真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第三百一話

 

「氣雷砲!」

「こんな遅い気弾に当たると思ったか!?」

「女の敵めっ!覚悟しろ!」

 

 

甘寧と馬超に詠との事を見られた直後、俺は身を翻し鍛錬場へとダッシュした。間違いなく話は聞いてもらえない雰囲気だったし、迎え撃つにしてもあの場で戦ったら城への被害が多大な物になると確信したからだ。

まずは落ち着かせる為にも戦わねばならない。

そんな訳で俺は氣雷砲を放ち、甘寧と馬超から距離を取る。当然ながら二人はアッサリと氣雷砲を避けたが、それこそが俺の狙い。

 

 

「破岩激!」

「なっ!?がふっ!?」

「気の爆発の反動で飛んだのか、なんて奴だ!?うひゃあっ!?」

 

 

破岩激とは氣雷砲を自身の背後に放ち、その爆発力でその身を前方に吹き飛ばし体当たりをする技……だけどぶっちゃけ自爆技だよなぁ。ゲームだと自分にダメージはないのだが実際にやると爆発の余波でダメージがデカい上に相手に体当たりをするのだから当然自分にもダメージが。

甘寧に体当たりを叩き込んだ俺は驚愕で動きを止めた馬超に抱き付いた。

 

 

「ば、馬鹿!何すんだよ、このエロエロ魔神!」

「この一瞬で逃げなかったお前の浅はかさを呪うが良い……ジーグブリーカー!」

 

 

俺が抱きついた事を恥ずかしがって身を捩らせるだけの馬超。だが、その状態では逃げられまい。俺は馬超にジーグブリーカーを極める。馬超の肋がバキボキ鳴る音がしたが折れてはいないだろう。馬超はひとしきりジーグブリーカーをした所でクタッと気を失ってしまった。

俺としては馬超の柔らかい体を抱きしめ、更に顔が胸の位置にあった事を堪能したので色々と満足した。非常事態だったから仕方ないよネ。不可抗力だったんだからネ。

 

 

「さて、事情説明したいが……話、聞いてくれる?」

「詠を襲い、翠にあんな真似をしておきながら言い訳か貴様」

 

 

馬超を行動不能に追い込んだ俺は破岩激のダメージから回復した甘寧に話し掛けるが思いっきり睨まれている。なんか先程よりも殺気が濃くなっているのは気のせいではあるまい。

 

 

「そう言われても仕方ないけど……詠の体質の事は甘寧も聞いただろ?だからこそ詠の側に居てやりたかったんだが」

「………仮に私が詠の不幸体質とやらだったら蓮華様は遠ざけるだろう。当然の話だが敬愛し忠誠を誓った主君に不幸が降り注ぐのなら嫌われたとしても距離を開けるだろう。そう考えれば詠が貴様を遠ざけようとしたのは理解が出来る」

 

 

つまり詠は不幸体質の被害に俺を巻き込みたくなかったって事か……いや、甘寧と馬超を同時に相手取る事になった事を考えれば十分に不幸が降り注いだとは思えるが。

 

 

「そうなるとやっぱ離れた方が良いんだろうなぁ……でも、あの拒み方は気になるし」

「確かに随分と必死だったな。聞いた話では詠の不幸は人死が出る程のものではないと聞くが……」

 

 

うーん、と甘寧と二人で頭を悩ませる。俺を不幸体質に巻き込みたくないのは分かったけど、あそこまで必死に拒まれると逆に気になってしょうがない。

 

 

「その事を含めてやっぱ問い詰めるしかないか。甘寧、悪いけど馬超の事を頼む」

「ああ、それと……すまなかったな。あの光景を見せられたら冷静ではいられなかった」

 

 

俺が再び、詠の下へと行こうとしたら甘寧から謝罪を受けた。まだツンツンしてるけど少しは心を開いてくれているらしい。俺は気にすんな、と声をかけてから詠の所へと急いだ。おっと、アレを忘れずに下準備をしてから行かないと。

 

 

「と、言う訳だ。観念してもらおうか?」

「何処まで用意周到なのよ……」

 

 

そんな訳で俺は詠の居場所を突き止めた。突き止めたと言う程でもなく詠はやはり自室に篭りっきりだったので大将に話を通してから着替えや食事の準備を全て整えて詠の部屋へと突入した。因みに部屋の扉には鍵が当然掛かっていたので窓から侵入した。大将に話を通したのはこの事である。じゃないと春蘭か華雄辺りが詠の悲鳴を聞いた瞬間に突撃してきそうだったし。

