真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第三百五話

 

 

 

 

「ふむ……想いを伝えるのもそりゃ難しいよな。でも尻込みしてばかりじゃ何も伝わらないと思うぞ」

「で、では私はどうしたら……」

 

 

食堂で俺は文官から相談を受けていた。一刀も一緒にいるのだが、彼は俺に相談を持ち掛けていた。

彼は城の侍女の一人に惚れており、何度も共に食事をしたりしているのだが最後の一歩が踏み出せないらしい。一緒に食事を受け入れてくれてる段階で脈はあると思うが……

 

 

「そうだな……次に食事に誘った時に思いの丈を伝えてみたらどうだ?例えば……『これからも俺と一緒に食事をして欲しい』とか」

「な、なるほど……参考にしてみます」

 

 

俺のアドバイスを受けた文官は悩みながらも俺と一刀の前から離席して離れていく。

 

 

「もっと気の利いた告白をアドバイスしてやりゃ良かったかな。『君はあの時、ハナゲが出ていたんだ』とか」

「そんな超限定的な告白絶対に伝わりませんよ」

 

 

何気に好きなんだけどなー、あの告白。

 

 

「どんな告白なのよ……」

「面白い告白があるのねー。それにしても純一ってば、いつもこうなの?」

 

 

先程の文官が萎縮しない様に少し離れていた蓮華と雪蓮が近づいてくる。話もそこそこ聞いていたのか不思議そうな顔をしていた。因みに雪蓮と同様に蓮華からも少し前に真名を許された。最初こそ警戒されてたけど話をしてる内に仲良くなった。思春はまだだけど。結構話してんだけどなー。

 

 

「純一さんは結構色んな人から相談されてるよ。将から文官、警備隊と様々」

「親しみがあるのか、偉い身分と思われていないのか疑問に思うわ」

「あら、純一の場合はどちらもなんじゃない?」

 

 

その相談してくる奴の中には大将も含まれてるんだけどな。そして相談されるのは親しみがあるからだと思いたい。

 

 

「純一って強いけど弱々しく見えるからじゃない?正直、強いって感じしないもの。手加減しても楽々倒せたそうだし」

「確かに……普段を見ていると強いのを忘れてしまいますね。一般の兵士の方が強そうに見えてしまうと言うか……」

 

 

雪蓮と蓮華は俺を見ながらコメントを溢す。これでも一応強いんだがなぁ……まあ、確かに将とか相手じゃ黒星が多いけど。

 

 

「弱く見られるのは悔しいな……鷹村が日本最後の試合で左ジャブだけで倒された挑戦者の様な気分だ」

「素手でクマを倒す人に負けたとしても恥ではないと思いますけど。と言うか話がズレてますよ」

「隊長、お話中申し訳ありません。華琳様がお呼びです」

 

 

話の論点がズレ始めた頃、凪が一刀を呼びに来た。大将が呼びに来たって事は遠征がらみかと思ったけど一刀だけで俺が呼ばれなかったって事は別件だな。

 

 

「華琳が?わかった。純一さん、蓮華、雪蓮。悪いけどちょっと行ってきます」

「おう」

「はーい」

「ええ……行ってらっしゃい」

 

 

一刀が俺達に断りを入れてから席を立つ。俺と雪蓮は普通に送り出したのだが、蓮華だけが名残惜しい風な顔をしていた。一刀は気付いているかは微妙だが。

 

 

「蓮華。一刀はあれで結構鈍感だから伝えたい事はハッキリと言わないと伝わらないぞ。それで大将や凪もヤキモキしてんだから」

「私は……な、なんでもありません!」

「あらー、蓮華ったら可愛いわねー」

 

 

俺が蓮華に一刀の事を伝えると蓮華はわかりやすくポンっと顔を赤くして顔を背けた。その姿は可愛らしく雪蓮の言葉に俺は大いに同意する。

 

 

「ま、一刀の相談ならいつでも乗るぞ。茨の道だとは思うがな」

「そうよねー。一刀もモテモテなんだもの。蓮華が参戦しても大変だとは思うわよ。特に一刀の一番はどう見ても華琳なんだし」

「うう……でも、それを言ったら姉様はどうなんですか!?秋月と親そうにしてますけど恋仲としては踏み出せてませんよね!?」

 

 

俺と雪蓮の指摘に凹む蓮華……かと思えば顔を真っ赤にしたまま雪蓮に叫ぶ。

 

