真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第三十六話

 

 

 

 

さて、チビッ子二人を連れて近場の森へ来たのは良いのだが……

 

 

「季衣の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「流琉のわからず屋ぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

可愛らしい声とは裏腹に土地破壊を続けるチビッ子二人に俺は煙管を吸っていた。轟音と共に森の形が変わっていく。

なんか、森をテーマにした映画でこんなシーンあった気がする。

ある程度距離を取った位置で見ているのだが二人の武器が武器だから稀に此処まで届くから怖い。

 

二人の武器はぶっちゃけガンダムハンマーと巨大なヨーヨーなのだが二人の気質が出てるな。

季衣のハンマーは真っ直ぐ飛ぶタイプ。野球で言えばストレートだ。

対する典韋のヨーヨーは多少の軌道の変化が見える。野球で言えば変化球って所か。

 

 

「副長!お二人の戦いの被害が甚大です!」

「折れた木とかは回収して城に運んどいて薪と工事用の材木にするから」

 

 

同行してもらったカラクリ同好会の面々に指示を出す。連れてきて正解だった。彼等には破壊された木を運んで貰ったり、街の人が森に近づかない様にして貰ったりと働いてもらっていた。

 

 

「ふ、副長……さっきから超怖いんやけど……」

「耐えろ。俺達が居なくなったら更に被害が出る」

 

 

真桜が俺に若干怯えた様子で話しかけてくる。いや、俺だって怖いちゅーねん。

 

 

「まあ、油断しなければ……危なっ!?」

「副長、自分で油断しなければって言っといて、それは……うひゃあ!?」

 

 

危ねぇ!ハンマーとヨーヨーが交互に襲ってきやがった。少し戦いから視線を外したらコレかよ。

 

 

「も、もう……いやや……何回目か分からへんで」

「もう少ししたら大将達の話も終わるだろうから、もう少しの辛抱だ」

 

 

そう。今のが始めての危険というわけではなく今まで幾度となく危険に晒されていたのだ。かと言って警備隊の隊員を前に出したら間違いなく、ぶっ飛ばされる。故に俺と真桜が他の隊員よりも前に出なければならないのだ。

って言ってる側からハンマーとヨーヨーが同時に……同時!?

ヤバい流石に同時にこっちに飛んでくるのは今まで無かった。俺は真桜を後ろから庇うように抱き止めると右手に気を集中する。

 

 

「ひゃ……ふ、副長っ!?」

「ハアッ!」

 

 

真桜が驚いて妙な声を出したが俺は気にせずハンマーを気で強化した手で弾き返す。弾き返したハンマーは、そのままヨーヨーとぶつかって俺達の位置からは反れた。二人は未だに白熱しているのか、そのまま戦いを続行していた。息も上がってきてるし、そろそろお仕舞いか?

つーか、今のかなり上手くいったな。気で強化して手のひらに気を放つ形が一番良いのか?

今の感じもフェニックスウイングみたいな感じだったし。これならベルリンの赤い雨とかも使えるかも。

 

 

「どう?調子は」

「おお大将。見ての通りだ」

 

 

なんて考え事をしていたら大将が来た。一刀や荀彧も来ていた。あれ、荀彧が超睨んでるんだけど。

 

 

「見ての通りねぇ……アナタが真桜の胸を揉んでいる様にしか見えないわよ」

「え……あ……」

 

 

大将の言葉に状況整理。俺は先程、真桜を庇った際に胸を鷲掴みしていた。現在、左手が凄い幸せになってる。

 

 

「いつまで揉んでるのよ!」

「って!?」

 

 

荀彧の背後からの蹴りに俺は真桜から手を離してしまう。

 

 

「巨乳!?やっぱり巨乳なの!?」

「痛たたたたたたっ!?」

 

 

荀彧はそのまま俺にストンピングを浴びせる。痛てぇ、妙に的確に打ってくるんだけどコイツっ!?

 

 

「やるなら徹底的にやれか……ホントに全力でやっていたのか」

「その方が遺恨が残らないもの。可愛いものだわ」

 

 

いや、お前達も無視してんなよ!?いつの間にそんなスルースキルを身に付けた!

 

 

「い、いややわ副長……揉みたいんなら言ってくれれば……」

「………………」 

「痛だだだだだっ!?」

 

 

恥じらいながらもそんな事を言ってくる真桜。その言葉に反応してか荀彧の蹴りの威力がアップした。ちょっと待ったマジで痛いって!

