真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二十六話

五右衛門風呂作成の次の日。

俺は朝から新技開発の失敗をやらかした。今回は気の消費を押さえてかめはめ波を放つ練習をして居たのだが上手くいかなかった。気を押さえようとした結果、かめはめ波の出が悪くなった。気の塊が掌を越えるサイズで出たかと思えば細いビームみたいのが飛び出してきた。正直情けなくて泣きそうになる。さながらリーダー波みたいな感じだったから。

 

俺は情けない結果に終わった朝の鍛練を止めると荀彧からの呼び出しで仕事となった。

荀彧に呼ばれて北郷警備隊の全員が荀彧の護衛に付く事になった。何故かと荀彧に聞いたが『黙って着いてこい』と言われたのと、大将からも護衛の件は正式に頼まれていたので、それ以上は何も言えない。

何をするかも知らされないまま俺達は街の郊外にある森まで来ていた。因みに今回この森の散策に来ているのは俺、一刀、荀彧、凪、真桜、沙和の五名だ。

 

 

「なぁ、桂花ぁ。そろそろ教えてーな。今回ウチ等は何するんよ?」

「今回の任務は……怪しい人影を頻繁に目撃するという報告があった森の調査よ。アナタ達には実際の調査と、もし怪しい人影を発見した時の対処をしてもらうわ」

 

 

そういや街の人達の噂もあったな。森に怪しげな影を見たとか。明らかに小動物の影では無かったので噂になっていたな。もしかして……

 

 

「怪しげな人影……黄巾の連中か?」

「それってー、沙和達が用心棒ってこと?」

「えぇ。私も痕跡についての調査を行うから、もし何かあったら私に知らせてちょうだい」

 

 

俺と沙和の言葉に荀彧も頷く。なるほど痕跡調査となると俺達では無理だから荀彧が来た訳か。だったら早めに言ってくれても良いだろうに。

 

 

「わかりました。桂花様の警護は私達にお任せください」

「頼りにしているわ」

 

 

凪は任務となり、真面目な対応だ。是非とも真桜や沙和にも見習ってもらいたい。

 

 

「しかし……怪しい人影か……」

「ま、この手の話はとにかく地味な調査が必要になるな」

 

 

一刀の言葉に俺は反応する。そうあくまで噂話から出た目撃情報なのだ。確実に証拠が出てくる訳じゃなく、ひたすらに調査のみを行い、何かしらの情報を持ち帰る。その為には兎に角、探し回るしかない。刑事ドラマとかで見た知識でもあるが、時間を掛けつつ詳細を探らねばならないのだ。

 

 

「…………」

「ん、おい桂花?どこに行くんだ?一人じゃ危ないぞ」

 

 

そんな中、荀彧は護衛の俺達を置いて何処かに行こうとする。慌てて一刀が呼び止めるが荀彧はギロリと此方を睨むと更に離れようとした。

 

 

「荀彧、何か見つけ……」

「隊長、副長。私が行きますから」

 

 

俺も声を掛けようとしたのだが凪が俺を追い越して荀彧の護衛に行く。あ、なるほど……

 

 

「そうだな。俺や一刀じゃ行けないから凪に任せる。何かあったら大声を出すんだぞ」

「了解です。桂花様、私が一緒に……」

 

 

意図を察した俺が凪に指示を出す。荀彧からは睨まれたけど察して口にしなかったんだからまだ良い方だろ。まあ、女の子が大人数で来ている時に離れるとしたら理由は一つだろう。

俺は手頃な岩に腰を下ろすと煙管に火を灯した。

 

 

「副長、桂花が何をしたかったか気付いたんは驚いたわ」

「ふくちょーに女心が分かるとは意外なのー」

「あ、そう言う事か……危なく桂花に問い詰める所だった」

 

 

真桜、沙和、一刀の順に俺に話しかけてきた。一刀、もしも口に出していたら大将のオシオキ確定だぞ?

