◆◇side桂花◆◇
ど、どういう事なの?……秋月を部屋で待ってたら、いつの間にか寝ちゃったみたいなんだけど目が覚めたら秋月が私を抱きしめながら寝ていた。
そりゃ、ちょっと寂しいとか思ってたけどこんな情熱的に抱きしめて……って、私まだお風呂に入る前に寝ちゃったから汗を落としてないんだけどっ!?
この状況は嬉しいけど、せめてお風呂に入ってから……って私は何を想像して……
「ん……あ、起きたのか桂花」
「あ、うん……じゃなくて、なんで私を抱きしめて寝……きゃっ!?」
混乱している私に秋月は愛おしいそうにギュッて私を抱きしめてくれる。え、ちょっと待って!?秋月に愛されてる自覚はあったけど、こんなに甘やかす様な抱擁に驚いてしまう。優しいのに力強い抱擁に私は抜け出せなくなってしまう。
「随分、寂しい思いをさせてしまったみたいだからな。全力で甘やかす事にした。異論は認めない」
「ば、馬鹿……何を言って、ひゃあっ!?」
甘く囁く秋月に私は動揺してしまう。秋月は私のお尻を触りながら耳元で私を甘やかす宣言をした。ヤバい……心臓の音が鳴り響いて煩い。羞恥と期待で私の頭がグルグルと思考が纏まらない。
「後で大将に正式に休みの申請はするが……今日明日は確実に休みは貰う。食事は俺が用意するし、甲斐甲斐しく世話を焼くと決めた。甘やかしてやるから覚悟しろ」
「何よ、その脅し文句は!?」
妙に格好つけた顔で喋る秋月。私が離れようとすると秋月は離さないと言わんばかりに力を入れ始めた。
「悪いが、この一件については譲る気はない。泣いても喚いても甘やかしてやる」
「恥ずかしいだけよ馬鹿!」
秋月に甘々にされる未来を想像して私は顔が熱くなっていく。秋月は優しいから、甘やかしてくれるとなれば私の想像もつかない様な事を仕出かしそうだから……ヤバい、この展開はヤバい気がする。
「そ、それに私まだ……お風呂にも入ってないから……」
「気にするな。なんなら、一緒に風呂に行くか?」
私が恥ずかしそうにしていると秋月は私を抱き上げながら、お風呂に連れて行こうとする。ちょっと待って!このまま行く気なの!?城内だから色んな人に見られちゃうじゃない!
「恥ずかしいでしょ、この馬鹿!女心を察しなさいよ!こんな運ばれて方も恥ずかしいし、一緒にお風呂に行くのも恥ずかしいでしょ!」
「暴れるなよ、虐めたくなるじゃないか」
私が暴れても秋月はビクともしない。改めて秋月の逞しさに驚いてしまうが、今はそれどころじゃない。
「紳士的になりなさいよ、馬鹿!」
「散々種馬呼ばわりしていたんだから今更だろ」
秋月は私を離さない。そのまま部屋を出ると広場へと歩みを進めていく。すれ違う人達が何事かと見てくるが何故か、納得した様な表情になっていた。ちょっと待って周りには周知の事実になってるの!?
「あ、何してるんですか純一さん。華琳が仕事を頼みたいと言ってましたよ」
「一刀、俺と桂花は今日明日と仕事を受けないから大将にはそう伝えておいてくれ。まあ、その翌日も足腰が立たなくなってる可能性は高いが」
風呂場への道中で行き交う人達の中で北郷ともすれ違う。北郷は華琳様からの依頼もあった様だが、秋月はすれ違い様に今日明日は仕事を休むと告げ、更に翌日も休むと堂々と宣言した。それを察した北郷は若干顔を赤くして……そして私もその意味を理解した。それってつまり……
「いやぁぁぁぁぁ、ケダモノ!」
「その通り、惚れた女の前じゃ欲望に塗れた一匹の雄だ」
私が本気で抵抗しても、秋月は動じなかった。それどころか誇らしげに語る。
「それっぽい事を言えば許されると思うんじゃないわよ、馬鹿!」
「アッハッハ。覚悟しろよ、子猫ちゃん」
私がポカポカと叩いても秋月は笑い飛ばしていた。なんで、そんなに私を甘やかそうとするのよ!嬉しいけど、アンタに過度に甘やかされると抜け出せなくなりそうで怖いのよ!
前回の事もあり、全力で甘やかす系主人公になりました。