疲れたのか荀彧の蹴りが止むとチビッ子二人の戦いも終わりに近付いた様だ。

 

 

「……流琉、お腹すいた」

「……作ってあげるから、降参しなさい」

 

 

仲が良いのか悪いのかわからん会話だな。俺は立ち上がると埃を叩いて払う。

 

 

「やだ……流琉をぶっ飛ばして、作らせるんだから!」

「言ったわね……なら、季衣を泣かして、ごめんなさいって言わせるんだから!」

 

 

あ、第二ラウンド開始の予感。ゴング鳴らしたいな。

 

 

「ちょりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

再び飛び交うハンマーとヨーヨー。まだ、やる気らしいな……あ、木の破片が……こっちに……

 

 

「荀彧、危ないぞ少し下がってろ」

「え、ひゃあ!?」

 

 

さっきの要領で飛んできた木の破片を打ち払う。なるほどコレは便利だ。

 

 

「あ、ありが……っふん」

「そこまで言ったんなら最後まで言ってくれよ」

 

 

助けられた事に礼を言い掛けた荀彧だが途中で止めて、そっぽを向く。礼を言うにしてもちゃんと顔を見なさいっての。

なんて荀彧と話をしていたら色々と状況が終わっていた。大将と一刀の話も終われば、チビッ子二人の戦いも終わった様だ。二人揃って倒れてる。

 

 

「…………きゅう」

「………うみゅぅ」

「やれやれ。向こうも終わったようね」

 

 

チビッ子二人の状況と俺達を見て大将が話を切り出す。って事は俺の方も見て放置してやがったな。

 

 

「……ゴメンね、流琉。ボク、流琉と早く一緒に戦いたかったから……手紙、きちんと書けてなかったんだよね」

「いいよ。私も季衣と早く働きたかったから……州牧さまの所で将軍をやってたのは、びっくりしたけどね」

 

 

なんか川原で殴りあった不良の仲直りシーンを見てる気分だ。

 

 

「じゃあ、ご飯……作ってくれる?」

「うん。一緒に食べよ」

「ようやく決着が着いたようね。二人とも」

 

 

話が纏まった所で大将が一歩前に出る。大将が典韋を立たせると話を切り出した。

 

 

「もう一度誘わせてもらうわ。季衣と共に、私に力を貸してくれるかしら?料理人ではなく、一人の武人……武将として」

「わかりました。季衣にも会えたし……季衣がこんなに元気に働いている所なら、私も頑張れます」

 

 

話を聞いてはいたが大将は元々、典韋を料理人として誘っていたらしい。だが典韋は季衣との事があって断っていたらしいが。

 

 

「ならば私を華琳と呼ぶ事を許しましょう。季衣、この間の約束。確かに果たしたわよ?」

「はい、ありがとうございますっ!」

「約束?」

 

 

季衣と大将の約束。話の流れからすると典韋を城に招くって所か。

 

 

「ふぅー……やれやれだ。あ、城に戻ったら五右衛門風呂、沸かしといて。あのチビッ子達も入るだろうし」

「了解です」

 

 

俺はそれを遠目に見ながら煙管を吸う。警備隊の隊員に先に指示を出しといた。戦いまくって汗だくだし泥だらけになってるから、風呂にも入りたいだろう。それに……

 

 

「薪は大量に生産されたからな……」

 

 

俺は破壊し尽くされた森の惨状を見て呟いた。木は折れ、岩は破壊され、近くに居た猪が数匹仕留められていた。

とりあえず折れた木は材木に。仕留められていた猪は城で出す食材行きだな。当分、どちらにも困ることはないだろう。薪の方は生木なので当分、乾かしてからだけど大量確保には違いない。

 

 

「副長、あのお二人に任せれば猪狩りが楽になるのでは?」

「この国から猪がいなくなるから止めとけ」

 

 

隊員の一人がそんな事を言ってくるが国中の猪の全てを狩りかねない。

とりあえず城に戻ってから顔良と文醜が話していた袁紹の使いの話を聞かないとか。

そういや、顔良って可愛かったな……って荀彧。俺は何も口にしてないんだから無言で足を踏むな。

 




『フェニックスウイング』
ダイの大冒険のラスボス、大魔王バーンが真の肉体に戻った時に使える防御技。魔法力を弾く衝撃波を伴った超高速の掌撃を放つ。その衝撃波によって並みの攻撃とあらゆる魔法は弾かれる。


『ベルリンの赤い雨』
キン肉マンの超人ブロッケンJr.の技。ナイフの如く鋭い手刀で相手を切り裂く技。その傷口から吹き出した血がまさに雨のように降り注ぐことからその名がついたとされる。

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