 

 

「これで詠に逃げ場は無い。着替えや食事の準備も廊下に置いておいたから時間は気にしなくても良いぞ……さ、俺を拒む理由を聞こうか?詠が話してくれるまで今回は雛れないぞ……っと?」

「怪我……増えてるじゃない。だから嫌だったのよ」

 

 

俺が悪人顔で詠を脅そうと思ったのだが詠は意外にも素直に話し始め……いや、泣きながら俺の頬に手を添えて震えていた。

 

 

「僕の不幸体質が影響して普段から怪我をするアンタを更に怪我させるんじゃないかって……心配したの。ううん、それだけじゃない。もしも……もしも僕の不幸体質が影響して、またアンタがこの国から天の国に帰っちゃう事態になんかなったら……」

「詠、落ち着け…‥俺は此処に居る。ちゃんと詠を抱きしめてるだろ?」

 

 

詠は一気に捲し立てる様に話し始めた。多分、不安がオーバーフローしてたんだな。ガタガタと震えながら教えてくれた事に納得してしまった自分もいる訳だし。

詠の不幸体質は確かに周囲に不幸を降り注がせる。その不幸が俺を再び、天の国へと送還させないかが不安だったのだろう。

何故ならば詠の不幸体質は』周囲に不幸を降り注がせる』『人死は出ない』つまり、この二つの条件なら『秋月純一が死なずに天の国に送還される』が成立してしまう可能性があるのだ。

 

 

「でも詠の不幸体質は自分自身には来ないんだろ?詠は俺が居なくなる事は不幸とは思ってくれて無いのか?」

「そんな訳ないじゃない!でも、この事に関しては安心出来ないのよ!僕の不幸体質は僕自身にもどうにも出来ない事でアンタは天の御使いなんて眉唾な存在!そんな理解の外の事が重なったらどうなるかなんて……わからないじゃない……」

 

 

俺の一言に詠は涙を流しながら訴え始めた。こんな不安を独りで抱えていたのか。

 

 

「だから僕は不幸体質が始まってからアンタを避けた……じゃないと不安で押し潰され……んっ!?」

 

 

不安そうな詠の唇を俺は塞いだ。

 

 

「ん、んーっ!?ちゅ……ぷはっ!いきなり何すんのよ、馬鹿!種馬!」

「詠が不安そうだったか落ち着かせようと思って……んで、俺なりに考えた訳よ」

 

 

キスから解放された詠は手近にあった枕で俺を殴打したがダメージは無いので、そのまま説明を続ける事に。

 

 

「詠の不幸体質って月には効果がないんだろ?」

「え、うん……なんでかは分からないけど」

 

 

俺の問い掛けに詠はキョトンとした顔で答える。

 

 

「それってさ、詠にとって一番大事な親友が月だからじゃないかなって思ってさ。唯一無二の親友だから詠の不幸体質の影響が出なかった。絆とか縁的なので」

「僕も……そうだとは思うけど……だったらアンタや他の皆は……」

 

 

俺の説明に少し納得した様子の詠。話も肝は此処からだ。

 

 

「だから詠との絆や縁が深まれば不幸体質の影響は受けないんじゃないかと思って」

「今まで散々肌を重ねた僕に言うのそれ?色々と影響出ちゃってるのに」

 

 

俺の発言に眉を顰めながら自身の胸を揉む詠。そういや前に胸のサイズが大きくなったって言ってっけ。この話を聞いた桂花から怒られたけど。それは兎も角……

 

 

「もっとあるだろ?男女の間で絆や縁の象徴が」

「そ、それって……」

 

 

俺の意図を察した詠の顔は一瞬で真っ赤になっていき……この後、俺と詠は濃厚な一晩を過ごした。

散々ハッスルした後、詠は疲労からかスヤスヤと俺の寝台で一緒に寝ている。その顔は幸せそうで手は腹の辺りに愛おしげに添えられていた。

 





『氣雷砲』
『餓狼伝説』シリーズのキャラ、チン・シンザンの必殺技。
気弾を放物線を描きながら放り投げる技。

『破岩激』
同上。氣雷砲を自身の背後に放ち、その爆発の勢いで回転しながら相手に突撃する技。


『ジーグブリーカー』
鋼鉄ジーグの必殺技の一つ。ジーグから放たれる磁力と腕力に物を言わせたベアハッグ(鯖折り)。威力は絶大で抱きついた相手の胴体を真っ二つにする破壊力がある。
また技の掛け声も「ジーグブリーカー!死ねぇ!!」等インパクトがデカい。

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