霧の国に響く声   作:蜜柑好き

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誤算

はあ、やはりハンター試験を脱落したのは少々問題でしたか……

リッポーが最小限の対応はしてくれたみたいですが、それでもハンター協会の私への感情はいいものではないでしょうしね。

さしあたって落ちたときの事なんてまったく考えてなかったですし。

これから何をしましょうか。

 

さしあたって現状問題になるのはいくつかありますけど、特に重要なものは3つくらいでしょうか。

まず第一に先立つものがありません。

やはり何をするに当たってもお金が少々心もとないというのは話になりません。

次にコネの問題でしょうね。

今回の試験でどうもハンター協会の私への感情はかなり悪化してしまったようです。

これではリッポーのコネを使うのすら問題になるかもしれません。

そもそも私は知り合いが少ないですし。

頼る相手として名前が挙がりそうなのは姉とあのギュドンドンド族の男そして、その知り合いだというボノレノフという男ですか。

ですが、姉に頼るわけにはいきませんし。

と言うより姉に私の生存を知らせてしまっては今までのことがすべて無意味になりかねません。

ギュドンドンド族の男にもまだまだ顔を合わせるだけの実力を得たとは言えないです。

ボノレノフという男にいたっては名前以外の何も知りません。

よってコネも絶望的。

最後に拠点。

最悪しばらくは野宿でも構いませんが、いつまでもそうしているわけにはいきません。

早いうちに活動拠点を決めなければ仕事をする上でも差しさわりが出るでしょう。

他にも44番等に会うことで感じた実力不足なんかもありますけど。

これは急ぐに越したことは無いですけど。

おいおいでかまわないでしょう。

下手な手段で強さを追い求めても楽な方法と言うものは必ずしっぺ返しがあるものです。

いびつな強さを手に入れるくらいなら多少遠回りに見えても、地道な基礎練習の繰り返しが長期的に見れば最も近道になるものです。

 

ははっ、まさに八方塞ですね。

お金が無いから仕事をしなければならない。

ですが、コネの無い私のような少女が仕事など出来る筈が無い。

賞金首を捜す?

その探す為の費用はどこから捻出すれば。

仕事の斡旋場も同じ理由で見つけられないでしょう。

ハンターライセンスでもあれば別だったでしょうけど。

かと言って生活する上での拠点も無い。

まさに無い無い尽くし。

何か打開する手は無いでしょうかね……

リッポーに餞別に渡された携帯電話を使って情報を調べてみるものの。

今の私の条件を全て打開できそうなのが天空闘技場くらいだと言うのだから終わっている。

何が悲しくてあんな場所に行かなければならないんでしょう?

 

私はあくまでも賞金狩りです。

あんな少しお金を出せば選手の能力が調べられてしまうような場所になどなぜ行かなければならないのか。

1億2億程度のお金を入手する代わりに私の能力が全て犯罪者たちに筒抜けでした。

どんな間抜けですかそれは。

私は戦いを楽しむ趣味も持っていないですし。

犯罪者が選手として登録されてでもいない限り生涯縁が無い場所ですね。

 

正直リスクが大きすぎるのでやりたくは無かったですけど。

子供でも雇ってくれるとしたら私に念使いとしての戦力を認めてくれる所だけでしょう。

しかし、合法的な組織では私がハンター協会に好かれて無いと気がつかれたら終わりです。

必然非合法な組織となりますが、力があれば子供でも使い非合法な組織……

やれやれ、そんな条件に合うところは私と敵対するような組織しかありえないでしょうに。

いっそどこかの組織をのっとる?

何を馬鹿な。

ハンター試験で己の未熟を悟ったばかりだというのに。

もしあの44番クラスの相手が一人でもいたら私は終わりです。

いえ、別に意味のある死ならば構いませんが。

それはただの無駄死にというもの。

では金銭収入を諦めて山にでもこもって修行をする?

悪くは無い手段ですが、糸やその他防具等の維持修繕費を捻出出来ません。

万全の状態でない状況を想定しての訓練ならばそれでも構わないかもしれませんが、それをずっと続けるのは無意味でしょう。

 

さて、現状手は二つ。

将来の禍根を残す天空闘技場。

もしくは情報収集または潜入と割り切った非合法な組織への加入。

正直どちらもハイリスクローリターン。

ですが、金銭もコネも無い手をふさがれたにも等しい現状。

ああ、あなたの言ったとおりですね。

世の中は金金金……

何をするのにも先立つものは必要です。

 

仕方ありませんね。

現状選択肢と呼べるのはほぼ一つですし。

近場のマフィアにでも潜入する方法を考えますか……

流石に誰の紹介もなしでは有名所に入ることは出来ないでしょうけど。

念を使える人間がいる所なら私の価値がわかるでしょうし、逆に念を使える人間もいないような所には用がありません。

そんな所に潜入した所で後々役に立つような情報を入手することなんてできないでしょうからね。

 

そうですね、そう言えば最近落語を披露していませんでしたし。

練を披露しながら数日大道芸紛いの事でもしましょうか。

ある程度の時間続けていれば修行にもなりますし。

数日続けていれば誰かしらの目を引くこと確実。。

そうすれば勧誘にしろ何にしろ接触してくる人が出るでしょう。

 

 

 

「おあとがよろしいようで」

 

今日で三日目ですけど、以外にお金になりますね。

やはりものめずらしさからでしょうか?

まあ、お金になるとは言ってもあくまでも思っていたよりはであって、賞金首ハンターとして活動するための頭金にもなりはしませんけどね。

そんなことよりも、流石に三日も続けて。

しかも、日に三回も練を披露しながらこんなことを続ければ何人か釣れましたね。

 

まず一人、私と同じ和服姿の念使い。

この人に関しては私に念使いとしての能力を求めているのではなく、純粋に噺を聞きにきているという感じですね。

ですので今回はこの人との接点はないでしょう。

 

次いで二人目。

めがねをかけた神経質そうな男。

実力はどう考えても私以上でしょう。

誰かに頼まれたから仕方なく来ているという感じがみえみえですね。

おそらくこの男も私に声をかけてくることはないでしょう。

 

本命は3人目ですかね。

黒服スーツの男たちを従えた小柄な女性。

この人は興味津々といった感じでこちらを見ています。

恐らくどこかのマフィアの娘か何か。

どちらにせよ高い身分にある人の関係者といった所でしょう。

私としてもこういった人に気に入られて警備にでも回っているほうが気が楽というもの。

犯罪者達の情報を自然に入手するのは難しくなるでしょうけど。

こういった人にかかわればそれを超える利を得るのも難しくない。

恐らく幹部連中と顔を合わせる機会も増えることでしょう。

さて、現状で興味はもたれているみたいですけど。

これから先さらに興味を引くにはどうしましょうかね?

 

 

なんにせよこれが私が独り立ちしてからの初めての行動になるわけですし。

気合を入れていきましょう。


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