真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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スランプと暑さにヤラれてました。


第三百話

 

「不幸を溜める体質?」

「うむ……詠は昔から不幸を日々体に溜め込む体質だったんだ。そして月に一度その溜め込んだ不幸を放出する日があったのだ」

「董卓軍の頃は毎度の行事やったんやで。詠本人に不幸は降りかからんけど周囲に被害が出るんや。今回みたいに……」

 

 

会議室から倒れた将や文官を運び出した後、華雄と霞から話を聞くと詠が不幸を溜め込む不幸体質である事を教えられた。

いや、不幸を溜め込んで放出って……

 

 

「初めて聞いたぞ詠の不幸体質なんて。少なくとも俺が月や詠と出会ってから一度もそんな事なかったし」

「そやねん。だからウチ等も忘れてたくらいや」

「久々だから今回の不幸の規模が分からん。詠の不幸体質が発動した日は詠に近寄らないのが吉だ。下手に近寄ると巻き込まれるぞ」

 

 

前にこの世界に来た時に不幸の日は知らなかったし、聞いた事もなかった。今回は久しぶりの不幸な日って事か……

 

 

「あれ、そう言えば当人の詠は?それに月も」

「詠なら部屋に戻ったで。董卓軍の頃も不幸の日は部屋に引き篭もって嵐が過ぎ去るのを待ってたんや。月っちは詠の身の回りの事をしてるで。何でかは知らんけど何故か月っちには不幸が降りかからんのや」

 

 

月が大好きな詠らしいな。月にだけは被害が出ないとか。しかし、そうなると詠は今一人きりって事か。

 

 

「うむ……だが、詠が」

「被害を出さない為とは言っても一人で居るのは寂しいだろうな。少し様子を見に行ってくるか」

「ほな、頼むわ。ウチ等は詠の仕事の肩代わりを探すさかい」

 

 

華雄が何かを言い掛けたが俺は詠の事が気になったので見に行く事に。つうか、霞は肩代わりをするんじゃなくて肩代わりを探すのかよ。

 

 

「詠の事を頼もうと思うとったけど頼むまでもなかったなぁ」

「うむ、流石は私が惚れた男だ」

 

 

部屋を出る時に霞と華雄の会話が聞こえた。種馬だなんだと言われている俺であるが気遣いは我ながら出来る方だとは思う。そんな気遣いの出来る副長は詠の様子を見に行くとしよう。さっき霞や華雄の説明からすると今一人で過去の事もあって寂しがってるかもしれないからな。

 

 

「おーい、詠。事情は聞いただけと少し様子を見に……ぶっ!?」

「アンタは来るな馬鹿!」

 

 

詠の部屋をノックしてから入ったら何故か本を投げつけられて追い返されました。なんでやねん。

 

 

「詠ちゃーん?俺、心配で来たのよ?」

「僕は大丈夫だから来ないでよ!」

 

 

再び部屋に入ろうとしたら扉を向こう側から押さえつけてるのか開かないように抵抗してるみたいだ。力づくで開けようと思えば開けられるけど、どうしたもんかな。

 

 

「お願いだから……アンタは来ないで……」

 

 

詠の泣きそうな声が聞こえて離れた方が良いんだろうと思ったけど止めた。離れたら本当に詠が泣きそうだから。

俺は詠の部屋の扉の側に腰を下ろした。さて、面倒なお姫様が出てくるまで待ちますか。

暫くボーっと詠の部屋の前でしていると忙しそうにしている文官や侍女を眺めている。正確には詠の部屋の前を迂回していく人達を遠巻きに見ているが正しいか。元董卓軍の連中から話は伝わっているんだろうし、朝の惨事を知っている者なら、ある意味当然か。

 

どうしよっかなぁ。暇なのもあるけどタバコ吸いたくなってきちゃった。

 

 

「来ないで……って言ったのに何で居るのよ」

「さっきも言ったろ。心配だったんだよ」

 

 

暫く経過した頃、詠の部屋の扉が開いたかと思えば泣きそうな顔の詠が立ちすくんで……いや、泣いたな。泣いたような跡が残ってる。俺は立ち上がりながら詠の瞳の端に溜まっていた涙を指で拭う。

 

 

「好きな娘が泣いてるのに離れるなんて出来る訳ないだろ」

「駄目……離れて……」

 

 

俺の手を払い除けて詠は俺から距離を取ろうとする。なんかこの感じも久しぶりな気がする。桂花もそうだったけどツンツン状態のコイツ等は対応が大変なんだよなぁ。

 

 

「詠。不幸体質の事は聞いたけど俺は大丈夫だ。少々の不幸なら慣れてるしちょっとの負傷で俺が怯むかよ」

「やなの!僕から離れて!アンタが僕から離れないなら僕から離れるから近付かないで!」

 

 

詠を説得しようとしたのだが詠からは拒絶された。しかも逃げようとしたので詠の手を掴んで阻止をして詠を壁に押し付けて逃げられない様にする。

 

 

「詠、なんでそこまで拒むんだ」

「や、駄目!離して!」

 

 

イヤイヤと駄々っ子の様に首を振りながら俺の拘束から逃れようとする詠。俺も詠から話を聞きたいから詠の手首を掴んで逃げられないようにして詠の背を壁に押し付けている。

 

 

「やなの……やなのよ……僕の所為でアンタが……」

「「………」」

「待とうかキミ達」

 

 

詠が涙を流しながら何かを俺に訴えようとしていたのだが俺と詠の近くを通りがかった甘寧と馬超。

ここで確認だが俺と詠の体勢は俺が詠の両手の手首を押さえ付けて壁際に押し付けている。側から見れば俺が詠に無理矢理、迫っている様にしか見えないだろう。

二人は唖然とした表情の直後、無表情で何処から取り出したのかそれぞれの武器を構えた。

 

 

詠の不幸体質の影響なのか蜀と呉の将軍を相手取る事になった俺。これも不幸体質の影響なのだろうか。

いつもの事とは思いたくないなぁ……

 

 

 

 


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