真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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早めに仕上がったので本日、二度目の更新。


第二百三十八話

 

 

 

当面を荀家で過ごす事になった俺の課題は複数ある。

まず、一刀の捜索だ。一刀が魏に到着する前に足取りを掴み、荀緄さんと顔不さんと話し合った事を伝えねばならない。この件に関しては荀緄さん所縁の商人さんの伝手でなんとかしてくれるそうだ。

 

次に天下一品武道会の参加だ。これに関しては久し振りのこの世界で戦わねばならない。しかも気を使ってはいけないと言う縛りルールで。つまり単純な身体能力のみで戦わなければならないのだ。気で身体能力を上げるのなら、問題はなさそうだが、なんちゃってシルバースキンは当然使えないし、界王拳も当然NG。これらの条件を廃し、正体がバレない変装をした上で大会に参加とか無理じゃね?大会参加枠には一般の参加もあるから、問題ないとは言われたけど不安が募る。

 

んで、最後にだ……ある意味、これが一番の課題と言えよう。庭でタバコを吸いながら思案していた俺を見詰める少女。

 

 

「…………」

 

 

そう、袁術の事だ。散々、甘やかされて育った袁術は荀家の皆さんにも横柄な態度を取ろうとした。しかし、俺が叱ると泣き始めてしまう。それを荀緄さんがあやす。

そして静かにお説教。このパターンが通例となりそうだ。泣かせて、叱られて、反省する。幼い子供を見ている気分だった。

更に袁術は俺でも知っているこの世界の常識でさえ、知らない事があったりと……なんて言うか非常にアンバランスな娘だった。孫策を飼い殺す程の支配者としての悪知恵がありながら、統治者としての知識はゼロ。多分、その辺りは張勲が補佐していたから成り立っていたのだろう。袁術は本当の意味で一人になったのは今回が始めての筈。色々と自分の愚かさを骨身に染みさせた事だろうと顔不さんは言っていた。

 

此方は余談だが、袁術が顔不さんの顔が怖いと近付いただけで泣かれた事に顔不さんは地味にショックを受けていた。

 

 

荀緄さんは暫く、荀家で勉強させると言っていたが大丈夫だろうか?今は休憩時間になったから俺の傍に来ているが会話はない。袁術に俺の名は教えたが、まだ名を呼ばれてはいないのだ。今の袁術は誰にも心を開かず、唯一心を開きかけているのが俺なのだと荀緄さんは言っていた。

 

 

「おう、小僧。お、嬢ちゃんも一緒だったか」

「ぴぃ!」

「怖くないから落ち着け袁術。顔不さん、どうしました?」

 

 

考え事をしていた俺に顔不さんが歩み寄ってくる。その事に怯えた袁術は俺の足にしがみつき、顔不さんから隠れてしまう。

 

 

「ああ、お前が言っていた変装用の材料だが……確保自体は問題じゃない。寧ろ、使わない部分だからな。だが、本気か?あんな変装は正気を疑われるぞ」

「だからこそですよ。正体が俺だと勘繰る奴はいない筈です」

 

 

顔不さんに俺が変装に使う為の材料の確保をお願いしたのだが、心当たりがあるから問題はないとの事だ。変装は問題なしっと。

 

 

「それと武器に関しても問題はない。不良在庫の物を使えば作れるだろうとの事だ」

「それは朗報ですね。変装に関しては問題が無くなった……後は」

 

 

武器の発注もお願いしたのだが、此方も問題はなさそうだ。と、なれば……

 

 

「後は小僧、貴様の強さが問題だな」

「気が使えませんからね。天下一品武道会までに勘を取り戻すのと鍛えないと……」

 

 

そう、現代で犯人の取り押さえ等の荒事は多少はしていたが、此処は三國志の世界。関羽、呂布と言った超メジャー所と戦わなければならないのだ。ハッキリ言って実力不足も良い所だ。

 

 

「そっちは安心せい。ワシが鍛えてやる」

「………頼りになります」

 

 

ふん、と筋肉を主張する顔不さん。明日からボコボコにされるのが確定した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

それから数日が経過し、一刀の行方が判明した。一刀は蜀の地に居たのだ。そして魏を目指そうと商隊の馬車に相乗りしていた所を荀緄さんネットワークで発見。一刀の特徴と今はボストンバッグを二つも抱えているから目立つ筈だ。その特徴を元に捜索させたらアッサリと見付かったのだ。事情を話して一刀をこの街に連れてくる手筈になったと早馬で教えて貰った俺は、荀緄さんと顔不さんの再会プロデュースが本格始動するのだと考えていた。しかし、本当に大丈夫かな?このまま行くと「この国に戻ったのなら、帰って来なさい!」と怒られる未来しか見えん。

 

そうなったら一刀と一緒に土下座だな。その辺りも話をしたいから早く合流してくれ一刀。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに変装道具が完成したので使ってみたら袁術にガチ泣きされた。そんなに怖いかな、コレ。


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