたことだろ?』

 

ガナーザクの長距離砲ビーム砲オルトロスを放ちながら、

ディアッカの通信は続いた。

 

前大戦を生き残った彼らはまさに歴戦といった戦いぶりを見せる。

 

「だが、これでは…!」

 

(死んでいった奴らに顔向け出来んではないか!!)

 

 

『お前さんの言いたいこともわかるけどよ、

 ―――って!!何だよあれ!?』

 

「…?、ディアッカ?、

 ―――っ!!あれは!?」

 

一機のモビルスーツがいた、

その周りには切り裂かれた敵機が7機、

さらに、その機体が通って来たとされる宙域には

数えきれないほどのダガーの残骸が漂っていた。

 

そのモビルスーツは次の標的へ向けて飛び去っていく。

 

『あれ全部、あいつがやったのかよ!?』

 

(なんだ、あの機体は?)

 

旧友の驚きの声を耳に入れながら、

イザークは思考を走らせる。

 

(新型か?…いや、それにしては……)

 

そう、今のモビルスーツには、片腕が無く、装甲までも剥がれている、

新型どころか、すでに……、

 

(廃棄寸前といった風ではないか!)

 

『あいつビームサーベルしか持ってないのか!?』

 

戦うことも忘れその戦いぶりに見いる旧友。

 

「馬鹿もの!、ぼぉっとするなっ!」

 

『っと、いけねっ』

 

二人はまだ残っている敵機に向けてスラスターを吹かす。

 

イザークは先ほどのモビルスーツもう一度振り返る。

すると、その機体が戦場とは逆の方向へ飛び去っていくのが見えた。

 

(あいつ、…何処へ?)

 

 

 

―――その数分後、プラントから入電が入る。

 

「核攻撃隊!?極軌道からだと!?」

(この方角はっ!?さっき奴が飛んで行った――!?)

 

 

 

 

『かっこいいねぇ、俺はあんたの生き様に心底惚れちまったよ、

 なあに、心配はいらねぇ責任は全部、俺が取ってやる。

 おっとぉ、ただし!戻ってきたら、またその機体弄らせてくれよな!』

 

とは、ゼクスが自らも戦いに行く旨を伝えると、整備工から返ってきた言葉である。

 

「まったく、御人好しもいいところだな」

 

ゼクスは笑みを浮かべながら呟くが、

 

 

「―――っと、あそこか」

 

交戦中の宙域を見つけると、すぐに気を引き締める。

 

「敵勢力は、…あちらか、

 異世界のモビルスーツか、果たしてどのようなものか試させて貰う!」

 

プラント―――砂時計型のコロニー群へ侵攻する勢力を攻撃目標に設定する。

 

「いくぞ、エピオンっ!」

 

ビームソードを引き抜き、ジェネレターからケーブルを通し刃を形成し構えると、

最大戦速で敵との距離を詰める。

 

先ずは背後から胴体部分をを水平に切り裂き、一機撃墜。

 

味方の撃墜に気づいた敵機がこちらにビームライフルを構えるが、

 

「遅いっ!!」

 

手首ごとライフルを切り飛ばし、返す刀で逆袈裟に切り捨て、二機目。

 

そこに、さらに別敵機が一発、二発と砲撃を浴びせてくるが掻い潜り、

敵機の眼前まで間合いを詰め、頭頂部から真っ向に切り下し、三機目。

 

次にビームサーベルを構えた二機が左右から迫るが下方に機体を逃がしながら、

先ず右方の敵機の両膝関節を切り落とし体勢を崩す、振り向きざまに左方の敵機を袈裟に切り上げ、撃墜。

そのまま仕留めていない一機へと向き直り、腹部に刃を突き立てコックピットを焼き、行動不能にする。

 

その後も止まる事無く敵機を破壊し続ける。

次々と次々と次々と次々と次々と次々と次々と、目につく敵機を撃墜していく。

 

一騎当千、まさにその体現。

 

 

ゼクスが戦場に介入してから、その戦局は一気に決して行く。

 

しかし、

 

「妙だな…?」

 

前方にいた敵機を切り捨てたところで、ゼクスに疑問が芽生える。

 

(敵は、コロニーの破壊に来たのではないのか?、

 確かに、数には目を見張るものがあるが、それだけだ。

 彼らは何か勝算があって、ここに来たのではないのか?

 このままでは、いたずらに兵力を失うだけ、

 それは相手も理解しているはずだが……)

 

地球連合軍の攻撃は確かに激しいものであったが、

とてもザフトの防衛網を敗れるものだはなく、

 

(それに、これだけ味方が減っているのに、

 一機たりとも、撤退の様相を見せない。これではまるで……)

 

『システム』に自らの意思を反映させ戦況を処理、演算し

この戦場において敵勢力の立てる戦術を推測、

様々な選択肢の中から、

最も作戦効率の良いものがゼクスの脳に伝わり

―――『未来を予測』させる。

 

「……なるほど…」

 

ゼクスは戦闘エリアを離脱し移動する、エピオンが導きだした先へと……。

 

 

 

 

「極軌道の哨戒機より入電!敵別動隊に核ミサイルを確認!」

 

「何っ!?」

 

その報告はデュランダルのもとにも伝達された。

 

「ええいっ、すぐに極軌道側に『スタンピーダー』を用意させろっ!」

 

「すでに準備に取り掛かっていますが、……このままでは……」

 

室内に沈黙が支配する。

この場にいる全員の脳裏に――、

 

「血の、バレンタイン……」

 

誰かが呟く。

 

――3年前、コ―ディネイターを襲った悲劇が甦る。

 

 

 

 

 

「今度こそ、憎きコ―ディネイター共を根絶やしにしてくれるっ!

