真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百五十五話

 

 

 

めちゃくちゃ気まずい……新技のハリケーンアッパーを放ったは良いが威力が低くてスカートを捲る風しか起きなかった。しかもこの場に居た女の子達のスカート丈が短かったから簡単に風に捲られてしまった。年頃の娘がそんな短いのを履くなと叱るべきか?やらかした俺が言うなって感じなのだろうか。

 

 

「「お帰りなさいませ、副長!素晴らしい技の出来映えです!!」」

「アッハッハッ、欲望に素直な連中め」

 

 

すると見知った顔の兵士達が俺に頭を垂れた。顔が緩んでる辺り、バッチリとスカートの中身を見たなコイツ等。

 

 

「死ねぃ!」

「危なっ!」

「え、斬る程の事なんですか!?」

 

 

即座に飛んできた春蘭の斬撃を体をのけ反らして避ける。俺か一刀がやらかして斬られるのが日常だったから、それを知らなかった劉備は驚いていた。

 

 

「なんて破廉恥な事をするんだ貴様!」

「やっぱ、あの時に刺しておくべきだった」

「「「ぷ、く……アハハハハハハハハハハハハッ!!」」」

 

 

孫権と馬超が武器を片手に俺に詰め寄る。だが、それと同時に魏の将や兵士達、観客の民衆が大笑いを始めた。それに釣られて俺も笑ってしまう。

 

 

「副長が帰って来て早々にこれだよ!」

「もう、純一さんったら!」

「副長さんらしいや」

「こんなに笑ったのどれくらいぶりだろう」

「副長、アンタくらいだよ、こんな事が出来るのは!」

 

 

周囲が笑い始めた事で蜀や呉の将は戸惑っていた。

 

 

「やれやれ、秋月が帰った途端にこれか。これでは北郷が帰ってきたら収拾がつかなくなるかもな」

「大将が一刀を離してくれたらな。下手したら今日一日は独占するかも知れんぞ」

 

 

秋蘭の発言に言葉を重ねる。大将の場合、それが洒落になら無いからな。

 

 

「さて……聞いてくれ。俺と一刀は四年前に何も言わずに国を去る事になってしまった。だが、俺も一刀もこの国に帰って来たくて四年間……この国に帰る努力を重ねた。四年前に勝手に去った事も含めて図々しいとは思うが……またこの国に戻る事を許してくれるか?」

 

 

俺の発言にザワザワとし始める。まあ、消えた人間がいきなり復帰宣言すれば当然か。

 

 

「いきなり過ぎひん?それにウチ等が何言うたかて、決めるのは華琳やで」

「ですよねー。風達が嘆願したとしても華琳様がお認めにならなければ無理でしょうし」

「それに其処の奴の事も含めて無理難題だと言う自覚を持つべきだろう」

 

 

霞、風、春蘭の順にコメントが出る。最後に春蘭が剣で美羽を示す。美羽は怯えて荀緄さんの背後に隠れてしまう。

 

 

「大将の事は一刀に任せるさ。俺は隊長が動きやすいように先回りで動くのが副長の務めだろう」

「それって一番の面倒事を隊長に任せて、副長が他の根回しをしてる感じなのー」

 

 

俺の発言に沙和が答えた。流石一刀の直属。理解が早いじゃないか。

 

 

「アンタ達が帰ってくるのは三国にとっても良い事だとは思うわ。でも、それで私が……あの時、悲しい思いをさせられた私達が納得出来ると思う?」

「………返す言葉も無いな」

 

 

桂花が俺の事を睨みながら告げる。桂花の言葉に頷く数名の魏の武将達。

 

 

「これから返していきたい……と思ってはいるんだがな」

「それで良いではないか」

 

 

俺が必死に絞り出した言葉に背後から抱き締められる。あ、超柔らかい物が背中に押し付けられている。この声は……

 

 

「さ、祭さん……」

「久しいの秋月。まったく……小賢しくワシを生かした小僧が居なくなって寂しかったぞ」

 

 

俺が振り返ると予想通り、祭さんだった。祭さんは俺の頭を撫でながら腰に手を回してくる。ちょっと待って、それをやるのは普通は男側じゃない?なんで俺がされる側になっているのだろう?

 

 

「ちょっと!何してるのよ!」

「そんな風に言うたら副長は調子に乗るで!」

 

 

詠と真桜が祭さんの行動に意を唱える。真桜は付き合いが長いだけに反論の仕方も慣れたもんだな。

 

 

「主等は先程から秋月ばかりを責めておるが、それは秋月ばかりに責がある訳じゃなかろう。華琳の話では北郷と秋月が天の国に帰ったのは天の意思。どうにもならなかったと聞いておったのじゃがな」

「大将はそんな風に言っていたのか」

 

 

祭さんの説明に俺は少し驚いた。それと同時に大将がその説明をして居たからこそ秋蘭とかは先程からあまり俺を責める様な発言が無かったのか?

 

 

「確かに残された者達は悲しいじゃろうが、己を慕う者達を残して逝かねばならぬ者達も悲しかったじゃろう。それは御遣いだろうとなんだろうと変わらぬと……ワシは思うがな」

「それは……」

 

 

祭さんの発言にその場の全員が言葉を繋げなくなってしまう。見回すと荀緄さんや黄忠さんや厳顔さんが頷いていた。ああ、大人組はそんな風に思ってくれていたのか。

 

 

「そうね……残された娘達は悲しいし寂しかったとは思うけど、貴方や御遣いの弟さんも悲しかったんでしょう」

「こればかりは大人も子供も関係無かろう」

「あ、あの……ちょっと……」

 

 

感動していたのだが黄忠さんや厳顔さんは俺の頭を撫で始める。祭さんは俺を抱き締めていて、荀緄さんは俺の惨状に「あらあらー」とにこやかに笑みを浮かべていた。

 

 

「つまり……残された私達は寂しかったけど秋月達も同様だったと言いたいんですか?」

「寧ろ、私達は家族や仲間が居たから悲しさも分け合う事も出来ました。でも、彼等は違う……天の国には共に戦った仲間も愛した者達も居ない……私達よりも辛かったのでは無いかしら?」

 

 

桂花の言葉に荀緄さんは諭すような優しい口調で告げる。今まで考えもしなかった……でも、そんな風に言われたら……今まで俺の中にあった、何かが崩れそうになる。その何かが崩れる。そう思った時だった。

 

 

ズガン!と舞台上に何かが突き刺さる。その音と衝撃にその場の全員の視線が一斉に集まる。

 

 

「方天戟……恋!?」

「………秋月」

 

 

いつの間にか舞台上に来ていた恋は方天戟を地面に突き刺していた。そして、恋の視線は俺に向けられていた。

 

 


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