俺達は大将の号令の下、軍を率いて都を目指していた。反董卓連合の集まりの為だ。魏を出てから数日になるようだが目的地近辺までは来ているがまだ先のようだ。
「んー。集合場所まで結構あるなぁ……」
「これでも近い方よ。西方の馬騰などは、この何倍もの距離を、私たちよりはるかに迅く駆け抜けるというわ」
俺の耳には一刀と大将の会話が聞こえる。
「西方の人達は騎馬の民だからだろ……生まれてすぐに馬に乗る人達と一緒にされても困るよ」
「相変わらず、変な所にだけは詳しいのね」
「とは言っても必要な知識だろう?」
「荷物は黙ってなさい」
「あ、はい」
一刀と大将の会話に参加しようとしたら荀彧に睨まれて黙る俺。今現在、俺は縄でグルグル巻きにされて馬車の荷物と一緒に運ばれている。
何故、こんな事になったかと言えば反董卓連合に出発する日に新技開発をしたのだ。
『行くぞペガサス流星……ぎゃぁぁぁぁぁっ!腕が!?』
『ふ、副長ーっ!?』
なんか右腕の筋肉がつった。寝てる時に足がつったみたいに凄い張ってる感じ!たまたま近くにいた新兵に心配されたが続いて第二弾!右腕が痛いので左腕でトライ。
『獣王会心げ……痛だだだっ!捻れる!?』
『副長、もう止めてください!?』
とまあ、技を見よう見まねで撃とうとしたら腕の筋肉がエラい事になった。しかも気が枯渇して気絶。しかしその日の内に出発予定だったので俺は気絶したまま馬車の荷台に縛られた状態で輸送されたのだ。
そして先ほど、目を覚ましたけど出発する前に騒がせた罰として未だに縛られたままだった。
しかもお目付け役として荀彧が俺の隣に座っているのだ。この間の一件から妙にギロッと睨まれる事が多くなった。泣ける。
「だらしないよ、兄ちゃん」
「そうですよ、兄様」
季衣と流琉のチビッ子コンビが一刀を嗜める。因みに流琉はこの間から一刀を『兄様』と呼んでいた。流琉にそう呼ばれた一刀の頬が緩んだのを俺は見逃さなかったよ。
そして俺の事を『オジ様』と呼ぼうとした流琉。俺は思わず流琉を『クラリス』と呼ぼうとしたがギリギリで踏みとどまった。それを言ったら『オジ様』呼びを認めた事になりかねない。
とりあえずは季衣と同じ様に呼ぶようにと頼んどいた。
「華琳様、袁紹の陣地が見えました!他の旗も多く見えます!」
「こりゃ……凄いな」
荀彧の言葉に俺は縄で縛られたままの体を起こして陣地を見る。と……陣地からこっちに人が来た。あの子は……顔良だったな。文醜はいないみたいだが……
「曹操様!ようこそいらっしゃいました!」
「顔良か、久しいわね。文醜は元気?」
「はい。元気すぎるくらいですよ。って……なんで秋月さんは縛られてるんですか?」
「ちょーっと仕事でミスっちゃってね」
顔良が縛られてる俺に気づく。うん、気配りの出来る子だね。アハハと乾いた笑みを浮かべたが話は続く。
「で、私たちはどこに陣を張れば良いかしら?案内してちょうだい」
「了解です。それから曹操様、麗羽様がすぐに軍議を開くとのことですので、本陣までおいで頂けますか?」
「わかったわ。凪、沙和、真桜。顔良の指示に従って陣を構築しておきなさい。それから桂花は、何処の諸侯が来ているのかを早急に調べておいて」
顔良との挨拶もそこそこに大将は指示を出す。いや、俺は?
「私は麗羽の所に行ってくるわ。春蘭、秋蘭、それから一刀は私に付いてきなさい。純一は此処で凪達の監督を命ずるわ」
「りょーかい……って縄を……」
大将はそのまま一刀を連れて行ってしまう。いや、俺の拘束を解いてから行けや!
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、ありがと」
見かねた顔良が縄を解いてくれた。うぅ……優しさが身に染みる。と言うか顔良さんが俺の縄を解く為に急接近。
これはヤバい!自然と顔良さんが俺を見上げる形になるので上目使いっぽい。
可愛いなぁと思ってたら背中に衝撃が。振り返ると荀彧が俺の背中を蹴っていた。
「………仕事しなさいよ」
「あ、はい……んじゃ顔良さん。凪達に指示を頼みます」
「そ、そうですね。どうぞ此方へ」
妙なプレッシャーを放つ荀彧。これは下手に逆らうより従った方が良いな。顔良さんもそれを察したのかそそくさと行動開始。
なーんか、この間から本当に機嫌悪いな荀彧。ま、考えても仕方ないか。今は仕事しよ。
そう思った俺は顔良さんの指示のもと陣営設置に勤しんだ。時おり、妙に荀彧に睨まれた気がしたが……
『ペガサス流星拳』
聖闘士星矢の主人公の必殺技。秒間数百発の音速の拳の連打。
『獣王痛恨撃/獣王会心撃』
ダイの大冒険に登場するクロコダインの必殺技。腕に闘気を集中させ、前方に闘気の渦を放つ。
ダイ達の仲間になった時、バダックの勧めにより獣王痛恨撃から獣王会心撃と改名。