真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百四十六話

 

 

一刀達の変装は結局無難な形になった。美羽に関しちゃ荀緄さんの見立てで服を着せていたけど……なんか、荀緄さんと美羽の距離感が近い気がする。なんて言うか……親子みたいな感じと言うか。

実を言えば一刀を炭治郎にして美羽を禰豆子にしてみたかった。美羽の髪は金髪だがゆるふわな感じが似合うと思う。

 

 

さて、変装をして過ごしても正体はバレず、あっという間に天下一品武道会の予選の日になった。俺は例の猪マスクを装着して武道会場に訪れていた。

 

予選会場には兵士や山賊スタイルの柄の悪そうな男達で溢れ帰っていた。俺も人の事を言えた出で立ちではないのだが。

 

 

「それでは、これより天下一品武道会の予選を開催する!この予選で優勝した者を本選に参加できる権利を与える!」

「「「「おおおおおぉぉぉぉぉっ!!」」」」

 

 

司会進行役の兵士が予選開催の宣言すると周囲の兵士達は色めき立つ。物凄い熱気だ。ちょっと圧倒されたわ。

 

 

「やれやれ……凄いな、こりゃ」

「なんだ、アンタ初参加かい?」

 

 

少し引いていたら後ろから声を掛けられる。振り返ると気の良さそうなオッサンが居た。

 

 

「ああ、まあ……初参加かな」

「それでか。この予選に優勝して本選に出て、各国の将軍の目に止まれば何処かの国に雇って貰えるかも知れない。更に上位、三位以内に入れれば北郷警備隊の隊長か副長に任命させてくれるって噂だ。それで皆、やる気に満ち溢れてるのさ」

 

 

なんか、警備隊隊長と副長の座が景品になってた。いや、多分だけど北郷警備隊の解散させない条件の噂が何処かから流れて曲解されて伝わったんだろう……まさかとは思うが荀緄さんはこの噂の事もあるから俺に大会に参加しろと言ったのか?それで上位三位以内に入れと?あり得る予想に俺は頭を悩ませていた。なんか荀緄さんの掌で踊らされてる気分だ。

 

そんな事を思っていたら予選が既に始まっていた。複数ある武道ステージで名前を呼ばれた二名が戦い、勝った方が予選会を繰り上げて行き最終的に勝ち上がった者が本選出場の権利を勝ち取る。天下一武道会と同じシステムだった。

 

 

「伊之助選手、此方へ!」

「おっと、出番か」

 

 

名前を呼ばれたので会場へ。相手の男と向き合う。なんか黄巾の時に良く見た気がする髭のオッサンだった。俺を見るなりニヤニヤとしている。

 

 

「この大会も四度目だけどよ……お前みたいに変装をして目立とうとしている奴は良く見たぜ。こりゃ楽勝だな」

「あー……さっさと掛かって来いや」

「では、始め!」

 

 

明らかに俺の事を嘗めている髭のオッサン。俺が呆れながら手招きすると丁度試合開始となった。

 

 

「死ねやぁぁぁぁぁ……ひでぶっ!?」

「ふんっ!」

 

 

分かりやすく剣を振りかざして大振りで斬ろうとしてきた。顔不さんに比べたら雲泥の差で隙だらけだったので顔面に拳を叩き込んだら、一発でK.O.出来た。

 

 

「し、勝者伊之助選手!」

「猪突猛進!」

「凄いな、あの猪!」

「あの髭のオッサンは予選会の上位だろ!?」

「一撃で倒しやがった!」

 

 

審判が俺の勝利を宣言したので俺もビシッと天に指を差しながら叫んだ。周囲の話を聞くと髭のオッサンは予選会の中では強い方らしい。俺が顔不さんとの戦いで強くなったのから弱く感じたのか、この世界の強すぎる乙女達と比べて強い方と言う意味なのか……まあ、いきなり関羽や馬超辺りと戦うと羽目にならなくて良かった。気の力を使えない以上肉弾戦しか出来ないから今の内に慣れておこう。

 

だが、俺の心配は杞憂に終わった。二回戦は蹴り一発で終わり、三回戦は関節技で制した。そして準決勝。段々参加人数が少なくなってきたから目立たないようにと思っていたのだが俺は大注目されていた。そりゃ初参加の奴が順調に勝ち進んだ上に猪の頭を被ってる奴なら目立つわな。

 

 

「中々やるな。だが私は前回の予選準優勝者だ。負ける訳にはいかん!」

「ならば少しばかり本気を出そうか……ほぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「始めっ!」

 

 

準決勝の相手は蜀の鎧を着た兵士だった。雰囲気からして強い。多分、蜀でも組頭とか纏め役をしているんだろうな。ならば油断もなく倒すとしよう。俺は両手を揺らしながら雰囲気を出すような構えをした後に距離を一気に詰める。

 

 

「これぞ、八手拳!」

「は、速い!?」

 

 

槍を構えた兵士に俺は槍を掴み、その手を打ち払い、槍を落とさせる。そしてそれと同時に両手のラッシュで蜀の兵士をボコボコに殴った。

 

 

「かばっ!……げふっ」

「勝者、伊之助!」

 

 

ふー、速攻で仕留めて正解だった。蜀で槍を使う奴なんて俺からしてみればトラウマなんだよ。無くなった筈の脇腹の傷がズキリと痛んだ気がする。つうか、その所為で力を入れすぎた気がするな。ここまでボコボコにする気無かったのに。と言うかやっと決勝か。相手は誰だろう?

