そして交わされる――――?
政宗くんのリベンジの、二人が結婚した後のお話。
「なあ愛姫、久々にツインテールにしてみてよ」
政宗の一言に、私は野菜を切るために持った包丁を手にしたまま、くるっと振り返る。
「なんでまた急に?」
「んー、いや、久々に見てみたいなぁ、と思って。結婚してからしばらく見てないし。……ところでその手の包丁下ろそうか。怖いんですけど……」
結婚してそろそろ1年になる。私は政宗と正式にお付き合いを始めた頃に、少し子供っぽい、という吉乃のアドバイスで、ツインテールだった髪を降ろし、今ではストレートにしているのだ。それからと言うものの、細かく髪型をいじってはいたけれど、そう言えばツインテールにはしていないかもしれない。
初めて髪型を変えた時、すごい政宗に驚かれたけど、
『綺麗になって、もっと好きになった』
って言われて、本当に嬉しくて舞い上がってしま――――
「――――こほん。……まあ、いいけれど。それならあなたも着替えなさいよ!」
「えっ? なんで?」
「つ、ツインテールにしてほしいって言ったのは政宗でしょう!? つまりあの頃の制服になって、ということでしょう?」
「…………。うん?」
「私だけ制服になるのは恥ずかしいじゃない! だからあなたも制服に着替えてって言ってるの!」
「……別に制服にまでならなくても、ただツインテールにしてくれれば嬉しいんだけど」
…………。も、もしかして、また私、一人で勝手に妄想して……?
「ああああ、それなら早くそう言いなさいよ!」
「……別に俺、制服着てくれなんて一言も――――」
シュッ!! ゴスッ!!
「は・や・く・い・い・な・さ・い・よ!!」
「――――ワカリマシタ、愛姫サマ」
「よろしい」
私は、赤くなった顔を見られないように、小走りで壁に突き刺さった包丁を回収すると、軽く洗って料理を再開する。
……でもなんで急にツインテールにしてほしいって言い出したんだろう?
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やったぜ! ついに、ついに愛姫のツインテール姿を見られるんだ!
ツインテールを止めてからはや数年…………。
何度あの頃の愛姫を妄想して抱き締めたくなったことか……。
ツインテールの日に、思い入れのあるツインテールを見ることが出来るなんて、本当に嬉しくて仕方がない。
全く、デッド・オア・ラブ作戦なんてうじうじ続けてないで、早く愛姫の本当の魅力に気付けと、昔の俺に声を大にして言いたいね。
ま、今は凄い幸せだからいいけれど。
さーて、いつ来てくれるかな……?
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久々に懐かしい制服に着替えようと思ったら、ちょっ……なによこれ!?
む、胸のあたりが……すごくキツいんだけれど!
どれだけ私の胸って小さかったのかしら……。
やっぱり、政宗と付き合い初めてからよね、大きくなり始めたの。愛の力って偉大だわ。
…………吉乃には敵わないけれども、少しは追い付いたんじゃないかしら?
仕方がない。このまま行きましょう。
政宗ならどんな格好でも褒めてくれると思うし。
このツインテールだって……。
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ガチャッ。
「お、おまたせ」
「おう、来た、か…………」
俺は、顔を赤らめながら入ってきた愛姫を見て、言葉を失った。
「……ちょっと、何か言いなさいよ」
「…………」
「ねぇ、政宗。政宗っ!!」
「はっ!? す、すまん。つい見惚れてた」
「っ!? ほ、ほんとう?」
「ああ。本当に可愛いよ、愛姫」
本当に見惚れてしまった。
…………可愛すぎる。いや、可愛いだけでは言い表せない。天使、いや、女神だ!!
「きゃっ」
つい近づいて抱き締める。
……この格好で抱き合うのは何年ぶりだろう。
「……本当に、最高に可愛いよ。愛姫、大好きだ」
「……分かってるわよ、それに、私の方が愛は強いんだから!」
「はいはい、そうですねー」
「ちょっと、誤魔化さないでよ!」
抱き締めあったまま言い合う。
これまでに、何回も、何十回も、何百回も同じように言い合っては、笑いあっていた。
「ふっ」
「くすっ」
そして最後は決まって、これで終わる。
「「大好き。愛してる」」
ちゅっ♪