真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第三十八話

 

 

 

「なんで……こんな事になってんのよ?」

「うん。俺にも予想外だった」

「それだけ秋月さんの案が素晴らしかったのでしょう。あ、コレも可愛い……」

 

 

城に届けられた大量の衣装に俺や荀彧は少々あきれて、栄華はルンルンと服を選んでいた。

さて、何故こうなったかと言えば以前、俺が案を出した服のデザインや小物の意見を服屋の店主に伝えた事から始まる。この時は沙和の意見として『街の経済が回れば賑やかになる』との事で俺は手始めとして未来の知識の服の委託を考えた。その結果、店主の頭に稲妻が走ったらしく思い付くままに様々な服を作り上げたのだと言う。

少し前に様子を見に行った時にはメイド服が既にあった事に驚きと喜びを感じたものだ。

 

それは兎も角、店主は素晴らしい意見を出してくれた礼として作った服を大量に持ってきたのだ。大将に話を通したのでそろそろ来る頃だが……

 

 

「うわっ、凄い量」

「コレ全部がそうなの?大したものだわ」

 

 

一刀と一緒に来た大将。微笑ましいですよ覇王様と言いそうになったが止めとこう。荀彧と大将のツープラトンを食らいそうだ。

 

 

「これ……全部女物なの?」

「いんや。服屋の店主には色んな意見を伝えただけでな。でも少し見た感じだと男物と女物で半々だな」

 

 

女物は明るい色が多いから、そっちに目が行きがちになるが中にはしっかりと男物の服が入ってる。

 

 

「へぇ……確かに色々とありますね。あ、トレンチコートまで」

「え、マジで?着てみるか」

 

 

一刀の持っていたトレンチコートを受け取ると袖を通す。なんか普通に着心地良いんだけど。現代のアイディアをアッサリと作り上げるとは恐るべし。

 

 

「似合いますね純一さん」

「まあ、元々冬場には、よく着てたからな」

 

 

スーツの上から羽織るには丁度良いんだよな。これは嬉しいかも。

 

 

「それで中折れ帽子でも被ったら刑事か探偵ですね。ハードボイルドみたい」

「トレンチコートに中折れ帽子って銭形かよ。後、俺は探偵ならスカルが好きだ」

 

 

ハードボイルドって格好いいよね。俺だとハーフボイルドだけど。

 

 

「それでパードボイルド、これは何?」

「なんで教えてもいない天の国の言葉を出した?それは作務衣だな」

 

 

荀彧の言葉にツッコミを入れる。誰がパーだコンチクショウ。的確な言葉を作りおって。

 

 

「作務衣?」

「それも天の国の服なのかしら?」

 

 

栄華や大将も気になった様だ。荀彧が手にした作務衣に興味津々といったご様子。

 

 

「作務衣ってのは……天の国のくつろぎ服みたいなもんかな。パジャマ……寝巻きに使う人も多いし。元々は禅宗の僧侶が日々の雑事を行うときに着る衣らしいが」

「浴衣とか甚平とかと同じですよね」

 

 

俺も元々は作務衣はパジャマに使う事が多かった。これも丁度良いし、俺の普段着としてしまうか?

 

 

「天の国の服も色々とあるのですね……」

「純一さんのアイディアの伝え方が上手いのか……この国の職人が凄いのか……」

 

 

栄華と一刀は他の服も見ている。確かに服屋の店主、凄いよな。ざっくりとした説明と俺の描いた下手な絵でここまでのクオリティの高さを求めるとは。ん、これは……

 

 

「これなんか荀彧に似合いそうだな」

「あら、良い感性ね純一。確かに似合いそうだわ」

 

 

俺は荀彧に見えないように大将側に服を持っていく。大将もその服を見てすぐに頷いた。すると即座に荀彧が反応を示す。

 

 

「秋月の事だからイヤらしい服なんでしょ?」

「その論法だと大将の感性もイヤらしいがな」

 

 

荀彧の言葉に思わず反論したが大将って割とオープンにスケベだよな。『大将のオシオキ=イヤらしい事』的な計算式ができてるし。

まあ、でもこの服は普通の服だが荀彧には似合うと思う。

 

 

「ふむ……桂花。私は純一の感性を信じて服や小物の案を出させたわ。貴女はそれを否定するのかしら」

「い、いえ……その様な事は……」

 

 

あからさまなドS顔の大将が荀彧を追い詰めて壁にトンと手を着いた。壁に追い詰められた荀彧は少し怯えた様な反応をしたが、その表情は愉悦に歪んでる。あ、こらアカンわ。

 

 

「取り込みになるなら失礼するか。行くぞ一刀、栄華」

「え、あ、はい」

「は、はひ!」

「あら、見ていかないの?」

 

俺は大将と荀彧の世界に見入っていた一刀と栄華に声を掛けて部屋を後にしようとする。しかし大将に呼び止められた。

 

 

「見たいのは山々だが見たらエラい事になりそうだからな。ま、ごゆっくり」

 

 

荀彧の乱れる姿はヒジョーに気になるが見たらリアルに殺されかねん。それにこれ以上、荀彧に罵倒されるネタを増やすのもな。

 

 

「つー訳なんで失礼するよ」

「そう……貴方の好きになさい」

 

 

俺の言葉に大将はツマらなそうにしていた。あれ、俺は選択肢を間違えたか?しかしこれ以上此処に居ると大将の機嫌を損ねかねないし、俺は一刀と栄華を連れて部屋を出る事にした。連合の準備もしなきゃだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………何よ……馬鹿……」

 

部屋を出た時に僅かに聞こえた荀彧の声は何を意味したのだろうか。気にはなるが今さらあの部屋には戻れないなぁ……


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