◆◇side桂花◆◇
風呂場を後にした私は書庫へと向かい、仕事に没頭していた。昨日、出来なかった分を今日やらないと華琳様に報告できないからね。
昨日、集中できなかったのが嘘のように私は筆を走らせていた。むしろ此処までスラスラと進むと私自身驚いている。
「仕事は捗っている様ね」
「か、華琳様!?」
私が仕事を進めていると書庫に華琳様が居らした。書庫の文官達も慌てている。
「ああ、他の皆は仕事を続けて。私は桂花と話をしにきただけだから」
「「御意」」
華琳様の一声で文官達は仕事に戻る。華琳様が私に話……この瞬間思い付くのは昨日片付けられなかった仕事の事と……昨日の秋月との事。
「桂花……昨日の事なんだけど?」
「は、はい……」
ニコニコと歩み寄る華琳様。華琳様のこの時の目は私を可愛がってくださる時の目。でも今の私には少し嫌な予感のする物だった。
「純一と閨を共にしたそうね?」
「……………はい」
華琳様が私を後ろから、優しく抱き締めてくださった。
いつもの様に優しく、甘い包容。昨日、今日と秋月も私を抱き締めたけど雲泥ね。ったく……アイツももっと私を労りなさいよね。
「ふふっ……妬けるわね桂花。私の包容最中に『誰』の事を思い浮かべたの?」
「か、華琳様!?私は別に秋月の事なんか……」
私は華琳様のお言葉にハッとなる。華琳様に包容していただいてるのに他の事を考えるなんて、ましてや秋月の事を……
「あら桂花?私は『誰』と言ったのよ。純一とは言ってないのよ?」
「は、はぅ……華琳様ぁ~」
華琳様は待ってましたと言わんばかりの対応……い、いけない。このままでは……
「ねぇ……桂花?」
「は……はい」
華琳様は私の包容を解くと私の前に回る。
「純一は貴女を抱いた事を後悔してないそうよ。しかも、純一が貴女を抱いた事を咎めようとしたら抵抗したわ。春蘭と戦おうとする覚悟まで見せてね。愛されてるわね」
「~~~~~っ!?」
華琳様のお言葉に顔が熱くなるのがわかる。頬が緩むのを感じる。ヤバい……嬉しい、嬉しすぎる。これって、もしかして……私が秋月にベタ惚れ……
「まったく……男嫌いの桂花を雌猫にしてしまうなんて、やり手ね純一は」
「か、華琳様~」
私の態度にやれやれと肩を竦めてしまう。
「あら、でも……そんな雌猫の桂花と純一を一緒に可愛がるのも面白いわね。桂花、想像してみなさい?」
「か、華琳様と秋月と……」
私は想像した。二人揃って私を……ああ、いけません華琳様!秋月も……そんな……
「………ふみゅう」
「あ、ちょっと桂花!?」
その光景を想像していたら頭が熱くボーッとなって私の意識は遠のいた。
この後、目覚めた時。既に夜遅くになってしまい、華琳様から今日はしっかり休むようにと言いつけられ、私は秋月の部屋には行けなかった……クスン。
◆◇side華琳◆◇
「………ふみゅう」
「あ、ちょっと桂花!?」
私が想像してみなさいと言ってから桂花はブツブツと妄想をしたのか最後には湯気が出そうな程に顔を赤くしてから目を回して倒れてしまった。私は慌てて桂花を抱き抱える。
流石に予想外だったわね。桂花が純一にベタ惚れだとは思ったけど、ここまでなんて。
「曹操様、荀彧様は……」
「日頃の疲れが出たようね……休ませるから、貴女達に仕事を任せても良いかしら?」
「ハッ!お任せください!」
心配そうに桂花の事を見にきた文官達。
私の言葉に元気よく返事をしてくれた。慕われているのね
「それにしても……」
未だに私の膝で気を失っている桂花。とりあえず夜は純一と約束でもしてるだろうから断らせないと駄目ね。