真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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区切りの問題で今回は短めです。


第二百三十五話

 

 

眠ってしまって起きない袁術に仕方なく服を着させた後、俺は袁術を背負ってある所を目指していた。つうか、着替えさせても起きない袁術はどんだけ深い眠りに入ってるんだ。

 

歩きながら、思う。最初は俺の勘違いかと思った……降り立った荒野と近隣の森に川。そして僅かにだが見覚えのある道。俺が降り立った場所は俺が始めて、この世界に来た時と同じ場所だったんだ。どうりで降り立った場所から近隣の森、近くの川まで分かる筈だよ。桂花と出会った場所で袁術とエンカウントってどんな運命なんだか。

 

 

そんな事を思いながら、袁術を背負ってひたすら歩く。本当なら袁術を起こして事情説明の後に連れていくつもりだったのだが日が落ちて暗くなって夜営の支度もないまま一晩はキツいと思ったので最低限、町まで行こうと思ったのだ。そう、目指すはこの世界で最初に行った町。即ち、桂花の実家だ。あの頃の朧気な記憶を頼りに歩き続け……遂に見付けた。この世界に降り立って数ヶ月過ごした町並みに俺は感動を覚えた。道が間違ってなかったのもそうだが、帰って来たと言う実感が凄まじく沸いてきたんだ。あ、やべ……ちょっと泣きそう。

 

 

しかし、町まで来たは良いがどうしよう?時間的には既に夜だし、路銀が無いから宿にも泊まれない。何よりも……近いから背に腹を変えられずに来たが……この町は桂花の実家がある町だ。三年前に逃げ出したも同然の去り方をして桂花を悲しませたと思われているだろう。そんな俺が荀家に顔を出せるかと言われれば不可能だ。寧ろ、顔不さんに殺されかねん。どうしよう?背中の袁術も起きる気配がないし……仕方ない、一先ず宿屋に行って事情を話して一泊分の仕事をさせてもらおう。そう思って宿屋へ歩こうとした、その時だった。

 

 

「やっぱり……純一さんなんですね!?」

「え、あ……荀緄さん!?」

「久し振りだな、息災だったか?」

 

 

振り返れば以前……この世界でお世話になった桂花の母、荀緄さんが息切れをしながら俺の腕を掴んでいた。隣には顔不さんも一緒だ。

 

 

「先程、町の入り口で見掛けましたが……まさかと思って後を追いました。本当に純一さんだったなんて……桂花ちゃんから天の世界に帰ったと聞いて……う、うぅ……」

「わ、わ……泣かないでください。すみません……俺は……」

「奥様やお嬢様を泣かせたのだ。三国一の不届き者だな」

 

 

俺が本人だと認識すると荀緄さんは泣き始めてしまう。桂花を泣かせたみたいで罪悪感が半端無い。顔不さんはニヤニヤと笑みを浮かべているが一番罪深いのは覇王様を泣かせた弟だと言いたい。

 

 

「ん?……先程から気になってはいたが……天の国で子を儲けたのか?」

「あ、いや……背中のは……」

「あらあら、じゃあその辺りも含めて、お屋敷でお話を伺いましょう。桂花ちゃんを泣かせた事も、天の国に帰ってからの事も、お子さんの事も」

 

 

顔不さんの発現に荀緄さんの瞳がギラリと輝いた気がする。これは逃げられそうにもないな。

 

 

「分かりました、取り敢えず先に誤解は解いておきますが、背中のは俺の子供じゃないです。まあ、複雑な事情があるのは事実ですが……」

 

 

はぁ、と溜め息を吐きながら袁術を背負い直す。その拍子に袁術から「うにゅ」と声が漏れた。まだ起きないのか。そんな事を思いながら三年半振りに俺は荀家にお世話になる事になった。

俺としても荀緄さんの提案は有り難かった。今の三国の状況も知りたいしね。


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