霧の国に響く声   作:蜜柑好き

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今回は番外なので本編では自分で禁止してる前書き後書き付き。その頃の舞台裏という感じの話です。

実質、延々とある男を褒めるだけの話ですが。上手く表現できた気がしません。かなり冗長になってしまいました。


番外 その男の価値、迫るリミット

トンパ

ハンターでこの名前を聞いたことの無いものは居ないだろう。

世界に存在する600を超えるハンターの殆どとの面識を持つ。

恐らくハンター協会会長の次位の認知度を誇る。

最も会長とはほぼ間逆の負の認知度だが。

 

しかし、以外と言えば意外な事にこの男のハンター協会での評価は低くない。

いや、むしろかなり高いと言っても過言ではないだろう。

過去試験受験回数こそ35回と史上1位の座を逃して二位だが。

その連続出場回数30回と言う堂々一位の記録を持つ。

その見た目に反して実はかなりの実力者であり、その気になりさえすればいつでもハンターになれると目されている。

現にたったの10歳でハンター試験初参加と言うのはかなりの偉業だ。

才能に恵まれ努力を重ねただろうその実力は肉体のピークを過ぎた今となっても衰えていない。

才能だけに胡坐をかいていた若い頃とは違い経験がそれを補っている。

 

だが、彼が評価されている理由は彼の実力などではない。

確かに優れてはいるが彼程度の才能ならはいて捨てるほど居る。

仮にハンターになったとしても戦闘者として大成することはけしてないだろう。

その程度にしか評価されていない。

 

では彼の人脈か?

殆どのハンターと面識を持つ彼の人脈は確かに侮れないものがある。

しかし、その殆どが彼を侮るものか嫌うものでありけして有効に利用できるものではない。

 

彼が評価されている理由。

それは彼の経験に他ならない。

ハンター試験会場に集まる人間と言うのはたとえ一回戦で落ちる者であっても外の世界ではみな一流と言って差し支えない才能溢れる人物である。

そんな数多の才能と間近で触れその努力が実を結ぶ瞬間も才能が潰える瞬間も見てきた。

挫折、苦悩、嫉妬、絶望……

受験者の一員として間近に見るそれは何物にも変えがたい財産であろう。

それはハンター協会の幹部にはけして味わえるものではない。

才能に溢れたハンターの中においてもさらに一握りに選ばれるような彼らはその感覚が理解できない。

だが、才能の限界を感じ道を踏み外してしまった彼だからこそ見えるものがある。

 

ある受験者は言った。

 

「あいつは人の弱点を見抜いてえぐるのが上手いと」

 

当然だ、彼ほどそれに触れてきた人間は居ない。

人生経験が違いすぎる。

彼以上にそれを上手くできる存在なんているはずがない。

もしも彼がハンターになっていたら今頃は十二支ん入りしていたのではないか?

等とささやかれるほどである。

 

殆どのハンターは彼の嫌がらせを受けてきた。

彼によって心の隙間を付かれた経験が無いもののほうが珍しい。

そして、彼によって挫折と苦悩を味わうのだ。

ハンター試験を受けに来るものはその才能におぼれこれらの経験が無いものが意外に多い。

実際に命の危険に遭遇した時その経験の有無が差を生む。

一度も経験したことの無いものは脆い。

如何に強くともふとした瞬間に命を落としてしまう。

 

ハンター達は知らず知らずの内にトンパの影響を受けているのである。

彼に感謝をするものは少ないがその功績は計り知れない。

もしも彼が居なかったら600人余りのハンター達もその数を大きく減らしていただろう。

恐らく今ほど世界にハンターの影響が大きくはなってなかったに違いない。

 

それに、恐らく彼が居なかったらハンター試験そのものの死亡率がより高いものになっていたはずだ。

自分の実力も測れずに格上の試験に意地で挑戦して命を落とすことは多い。

それに受験者の間での足の引っ張り合いも激化していたことだろう。

加減もわからない者達の足の引っ張り合いでは命を落とすことが間々ある。

しかし、彼がそれを率先して行うことで加減のわからぬ自分達がやるよりトンパに任せる者が増えた。

彼は命を狙うことは殆ど無い。

彼が狙うのはいかに心を折るかだからだ。

 

よって命を落とすものが減る。

自分の才能の限界を知る。

彼らの多くは夢を諦め自分の才能にあった道を進む。

 

長々と書いたが、トンパという男はそれほどハンター試験に無くてはならない男なのである。

その価値は実際の試験官など遥かに上回るものだ。

 

 

 

 

 

 

だが、今回その男は試験開始前に失われてしまった。

協会内部では今彼が居なくなったことにより、荒れることが確定した今回の試験への対策で追われている。

勿論その矛先は今回原因を作った少女。

およびその師匠であるリッポーへと向かっていた。

 

だが、リッポーはそれ所では無かった。

後数時間で先程以上の惨劇がほぼ確実なのである。

本来リッポーはこれから向かう『霧』に包まれた秘境詐欺師の塒での少女への対策を心の専門家であるトンパに任せていた。

だが、それが無い今霧の中に長時間あの少女をほうり込んだときの結果は予想できない。

恐らくは先程以上の暴発をする。

そうなった場合今度こそあの少女を庇うものは何も無くなる。

それだけは何としても避けたい……

 

しかし、その対策はトリックタワーに居る自分ではどうすることも出来ない。

無神論者の自分だが今は何かに祈りたい気分だった。




正直トンパの存在価値は計り知れないと思います。命の価値が軽い世界ですけど、この男がいなかったらそれが加速していたのは間違いないですし。
バリストンさんが会長になってたら重用してたんじゃないかな。

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