 

 

「大人になるとな……女性関係には特に気ぃ使うんだよ。まして気難しい相手なら尚更な」

 

 

フゥーと紫煙を眺めながら俺は呟く。なんか昨日といい『アイツ』の事を思い出すな……もう終わった関係なのに。

 

 

「副長……昨日も気になったんやけど……」

「「キャアアアアアアアァァァァァァァァッ!!」」

 

 

真桜が俺に何かを聞こうとした時だった。荀彧と凪の悲鳴が森に響き渡った。まさか黄巾の連中が出たのか!

 

 

「行くぞ!」

「「「はいっ!」」」

 

 

俺の言葉に一刀達は直ぐ様気持ちを切り替えて悲鳴が聞こえた方へと走った。そして、そこで見た光景とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤァ!蛇ぃぃぃぃぃぃぃっ!」

「や、やめて……来ないで!」

 

 

数匹の蛇に迫られて腰を抜かしてる荀彧と凪。二人は抱き合う様に身を寄せていた。

 

 

「………凪よ。護衛がそれでどうする?」

「わ、私……蛇だけは苦手なんです!」

「い、いい……いいから助けてよ!」

 

 

俺の言葉に凪は震えた声で答えて、荀彧は涙目だ。二人とも蛇苦手だったんだな。

 

 

「ったく……」

 

 

俺はそこらの枝を拾うと蛇の回りを威嚇する様に叩く。蛇は直接叩いたりすると、怒って反撃してくるので、追いやる感じでヘビの周りを叩けば、その場からはいなくなるとテレビでやっていた。俺に威嚇された蛇は驚いたのか、その場から去っていく。

 

 

「……やれやれ」

 

 

俺は溜め息と共に枝を肩に担ぐ。隣を見れば一刀が凪に駆け寄っていた。

 

 

「ほら、凪。もう大丈夫だから」

「す、すみません隊長」

 

 

凪は一刀の胸に抱かれる形で体を預けてる。もしかして腰が抜けたか?いつもは凛々しい凪も蛇でこうなるのか。真桜と沙和は冷やかしの視線を送ってる。

 

 

「大丈夫だったか荀彧?」

「ふ、ふん……アンタも少しは役に立つみたいね」

 

 

俺が話しかけると荀彧は俺に刺のある言葉を返してきた。でも、いつもの感じよりも元気が……あ、もしかして。

 

 

「荀彧も腰が抜けたか?」

「~~~~~~~っ!」

 

 

俺の予想が当たったのか荀彧は声にならない声を上げて顔を赤くした。あ、やべ可愛いとか思っちまった。

 

 

「腰が抜けたなら意地を張るなよな、まったく」

「ち、ちょっと触らないでよ汚れる!」

 

 

俺が荀彧を横抱きに。所謂『お姫様』だっこをすると荀彧は案の定、暴れ始めた。こらこら暴れるんじゃない。

 

 

「そのままじゃ帰れないだろ?少しの間だけ我慢……危ねぇ!」

「え、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

暴れる荀彧を宥めようとした俺だが視界の隅に『怪しい人影』を見つけてしまった。ヤバイと判断した俺は乱暴だったが荀彧を真桜と沙和の方に投げた。

 

 

「ちょっといくら何でも乱……暴……」

「副長、桂花の態度も悪かった……」

「ふくちょー、女の子はもっと………」

 

 

 

荀彧、真桜、沙和の三人は俺に抗議しようとした途中で声を失った。そう……確かに怪しい人影は確かにあったのだ。だが『怪しい人影』は間違いであり、正しくは『怪しい巨大な人影』

もっと正しく言うなら『人影』では無かった。

 

俺達の目の前には……三メートル程の巨大な熊が居て、俺達を見下ろしているのだ。額の妙な模様は三日月の様にも見え、その鋭い口からは涎を垂らして如何にも『エサ、ミツケタ』って感じを出していた。




『リーダー波』
世紀末リーダー伝たけしの主人公たけしの必殺技の一つ。
リーダー的な気を溜める事によって出せる気功波。かめはめ波の様な構えからデカイ気の塊が出るが前に進むのは三センチ程の細いビーム。何故か曜日で火・木・土しか使用できない。

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