「で俺と一刀を蜀と呉に派遣させる話ってのは?」
「まずは揃って蜀へ行ってもらうわ。呉の方も行って欲しいけど貴方達兄弟が別々に行っても紹介するにも仕事させるにも効率が悪いもの」
「護衛はどうするおつもりか?警備隊から秋月や北郷の護衛を募らせたらほぼ全員が参加を表明しますぞ」
詠の不幸体質の日から数日後、俺は警備隊の訓練をしながら大将と話をしていた。本来ならば玉座の間か、執務室でする様な話なのだが一刀と一緒に来ている辺り気晴らしとサボりって所だな。
因みに俺は華雄と素手の組み手をしている。武器を紛失、または不意を突かれた時の対処としての無手の戦い方を警備隊に教える為の見本として戦っていた。
「警備隊から見込みのありそうな者を何名か選出して、元々蜀へ派遣予定だった将と軍師を何名か同行させるつもりよ」
「ふむ……私も同行したかったが難しそうだな」
「隙あり、北斗千手殺!」
大将との話で悩む素振りを見せた華雄に対して俺は飛び上がり、華雄に奇襲を仕掛けた。
「踏み込みが足りん!」
「がふっ!?」
だが俺の奇襲は速攻で逆襲された。しかもトラウマ台詞付きで。殴り飛ばされた俺はジャギの様に転がった。
「やはりダイナマイトキックにするべきだったか……」
「なんでわざわざやられやすい技をチョイスしてんですか」
「まったく……頼りになるのに、こう言う情けない所を見せられると不安になるわよ」
殴られた箇所を押さえながら起き上がると一刀のツッコミが入り、大将からは有難いお言葉を頂戴した。
「頼りになるってのは意外だな。普段からお小言や種馬だなんだと言われっぱなしだから、もっと評価が低いと思ってたよ」
「貴方達は貴方達が思ってる以上に信用も信頼もされてるって事よ。だからこそ頼もしい姿を見せて欲しいものね」
「……華琳」
俺の発言に大将は仁王立ちして自身の腕を組みながら自信たっぷりにそう言った。
「それに……私と一刀が夫婦になって一緒になるのなら貴方は私の義兄になるじゃない。今でも頼りにはしてるけど、もっと頼りにしたいんだから」
「俺と一刀はそもそも血は繋がってないけど……まあ、天の御使い兄弟や種馬兄弟なんて言われてるから、ある意味今更か」
なんて大将と会話をしていたが一刀は顔が真っ赤になっている。そりゃそうか、大将が大将らしからぬ言い方でハッキリと夫婦と言ったんだから。大将も随分と素直に……いや、桂花や詠が素直になったのを見て我が身を顧みたか?
その空気に当てられて華雄もそうだが他の隊士達も顔を赤くしている。そりゃ自分が使える主人がこんなに可愛けりゃ響くよな。しかも普段はキリッとしてる大将がこの状態な訳だし。
「やれやれ……なら兄として弟や妹の幸せの為にも頑張るとしますか」
オレが立ち上がりながら蜀や呉への遠征を張り切る旨を伝えたら大将は俺の方へと歩み寄り笑みを浮かべた。
「なら、よろしくね。お兄ちゃん♪」
「大将が妹か……悪く無いかもな。それに……いや、だからこそ……」
上目遣いで可愛い仕草の大将。このシチュエーションならば言わねばなるまい。
「俺の妹がこんなに可愛いわ……」
「言わせませんよ」
俺の発言を一刀が遮った。ちっ、後もう少しだったのに。
『北斗千手殺』
北斗の拳でジャギが使用する奥義の一つ。
空中に飛び上がり、残像が出る程の素早い突きを繰り出す奥義。あまりにも早い手刀は千手観音の様になる。
外伝『極悪ノ華』で師であるリュウケンは『ありもしない奥義』とコメントしており、ジャギが寺を飛び出してから五年の放浪期間に編み出した奥義とされている。
我流で編み出した奥義にしては完成度は高く、外伝『極悪ノ華』では百人近い無数の悪党に対して正確に秘孔を突いて全滅させる活躍も見せた。
『踏み込みが足りん!』
スーパーロボット大戦シリーズで敵兵士が『切り払い』をした際に出るセリフ。
スパロボでは剣や斧等の手持ち近接武装を持つ機体とキャラクタースキルで『切り払い』を持っているキャラが揃う事で一定の確率でミサイル等の射撃武器、近接攻撃を無効化する事が出来るスキル。
これは敵側が使用する事も多々あるのだが敵ザコキャラが強すぎて此方のエースパイロットが放った射撃武器を高確率で無効化してくる。
その際に敵ザコキャラである兵士のセリフが『踏み込みが足りん!』となっている。トラウマを植え付けられたプレーヤーも多い筈。
スパロボF &F完結編ではそれが特に顕著に出ており、なんとアムロのニューガンダムのフィンファンネル、グレートマジンガーのグレードブースター、ビルバインのハイパーオーラ斬り、ガンバスターのスーパーイナズマキックですら切り払ってしまう。
『ダイナマイトキック』
ドラゴンボールのキャラ、ミスターサタンの必殺技。
必殺技と言うが様は飛び蹴りであり、威力も一般人目線なら高いと言えるが当然ながらZ戦士やセル相手では技としてすら認識されていない。一部のゲームでは貯めの時間が長く隙が多いが威力が高い技とされている。
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
ライトノベルのタイトルであると同時に作品全体のテーマ。