真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第三百四話

 

 

 

◇◆side馬超◇◆

 

 

私と思春は警備隊の詰め所へと来ていた。私達は元々、三国の交流で魏に来ていたのだから当然と言えるが。

 

 

「それで私に何を聞きたいんだ?今まで三国の交流でも警備隊の詰め所等に来なかったらお前等が警備隊の仕事を学びたいとでも言うのか?」

「聞きたいのは……秋月の事だ。貴様は秋月との付き合いが長いのだろう?」

「私達は敵としてしか秋月を知らない……だから知りたいんだアイツの強さを。どんどん強くなっていくアイツを」

 

 

警備隊の仕事を凄い速さで進める華雄に私と思春は驚いていた。華雄が春蘭と同じく魏の大将軍と呼ばれるだけの事はあると思ってしまう。

董卓軍に居た頃の猪武者と呼ばれた華雄からは想像もつかない姿。それを変えたのが秋月であるなら尚更知りたい。

 

 

「秋月の強さか……寧ろ、アイツは弱いんだがな」

「弱いだと?私や翠を倒し他にも名だたる将を倒してきた奴がが?」

「そうだぞ。武道大会での奴の戦績も凄いもんだったじゃないか!」

 

 

華雄の苦笑いに思春も私も反論する。あんなに強い奴が弱いだなんて。

 

 

「アイツは弱い。強くあろうとしているがアイツの本質は弱者のままだ。弱音は吐くし、逃げもする。強くなろうと特訓すれば逆に怪我をして、女ったらしで半殺しにされる。挙句には部下からも舐められる始末だ」

「いや、惚れた相手じゃないのか?」

「良くもそこまで言えたもんだ」

 

 

目を瞑り語る華雄に私も思春も引いていた。

 

 

「だがアイツは強くあろうとする……だから弱いままでも強くなった。秋月の強さは守る為のものだ。アイツの強さの真骨頂は守るものがあり、その為に戦うからだ。その守る物の範囲が広すぎるのが難点だがな」

「守る為の強さ……だが、それは……我らとて同じ事だ」

 

 

そう……華雄の言葉に思春は反論したが私も同じ気持ちだ。守る為に戦うのは誰だって同じ……桃香様が描いていた『皆が笑って過ごせる世界の為に』

 

 

「ああ、命をかけるのは誰にでも出来る。だが人はいつか気持ちが曲がるか折れる。本人も気づかぬ内にな。アイツはその気持ちは決して折れず、死闘と変わりのない鍛練を決して止めようとしなかった。そして実戦の場でも諦めをしない。わかるか?一生懸命と必死。この二つの差が普通の人と秋月の差だと私は思っている。だから私は……いや、私達はアイツに惚れたと言えるな。なんせ底抜けに優しくて守ってくれるんだ。アイツが本気で人を拒む所を見た事があるか?」

 

 

華雄の言葉に私も思春も「うっ……」と言葉に詰まる。秋月の人なりを見てしまえば、それに勝る説得力が見当たらないから。

 

 

「……奴に惚れると厄介な事になるとだけ言っておくぞ。手遅れかもしれんがな」

「にゃ、にゃにを言ってんだ!?私が秋月にす、す、好きになるなんて……」

「私が奴に惚れるだと?ありえんな」

 

「副長が重傷を負ったぞー!」

「孫策様と孫権様に同時に殴り飛ばされたらしいぞ!」

「何してんだ、あの人!?」

 

 

華雄の発言に反論していた私と思春。思春は違うと言い切ったけど耳が赤くなっていたのは見逃さなかった。そんな事を思っていたら廊下から騒がしい声が聞こえて来た。警備隊の兵達が慌ててるみたいだけど……いや、本当に何をしたんだアイツ!?

 

 

「種馬め……蓮華様と雪蓮様に何をした……切り落としてくれる」

「それをすると三国での戦争が勃発するぞ。大方、失言したか配慮が足らん事をしたかのどちらかだろう。見にいくぞ」

「毎回こんな騒ぎになってんのかよ……よく嫌いにならないな秋月の事……」

 

 

刀を抜こうとした思春を嗜めながら華雄は立ち上がって部屋を出ようとする。私は思った事をそのまま口にしてしまった。

こんな騒ぎを毎回起こしていれば誰かしらに嫌われてしまいそうなものだ。

 

 

「呆れさせはするが……嫌いになれないのは惚れた弱みと言う所かな。全く……厄介なものだ恋って奴は」

 

 

 

苦笑いの様でありながら愛おしそうな華雄の笑みに私も思春も当てらたからなのか顔が熱くなるのを感じる。誰かを好きになるって本当に人を変えてしまうんだなって思ってしまう。そう言えば雛里も好きな男の子の為に魏に移籍したくらいだもんな……私も誰かを……秋月を好きになったら気持ちがわかるのかな……

 

そんな事を思いながら私と思春も秋月の様子を見にいく為に部屋を出た。

 


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