真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百六十九話

 

俺の前に華雄が一歩前に出る。

 

 

「では、これより北郷警備隊・喧嘩解禁日を開催する!」

「「はっ!」」

 

 

華雄の叫びに若手兵士達は統率の取れた返事をした。華雄には従ってるんだな。そんな風に思ってたら華雄が俺の隣に立っていた。

 

 

「副長と喧嘩したい者は順次、前へ出ろ!順番は事前に決めている筈だ!」

「先ずは自分が……出させてもらいます」

「おう、やるか」

 

 

華雄の一言に若手兵士から一人前に出た。見覚えがあるな、前に飯屋での、いざこざで俺に噛み付いて来た奴だ。若いな……まだ二十歳にも満たない感じか。14歳くらいか?大河と歳は同じくらいか。

 

 

「自分は以前の戦争では子供で参戦はしていませんでした。今回は副長の胸をお借りしたく……」

「形だけの敬意なんざ、意味がないだろ。それと今は礼も不用だ。これから喧嘩すんのに礼もクソもないだろ」

 

 

頭を下げようとした若手の行動を止める。口上の割に目は語ってるよ、『お前が気に食わない』ってね。ならば、とことんやってやろうじゃないの。

 

 

「華雄、ありがとう。後は俺が懸念してる方に専念してくれ」

「ああ、だが……お前に危機が迫ったら止めるからな」

 

 

俺が華雄を下がる様に言うと華雄は怪訝そうな表情になる。おいおい、俺が負けるかっての。

 

 

「心配すんな。それに新技の精度を試すにも相手が欲しかった所だ」

「だから心配なんだ。お前が並大抵の奴に負けるとは思わんが、その新技で負傷する確率の方が高いんだから……兎に角、気を付けてくれ」

 

 

俺の一言に華雄は溜め息を溢して、呆れた表情で離れていく。信用されていても心配されるって複雑だなぁ。ま……そんな風に心配させ続けたのも俺か。

 

 

「待たせたな……さ、やろうか」

「やっぱり……自分は……俺はアンタが気に食わない!」

 

 

俺が構えると若手は俺に突っ込んできた。放たれた拳を受け流しながら足を払う。一瞬浮いた体を膝で仰向けにさせて腹に膝を叩きこむ。腹に一撃を貰い、地面に叩き付けられた若手は咳き込みながら動かない。

 

 

「なっ……一瞬で!?」

「アイツは若いが強さで言えば警備隊でも強い部類なんだぞ!?」

 

 

周りがザワザワと動揺し始めている。成る程、若手のホープなんだなコイツは。華雄は……壁際で腕を組んで観戦してる。側には斧があるからトラブルの時は対処してくれそうだな。

 

 

「ぐ……まだ、だ……」

「一応、言っといてやるか。戦場で立ち上がるなら直ぐに立ち上がれないなら不意打ちも視野に入れておけ。じゃないと、隙だらけだからな」

 

 

フラつきながら立ち上がろうとする若手に蹴りを見舞って意識を奪う。やれやれ、新技を試す事も出来なかったな。

 

 

「気絶したな。よし、次の奴、来いよ」

「な、舐めやがって!」

「油断してた奴と一緒にするな!」

 

 

俺の一言に若手連中はキレ気味……いや、キレたな。その内の1人が襲いかかって来た。

 

 

「よっと……甘い!」

「げぼっ!?」

 

 

放たれた蹴りを避けながらカウンターで肘を顔面に叩き込む。更にのけぞった体の背中に手を添えてから勢いを付けて半回転させながら投げ飛ばす。すると同時に他の若手が迫って来ていたのでバックステップで距離を空けてから気を掌に込める。

 

 

「一人ずつって言っただろうが!守れない奴にはオシオキの…… 飛翔拳!」

「げはっ!?」

「ぶふっ!?」

 

 

両掌から気を放ち、一人ずつ吹っ飛ばす。よし、単純な技なら成功率が上がってるな。流石、俺。

 

 

「ふざけるな!」

「今更、帰ってきて副長面すんな!」

「そうだ!平和を守って来たのは俺達なんだ!」

 

 

何人かを倒した段階で他の残った若手兵士達は俺を取り囲む様に立っている。目が血走り、今にも俺を殺さんばかりの感じだ。

 

 

「そうだな。俺と一刀は魏の一員として大陸の平和に手を貸した。だが、その後の平和ん守って来たのは、お前達だ。その誇りを持つ事は良い事だ。その辺りは謝罪と感謝をする……だがな」

 

 

コイツ等、若手の言い分は尤もだ。俺と一刀は重要な時に居なかった。平和の維持にコイツ等が尽力したのも一理ある……けどな。俺は全身に気を溜め始める。

 

 

「俺と一刀を馬鹿にして……舐めた態度を取って……華雄や凪達の悲しむ顔を見たか?魏に帰って来た時に凪の表情が優れなかったのも……街の人達の活気が薄いのも……お前達が傲慢な態度を取り続けたからだ。お前達は平和を守っていたかも知れないが……笑顔は守れなかったみたいだな」

 

 

俺は俺で怒りを感じていた。あの時から魏に不在だった俺や一刀が言うべき事じゃないのも……八つ当たりだってのも理解はしてる。だが、コイツ等が俺達に不満を持った様に俺達もコイツ等に不満がある。その為に今回の喧嘩解禁日まで企画したってのにルールを破るわ、負けは認めないわで……俺のストレスゲージもMAXだ。ゲージがMAXになったならば、この技しかあるまい!

 

 

「喰らえ、新必殺……ギガクラッシュ!」

 

 

俺は全身に込めた気を更に高める。俺をリンチしようと取り囲んだのが災いしたな。この技は取り囲まれた時に効果的な技なのだ。

俺は両手を広げ、全身の力が抜ける感覚に襲われながら全身に込めた気を爆発させた。

 

 




『飛翔拳』
餓狼伝説シリーズのキャラ『アンディ・ボガード』の必殺技。
掌から気弾を打ち出す飛び道具。シリーズの度に技の効果が微妙に違う。


『ギガクラッシュ』
ロックマンx2でボディパーツを会得すると特殊技『ギガクラッシュ』が使用可能になる。効果は画面内の雑魚を一掃する全体攻撃。

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