 

「な、何を言ってるのよ蓮華。私は純一とは対等な関係を望んでるのよ?」

「どこがですか!?お酒飲んでは『純一ったら桂花や他の子ばっかりで私に構ってくれなーい』って愚痴ってたじゃないですか!」

「あら、意外なかまってちゃん雪蓮情報……ん、って事は……」

 

 

蓮華の指摘に焦った雪蓮。それに追い打ちをかけて来た蓮華からの追加情報。その話を聞いて最近、雪蓮からの色んなお誘いが多いと思ったけど……

 

 

「もしかして雪蓮……俺と一緒に居たくてお誘いしてた?」

「っ……ぷいっ」

「姉様、私に散々素直になりなさいとか、恋愛が下手とか言ってましたけど人の事を言えないじゃないですか!」

 

 

俺の指摘に雪蓮はカァッと顔が真っ赤になった。おお、飄々として人懐こい雪蓮にしては珍しくリアクション。蓮華はここぞとばかりに追撃してるな。思いっきりブーメランな気もするが。

 

 

「いやー、しかし雪蓮も蓮華も可愛いね。おじさんニヤニヤしちゃう」

「か、可愛い……」

「〜〜〜っ」

 

 

こうなったら蓮華には一刀を悩殺する衣装を贈ろう。雪蓮は……あの衣装だな。超似合う筈だ。見てみれば蓮華は動揺して雪蓮は顔を真っ赤にしたままプルプル震えてる。あらやだ可愛い。

 

 

「思えば雪蓮がフレンドリー……いや、親しげにしてたのって桂花や詠と一緒に居る時が多かったな。蓮華も積極的に一刀に話しかけてたし。成る程成る程」

「ちょっと、純一!?勘違いしてるでしょ!?私は別に……」

「姉様……もうどれだけ否定しても遅いと思います……」

 

 

雪蓮はまだ否定気味だけど蓮華は意外にも認めたな。飄々としていた姉が意外と恋愛下手で妹がツンデレって。

 

 

「ったく……妹の方が意外と素直じゃないか。ま、あれか……飄々としておきながら本当は恋愛初心者なのを隠す為の照れ隠し……ほぶっ!?あ、柔らか……ぷろぁ!?」

「〜〜〜馬鹿ぁっ!」

「ひゃ……キャァァァァァァァァァァッ!?」

 

 

俺の指摘に顔を真っ赤にした雪蓮の拳が左の頬に叩き込まれた!超痛い!しかも殴り飛ばされた先が丁度、蓮華の居た方向で俺は顔面を蓮華の胸の谷間にへとダイブした。一瞬の間の後、雪蓮から殴られたのとは逆の頬を思いっきりビンタされ、俺の意識は遠のいた。

 

 

 





『君はあの時、ハナゲが出ていたんだ』
げんしけんの主要キャラ斑目晴信の告白。
現代視覚研究部と言うサークルの中心人物である斑目と非オタの春日部咲と日頃から喧嘩じみた口論を繰り広げていたが当人はそれを楽しんでいた。斑目は春日部に惚れていたが、春日部には彼氏(高坂)がいた為に自身の思いを押し殺して長年片思いで過ごしていたが同サークルのメンバーの計らいにより春日部と二人きりの状況にされ、半ば無理矢理告白する事に。
その際に斑目は自身の思い出の一つである『春日部咲が部室で漫画を読んでいた際に鼻毛が出ていた事を指摘しようとして殴られた』と言う事があり、本人の中でそのエピソードが春日部との思い出で一番印象が深かった。その事を思い出しながら「君はあの時、ハナゲが出ていたんだ」と涙ながらに出したその言葉は斑目なりの告白であり、春日部もそれを察して斑目の告白を『高坂がいるから斑目とは付き合えない』と斑目を振る。斑目はこの事でちゃんと失恋をして長年の片思いに決着を付け、春日部は長年に渡り斑目を片思いさせてしまいツラい思いをさせてしまったと涙を流した。


『伊東貴明』
はじめの一歩で鷹村の日本防衛戦での挑戦者。ミドル級日本チャンピオンである上に入場の時から派手なパフォーマンスをする鷹村を完膚なきまでに沈めようと画策していたが逆に左ジャブのみで1R K.O.されてしまった。鷹村に左手だけで倒された事から弱く見られがち。禿頭が特徴的。

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