真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百四十二話

 

 

 

美羽から真名を許されてから数日。美羽から『主様』と呼ばれている事に荀緄さんも一枚噛んでいたらしい。それと言うのも話を聞くと美羽から相談を受けた荀緄さんは「呼び捨てにすると桂花ちゃんが怒るから……ご主人様って呼んだら?」と言ったらしい。何してくれてますか、この人。だが、美羽は美羽なりに思う所があったのか『主様』と呼ぶ事にしたのだとか。このまま魏に行ったら大変な誤解を招きそうな気がする。

 

 

「まあ……誤解云々もそうだけど……月や詠、元董卓軍や呉の方々がなぁ……」

 

 

いくら反省したと言っても反董卓連合を考えたのは袁紹と袁術。袁紹は蜀に滞在していて魏や呉とは顔合わせ程度。罪云々は有耶無耶になったのだろうか?斗詩はちゃんと自分で信頼を勝ち得たけど、美羽を魏に連れて行って「じゃあ、これからヨロシク」とはいかないだろう。

 

話し合いの場を設けたいけど……今の俺自身が交渉の場に立てない立場だし。と言うか魏に戻ったら即座に殺されかねん。やっぱ早めに魏に行って一刀共々土下座の方が良かったかな。

 

 

「ま、半端な覚悟で天下一品武道会に出る訳じゃないんだし……やるからには成績を残さないとな」

 

 

ボッと気の力を解放する。気の力を使わずに戦うとは言っても緊急事態には使用せざるを得ないかもしれない。ならば新技開発もしなきゃな。俺はトントンと靴の爪先で地面を蹴る。目標の的に向けて気の力を込めた蹴りを放つ。

 

 

「銀色の脚っ!」

 

 

俺の蹴りから放たれた気の力を足に乗せて放つと足から気の斬撃が発生し、命中する。成功したけど威力の問題と隙だらけになるのが問題だな。集中しないと使えないし。気円斬と同じくらい使えるけど使えない技になったな。まあ、今後工夫するしかないな。

 

 

「中々、良い技だが単発では意味がないな。連打の最中の最後に叩き込むべきであろう」

「まあ、そうですよね。結局、一番使い慣れたかめはめ波が多様性がある感じです」

 

 

背後から顔不さんに話し掛けられる。俺が技を放つ前に俺の背後に立っていたのだ。俺が集中していたから話し掛けなかったみたいだ。

 

 

「どうだ、もう少ししたら魏に向けて出発だが仕上がりは?」

「戦い方よりも……心の問題ですね。桂花や皆には早く会いたいけど……あの時の後悔がある。皆を泣かせたとあってどんな顔で会いに行けば良いのか」

 

 

美羽は自分の所為でと言っていたが結局、俺は怖がっていただけだ。一刀には強気でいたが俺自身が一番気弱になっていたのかもな。

 

 

「そんな顔じゃ尚更、会わせる顔がなかろう。今日が最後の鍛練じゃ。たっぷりと鍛えてやろう」

「最後の最後に強烈なイベントが待っていたか。だけど、確かにこのままじゃ桂花の前に出ても、ひっ叩かれるだけだな」

 

 

俺は変装道具を装着し、武器を構える。魏への道のりを考えれば、そろそろ出発しないと平和祭に間に合わなくなるそうなので明日には出発なのだ。体を休めるのは馬車でも出来るから今日までが鍛練日なのだ。

 

 

「その意気や良し。安心せい、怪我をしても直ぐに治療をする」

「うむ、妾の準備も万端なのじゃ」

「なんか魏に居た頃を思い出すなぁ……」

 

 

魏に居た頃は新技開発に失敗して医者の世話になっていた。その頃を思い出して俺は笑みを溢した。

そんなこんなで顔不さんと鍛練をして、徹底的に叩きのめされた。後半は気の技も使ったのにボッコボコにされたわ。美羽の治療気功がなければ暫く、動けなかったと思う。ぶっちゃけあの乱世の時に顔不さんが魏に居たらと思ってしまう。

 

 

さて、そんな馬鹿な事をしていれば時間の流れるのは早いもので翌朝。俺達は荀家の馬車に乗り、魏を目指す事に。これから魏に向けて出発し、平和祭で天下一品武道会に出場する。そして魏の皆との再会を目指す。

 

 

「ちょっと胃が痛くなってきた」

「分かりやすく期待と不安が押し寄せてますね。俺もですけど」

 

 

ストレスからなのか俺と一刀は朝から胃が痛かった。期待と不安が交互に押し寄せて心に対して体が追い付いてない感じだ。タバコを吸ってリラックスしている筈なのに不安が胸一杯だ。

 

 

「だ、大丈夫かえ、主様」

「ああ、ありがとう美羽」

 

 

美羽が俺の腹に手を添えて治療をしてくれる。暖かいから何処か痛みが和らぐ感じがした。

 

 

「魏に行ってからそれだと確実に勘違いされますよね」

「状況的に否定出来ないからなんとも言えない」

 

 

美羽は俺の事を献身的に診てくれる。専属の侍女みたいだ。だが、魏に戻ったら月に泣かれて、詠に怒鳴られそうだ。

 

 

「そろそろ魏に向けて出発しましょうか。大丈夫、美羽ちゃんの事もちゃんと考えていますから」

 

 

なんて、にこやかに言う荀緄さんだが俺にはこの人が面白がっている様にしか見えない。見た目が柔らかい笑みを浮かべる桂花で中身が大将って気がする。

 

 

「…………一生、頭が上がらん気がしてきた」

 

 

俺はタバコの火を消してから馬車に乗り込む。さあ、魏に向けて出発だ。

 




『銀色の脚』
Gガンダムの登場人物『ミケロ・チャリオット』の必殺技。蹴りを放つと真空波を生み出し、遠くの相手に攻撃する事が出来る。飛ばさずに直接当てればビルを斜めに両断する破壊力を持つ。

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