真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第八十四話

 

 

さて、国に帰った俺達だが大将の言い付けで顔良に警備隊の仕事を教える事に……とは言っても、あーだこーだと説明するよりも俺や一刀と一緒に居た方が分かりやすい筈。

 

 

「…………」

 

 

俺の後ろを無言で付いてくる顔良。大将と何の話をしたかは分からないのだが俯き気味で顔は晴れてない。やっぱ、この間の話が尾を引いてるのかな。

 

 

「副長殿、蒸したてのが出来た所だ。持っていってくれ!」

「お、ありがとう。あ……もう一つ貰えるかな?」

 

 

街中を散策していたら肉まん屋の親父さんが蒸したての肉まんをくれた。顔良の分も貰おうと思ったら親父さんはニヤッと笑った。

 

 

「なんだい新しい女かい?副長殿も手が早いねぇ!」

「店を潰したろか?」

 

 

素敵な事を抜かした肉まん屋の親父に気功弾を撃ち込んでやろうかと思ったけど、互いに冗談だと分かってるのでゲラゲラと笑いながら肉まんを受けとる。

 

 

「っと……そうだ副長殿。向こうの区画の方なんだが……なんかガラの悪そうな奴等が最近、住み着いてたぜ」

「ん、わかった。調べとくよ、あんがとね」

 

 

親父さんからの情報も得てから顔良に肉まんを渡す。俺はすぐに肉まんを食べたのだが顔良はポカンとしていた。

 

 

「あ、あの……秋月さんって警備隊の副長なんですよね?あんなに気さくに話し掛けられんですか?」

「ん、まーね。堅苦しいの好きじゃないし。一刀も大体、同じだぞ。顔良も冷めない内に肉まん食べな」

 

 

顔良の話を聞きながら、もしゃもしゃと肉まんを頬張る。お、更に旨くなってるな。やるな、親父さん。

 

 

「あ、はい……あ、美味しい。ってそうじゃなくて!なんで警備隊の副長さんが威厳も感じさせない事をしてるんですか!」

「旨いなら何より。質問の答えだが……んー厳しさも大事だけど俺は人の繋がりを大事にしたいからかな?」

 

 

顔良は信じられない物を見たと言わんばかりな感じだ。

 

 

「人との……繋がり?」

「警備隊が街に居るから安心ってのもそうだけど、だからって物々しい雰囲気じゃ街の人たちは落ち着かない。だからある程度、親しい方が良いのさ」

 

 

一刀も俺とほぼ同じ考え方をしてる。まあ、親しみを持てるのとサボりで意味が違うが。

 

 

「それでさ、さっきの肉まん屋の親父が情報くれただろ?あれも親しくして接しやすいから教えてくれたんだ。ただ厳しいだけの警備隊だと、さっきの親父さんは詰め所に足を運んで上申しないと国には聞き入れてもらえない」

「それをお手軽にする為に……ですか?」

 

 

顔良は俺の話にかなり食い付いている。何かを確かめる様に。

 

 

「それが全部とは言わないよ。でも街の人達の協力も得て、街を良くしていくのも警備隊の仕事……かな?」

「…………本当に袁家とは違うんですね」

 

 

俺の発言に顔良は俯きながら小声で何かを呟いた。何を呟いて何を考えたのか俺には分からないが顔良には大事な事なんだろう。

その後、俺は街の巡回を続けながら服屋や武器屋を回って頼んどいた物のチェックや進行状況を確かめる。顔良はその事に、いちいち驚いていた様子だが。

 

 

「ま、俺の一日はこんな感じかな。今日は巡回を主軸にしたけど事務仕事は別にしてるから」

「今日のも十分事務仕事……いえ、なんでもないです。今日はありがとうございました。明日は北郷さんの方に付いていってみます」

 

 

巡回を終えて城に戻ると俺は顔良に仕事の事を改めて伝えた。何か言いたそうだったけど、顔良は俺に頭を下げて行ってしまった。

 

 

「なーんか、焦ってる感じ……かな?」

 

 

俺は煙管に火を灯して肺に煙を入れる、今日の顔良は何処か焦ってると言うか……

 

 

「ま、大将も絡んでるし俺が考えるこっちゃないか」

 

 

フゥーと煙を吐く。明日は一刀の所か……大将も国の仕事を教えろって言ってたし、顔良次第かね。

 

 

「あ、純一さん!」

「副長、お疲れ様です」

「一刀に凪か、そっちは終わったのか?」

 

 

俺と同じく、街の巡回に出ていた一刀や凪が戻ってきた。

 

 

「はい。こっちの方は問題なしです」

「おう、お疲れさん。こっちの方は肉まん屋の親父さんに聞いたんだが……」

 

 

俺と一刀は簡単に情報交換をする。あ、そう言えば。

 

 

「明日だが顔良がそっちに付くぞ」 

「隊長に顔良さんが?」

 

 

俺の言葉に凪の眉がピクッと動いた。

 

 

「大将の言い付けでな、今日は俺の所に居たよ。明日は一刀の所ってな。凪、大将の推薦でもあるし、頼まれ事でもあるんだ」

「うぅ……はい」

 

 

多分、凪は顔良が一刀に何かすると思ってるんだな。まあ、つい先日まで敵側だったんだから仕方ない。

 

 

「凪、何かあるとは思えないけど明日の一刀の護衛……任せたぞ」

「ハッ!承知しました!」

 

 

俺が凪に指示を出すと凪はパアッと明るくなった。そのまま意気揚々と明日の予定を組みに行ってしまう。

 

 

「あんなに張り切って……愛されてるねぇ一刀。大事にしろよ、あんな良い娘は特に」

「愛されてる……って俺は皆を大事にしますよ」

 

 

俺の言葉に一刀は真っ直ぐ俺を見た。ふむ、これなら大丈夫だな。

 

 

「そうか……んじゃ、嫉妬に駆られて斬られないように気を付けろよ。俺はバッドエンドコーナーで道場でも開いて待ってるからな」

「不吉な事を言わんでください」




『タイガー道場』
『Fate/staynight』でバッドエンドを迎えることで転送される謎の空間。 本作に登場するキャラの(自称)そっくりさんが二人がクリアへの道筋を教えてくれる。更にメタネタや裏話を遠慮なく、ぶっこんでくるので単なるネタ空間と化している。

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