 

 

「では、予選の決勝戦を開始します。伊之助選手、前へ!」

「おう……って、アイツは……」

 

 

遂に予選の決勝戦。相手は誰かと思えばそこに居たのは元董卓軍の兵士で俺がこの世界で北郷警備隊副長をしていた時に良く一緒に仕事をしていた兵士だった。俺よりも年上だったが気が合う奴で良く呑みにも行っていた。まさか、彼が参加していたなんてな。警備隊では「アニキ」なんて渾名が付いていた。

 

 

「………お相手願おうか」

「こりゃマジでやらなきゃだな」

「では……予選決勝戦、始めっ!」

 

 

剣を構えたアニキ。俺は手を抜けないなと腰に差していた二刀の刀を引き抜く。アニキはボロボロの刀身に驚いた様子だが、即座に気を引き締めてきた。やっぱ油断できなさそうだ。

 

 

「はぁっ!」

「ふんっ!」

 

 

振るわれた剣を左手の刀で防ぎながら、右手の刀で横凪に斬ろうとしたがアニキはバックステップで避ける。俺が追撃で蹴りを放てば防御された上に剣の突きが来たので上半身を仰け反らして回避する。その直後、バッとその場から離れて体勢を低くしながら構える。

 

 

「随分と器用な奴だ。まるで野生の獣と戦っている気分だ」

「そりゃ、結構。覚悟するんだな」

 

 

つか、アニキ強くなってね?アニキは元々ケンカ強かったけど、前よりも大分強くなった気がする。俺も顔不さんに鍛えられて強くなった筈なのにちょっと苦戦してるよ。

 

 

「覚悟……するわけなかろう。俺が予選から本選に出るのは隊長と副長の為だ。彼等の魂に殉ずる為に俺は有象無象を大会の本選に上げるわけにはいかんのだ。俺なんぞでは決勝は勝てんが後は華雄様が勝ってくださる。北郷警備隊は決して亡くさせはせんぞ!」

「………そうかい。んじゃ、本気で行くぜ」

 

 

ああ、もう……猪マスクをしていて良かった。じゃなきゃ泣いてたよ。部下の心情をこんな所で聞くなんて不意打ちも良い所だ。早く決着を着けないと泣いて戦えそうにない。

 

 

「我流、獣の呼吸……」

 

 

俺の呼吸にフシューっと猪マスクから息が溢れる。距離を一気に詰めて、刀を揃えて力を込める。

 

 

「壱ノ牙、穿ち抜き!」

「な、折れ……ぐはっ!?」

 

 

俺の突きを防御しようとしたアニキだが、俺の突きはアニキの剣を折り、アニキの鎧を突き破った。気の力で身体強化した肉体から繰り出された技は普通の防御では防ぎきれない。突きを食らったアニキはその場に崩れ落ちる。鎧は撃ち抜いたが致命傷にはなっていない筈。アニキは即座に運ばれて行った。

 

 

「戦闘不能……よって予選優勝は伊之助選手!」

「ふははっ!俺様、最強!」

 

 

審判の裁定に俺は大声で叫ぶ。これで俺の天下一品武道会本選への進出が決まった。予選でこんな疲れるなんて予想外だったな。本選では小手先の技じゃ厳しいかもな……

 

 

 





『竈門炭治郎』
鬼滅の刃の主人公。家族を鬼に殺され、鬼となってしまった妹の禰豆子を人間に戻すために、鬼と戦いながらその方法を探り、無惨を倒すことを目的としている。
性格は良く言えば実直。悪く言えば融通の効かない石頭。


『竈門禰豆子』
炭治郎の妹で鬼にされてしまった少女。鬼になりながらも兄を守ろうとする。鬼でありながら人を襲わず、後に鬼の最大の弱点である太陽を克服した希少な存在。


『八手拳』(はっしゅけん)
ドラゴンボールのチャパ王の技。チャパ王が本気になると繰り出し、あまりにも速い動きで8本もの腕があるように見える。悟空に対して使用したが完全に防がれ、完敗している。



『獣の呼吸』
伊之助が独自に用いる獣(ケダモノ)の呼吸から繰り出される技。
育手から正式に伝授されたわけではない為、単純な斬撃、突きが多い。単純な技である分、威力が高い。


『獣の呼吸 壱ノ牙・穿ち抜き』
揃えた二刀による全力の突き。

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