真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第九十九話

 

 

 

 

 

「どうした秋月……お前の力はこんなものか?」

「………弱い」

「ぐ……がはっ……」

 

 

倒れた俺を見下しながら告げる華雄と恋。

何故、こんな事になったのだろう……俺は地に伏しながら、そんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

◆◇一時間程前◆◇

 

 

「うりゃあ!」

「よっと……」

 

 

大河の拳を受け流すと俺はそのまま腕を取り、勢いをそのまま利用して投げ飛ばす。

大河も流石に身軽なので軽々と体を捻り、衝撃を殺しながら着地した。

 

 

「ふー……少し休憩にするか」

「押忍!」

 

 

俺と大河は朝から鍛練をしていた。桂花の事があって数日気の抜けた生活をしてしまったが体に喝を入れなければならないと思って気合いの入れた組手をしていた。

そして朝から鍛練をして居たので、ちょっと一息。流石に疲れた。

 

 

「良い気合いだな秋月。私も混ぜてもらおうか」

「え……華雄……?」

 

 

背後から掛けられた声に振り返ると華雄が自身の武器を持って立っていた。若干、殺気だっている気もするが。

 

 

「あ、あの……華雄?」

「細かい話は無しだ……」

 

 

妙な雰囲気に俺は嫌な予感がしたから、まずは話をしようと思ったのだが華雄は大斧をグッと強く握りしめて振りかぶった。

 

 

「私と……戦え!」

「危なっ!?」

 

 

真っ直ぐに振り下ろされた大斧は俺が立っていた位置に突き刺さる。咄嗟に飛び退いたけど、飛び退かなかったら只じゃ済まなかっただろう。

 

 

「か、華雄!ちょっと待て!?」

「問答無用だぁ!」

 

 

迫り来る大斧の連撃をなんとか避けているが当たるのも時間の問題。そして今の華雄は話が通じない。

この二点は間違い無さそうだ。キレた春蘭と同じだな。

多分だけど俺と桂花絡みの事なんだろうなぁ……

 

 

「ちっ……話を聞くにも華雄の頭を冷やさないとか」

 

 

俺は覚悟を決めると手に気を込める。

 

 

「か…め…は…め……」

 

 

かめはめ波を撃とうとしたその時だった。ゾクッと背後に寒気走り、振り返るとそこには華雄と同じく武器を構えた恋の姿が……

 

 

「波っ!」

 

 

俺はかめはめ波を恋の足元に向けて放ち、その反動で飛んだ。これぞ緊急離脱かめはめ波!

と……飛んだところまでは良かったのだが、この後、壁に激突して頭を打った。超痛い。

 

 

「ふむ……お前も来たか恋」

「うん……恋もやる」

 

 

多分、恋のやるは「(鍛練を)やる」の意味だったんだろうけど俺には「殺る」に聞こえたのは気のせいかしら。

 

 

「秋月……許さない」

 

 

あ、これは「殺る」の方だわ。じゃなくて!

 

 

「あ、あの………恋?なんで、そんなやる気に?」

「月と詠、ねね……元気無かった」

 

 

俺の質問に恋は答えてくれた。少し言葉が足りない気もするが……ん、月達が元気無い?

 

 

「えーっと……その原因が俺?」

「……」

 

 

コクリと頷く恋。

 

 

「少し前から元気が無かった。他の人に聞いたら秋月と桂花が原因って城の皆が言っていた」

「………あー」

 

 

なんとなくだが話の輪郭は掴めてきた。つまり、俺と桂花が関係を持った事で月達は少なからずショックを受けた。そしてその事を元気つけたいと思った恋は原因を探し、答えが俺だと行き着いた……と。

そして城の皆とは兵士や文官、侍女達に訪ねたのだろうが、彼等もまさか、こんな結果になるとは思わず、恐らくボカした言い方をしたのだろうが、恋は言葉そのままに受け取った。その結果が『秋月をボコボコにする』と言ったところか?

んで、その流れで行くと……華雄の方は噂とかじゃなくて直接、俺と桂花の寝ているところを見てた訳だから誤解とかじゃなくて本気で来てた訳だ。

変な話、自分で撒いた種が原因とも言えるか……大将の言葉が重く、のし掛かる。

 

 

『桂花を可愛がるのも結構だけど、他の娘達も気に掛けなさい』

『アナタや一刀の居た所じゃ一人を愛するのが当たり前みたいだけど……アナタが本気で彼女達を思うのなら彼女達とちゃんと向き合いなさい』

 

 

そっか……そうだよな。桂花との事で浮かれてたけど月達と向き合わなきゃならなかった。

その対応が遅れたから、この状況な訳で。なら自分のケツは自分で拭かなきゃだな。

 

 

「華雄……恋……来い!」

「ほぅ?」

「……行く」

 

 

先ずは二人との対話が必要だが今は話が通じないだろうし、ガス抜きも兼ねて俺が相手をせねば。俺は意を決して華雄と恋に構えをとる。二人は俺が戦う姿勢を見せたと同時に武器を構えた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

そして今に至る。一対一でも勝てないの一対二なんて勝てる訳ねー。しかも、華雄も恋もいつもより強かった気がする。

 

 

「ま、まだ……だ」

 

 

俺は立ち上がり、気を両手に込めて手を合わせる。満身創痍でこの技は危険だが……やるしかない。

 

 

「お、おい……秋月?私もやり過ぎたが……これ以上は……」

 

 

頭が冷え始めた華雄が慌て始めたが、俺にも意地がある。そしてこれは俺の贖罪でもあるから少しは痛い思いをしなければとも思う。

 

 

「食らえ、万国吃驚掌!」

「っ!」

 

 

そうこれぞ亀仙人の奥義、万国吃驚掌。本来は体の中の静電気とかを集めるが俺は気で代用する。俺は気を常に放出し、敵にダメージを与え続ける。気の消費とコントロールが難しく、放つ側が失敗すると自身にダメージが返ってくるが……俺は恋に向けて万国吃驚掌を放った。これで少しは……

 

 

「えいっ」

「…………えぇー」

 

 

なんと恋は俺の万国吃驚掌を体を振るっただけで振り払った。俺の技が未熟なのか恋が規格外なのか……まぁ……両方か……

 

 

「秋月?……秋月!?」

「し、師匠ー!?」

 

 

 

俺の前で小首を可愛らしく傾げる恋。それを見ながら俺は意識が遠退いていった。それと同時に聞こえてきたのは心配する様な声で俺の名を呼ぶ華雄と大河の声だった。

あれ、そういや途中から姿が見えなかったけど、大河は何処に居たんだろうか?

 




『逆かめはめ波/離脱かめはめ波』
かめはめ波を相手に向けるのではなく反対に放ち、その反動を利用する技。攻撃手段としては体当たり。回避としては敵の攻撃を避ける・天下一武道会で場外敗けを防ぐ為に使用された。

『万国吃驚掌』
亀仙人の持つ技の中で対人に優れた技。体内に流れる微量な電流を互いに合わせた手の平に集中させ、腕を突き出すと共に放射する。被弾した相手は空中に浮遊させられることによって四肢の自由を奪われ、やがては感電死してしまうという、非常に危険な技。

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