 蒼き清浄なる、世界のためにっ!」 

 

核攻撃隊の一人が連合の最新鋭モビルスーツ、

ウィンダムのコックピットで叫ぶ。

 

プラント(攻撃目標)に直進し、

全てを焼きつくす業火を今まさに放とうとしたとき、

 

「!?、モビルスーツ?」

 

前方にそれを見つける。

 

ビームサーベルをまるで西洋の騎士のように自らの胸の前に掲げている。

 

「へっ、あんなロートル機、一機、こっちがどれだけの数だと思っている!?」

 

半壊した、それもたったの一機、

そんなものに用はないと、さらに侵攻を継続していく兵士、

 

だが、

 

その見縊りは、すぐに改められることになる、

 

――その、命をもって……。

 

 

 

 

 

 

「どこの世界でも変わらないな、

 やはり戦いというものは醜いものだ……、

 ――っ!、さあ、決着をつけるぞエピオン!私に勝利を見せてくれ!」

 

ゼクスは誰かに語りかけるようにそう呟くと、

鋭く標的を見据える。

 

ビームソードを頭上に構え、

エネルギー供給を最大出力にまで引き上げる。

 

そうして、自機の数十倍もの大きさの巨大な刃を形成する。

 

それを未だ進軍し続ける敵勢力に…、

 

――振り下ろす。

 

 

次の瞬間、

 

轟音が…、

 

辺り一面に……、

 

――――――駆け廻る。

 

 

あるものは、大質量の力の前に為す術もなく、消滅し、

またあるものは、今まさに敵を焼こうとしていた業火に

その身を焦がし、燃え尽きていく。

炎は瞬く間に燃え拡がり、甚大な被害をもたらす。

 

 

「身に余る兵器というのは…、

 ときに己に牙をむく、覚えておくことだな」

 

核ミサイルだろうと、モビルスーツであろうと、兵器である以上

傷つけるのは敵だけではない。

 

ゼクスは、かつて自分を翻弄し、破壊と殺戮に走らせた、

もう一つの「『システム』をもつ機体」を頭に思い浮かべる。

 

「エピオン、私たちの役目は終わりだ、戻るぞ…、

 あとは『彼ら』にまかせよう……」

 

エピオンの圧倒的な攻撃と

核ミサイルの誘爆により大半の戦力を削ぐ事は出来たが、

後方から未だ侵攻し続ける地球連合の核攻撃部隊、

いくら100発の核を討ち落としても、1発を防げなければ意味はない。

 

だが、ゼクスは残りの敵機には目もくれず、

エピオンをバードモードに変形させると、宙域を離脱していくのだった。

 

 

 

 

エピオンが離脱した後方、プラントの門前に一隻のナスカ級が構えていた。

その艦には「ニュートロンスタンピーダー」と呼ばれる対核兵器用特殊兵装が

取り付けられている。

 

「どこの誰かは知らんが……おかげで、たっぷり時間をもらった、

 確実に敵勢力の核攻撃を阻止しろ!一発足りともプラントへ通すな!

 

        

   ……っ、ニュートロンスタンピーダー照射!!!!」

 

ナスカ級の艦長の号令のとともに放たれる光。

 

エピオンの放った轟音の倍以上の爆音が響き渡る。

 

核を装備ならびに保管している、連合軍のモビルスーツ及び母艦は、

核ミサイルの誘爆によって一つ残らず消滅したのだった。

 

 

 

 

映像でプラント防衛の一部始終を見ていた、

 

「おお!やった」

「良かった、スタンピーダーが間に合って」

 

防衛本部では喜びと安堵の声が飛び交っている、

皆、かつての悲劇を繰り返さなかったこと、

何より、窮地を脱し生き残ったことに喜びを噛み締める。

 

それ故に、戦場にいた未確認機のことを忘れ、

プラント防衛の真の功労者に誰も気を止めるものはいない……、

 

 

彼――ギルバート・デュランダル以外は、

 

(……まさか、これほどのものとは…)

 

デュランダルは先の戦いの映像を、

正確にいえば、エピオンが映っている部分をを何度も見返していた。

 

 

「これが、異世界のモビルスーツの力か……」

 

 

 

 

 

地球連合軍によるプラントへの核攻撃は、

 

表向きにはプラントの開発した新兵器によって阻止されたと地球連合へと伝わる。

 

この報告が牽制となり今後プラントへの核攻撃は一切なくなる。

 

しかし、この戦いの後、

 

ザフト、連合、両軍の間で「戦場に『悪魔』が出た」というの噂が飛び交うのだった。

 

 

                        

 

                             つづく

 




第三話です。

戦闘の描写を書くのは難しいです。構成や考えはあれど文章が出てこない……。


P.S.
この話を書くためにゼクスの設定を見ていたのですが、
彼ってまだ19歳なんですね、
キラやアスランと一つしか違わないとは…。

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