真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百三十話

 

 

 

一刀から話を聞くと、やはり夢に貂蝉が現れたらしい。だが、スキンヘッドのほぼ全裸のマッチョに追い掛けられて逃げだした。鬼ごっこの時間は約15分ほど続き、一刀が力尽き、疲れきった状態で話を聞いたらしい。その話の内容は俺が卑弥呼から聞いた内容とほぼ同じだった。

 

 

「なる程な……となれば、その話を信じて歴史資料博物館に行ってみるか。まだ夕方だし、少しだけなら見に行けるだろう」

 

 

資料館みたいな施設は閉館が早いが今ならギリギリ開いてるだろう。そんな風に思いながら一刀と歴史資料博物館に到着した。閉館まで30分程だったが俺と一刀は入館し、足早に以前見た銅鏡の展示スペースへと急いだ。そこに展示されているのは人が持てるギリギリのサイズの大きさの銅鏡。その銅鏡は真ん中から綺麗に割れているのだ。以前、来た時もなんとなく気になっていた銅鏡を俺はジッと見る。

 

 

一刀も何か感じる物があったのか、銅鏡を見ていた。俺と一刀はどれほど銅鏡を見ていたのだろうか。館内アナウンスで閉館が告げられた。

 

 

「一刀、取り敢えず帰るぞ。話は事務所でだ」

「………はい」

 

 

名残惜しそうにしている一刀を連れて本日は帰る事にした。事務所に戻ってからコーヒー飲み、俺はタバコで一服。一刀はコーヒーも飲まずにテーブルの上のコーヒーのミルクの渦を見詰めていた。

 

 

「………さて、お前の意見を聞いておこうか隊長?」

「俺が感じたのは……なんとなくですけど、あの銅鏡を昔に見た気がしました。何時見たのかは覚えてませんけど……何処か、懐かしい気がしたと言いますか……」

 

 

俺が紫煙を吐きながら一刀に問い掛けると一刀は俯いていた顔を上げて答えた。

 

 

「俺は懐かしい感覚には成らなかったが……だが、なんとなく貂蝉や卑弥呼の言っていた、あの世界へと至る道標って意味は分かったかも知れない。なんとなくだが、あれは存在感が違った気がしたからな」

 

 

歴史資料博物館の銅鏡は貂蝉や卑弥呼から聞いていた通りの銅鏡だとすれば……

 

 

「満月の日に、あの銅鏡に触れればあの世界へ行ける……って事か」

「満月って事は……えーっと……早くても来月って事ですか!?」

 

 

そう、満月はつい最近、通りすぎた。次の満月が来る日を計算すると来月辺りになる。一刀はスマホで満月の周期を見て叫んだ。目に見えて焦ってるな。

 

 

「落ち着け、三年半も待ったんだ。一月くらい待てるだろう?それにいきなり行けるわけ無いだろ。事務所の解約とか知り合いとの別れも済ませておけ。それと、あの世界に行けると仮定するなら荷造りもしておけよ。大将の喜びそうな本とか持ち込むのも面白そうだ」

「あ……そ、そうですね。挨拶回りにも行かないと……」

 

 

一刀は俺の発言で少し落ち着いたらしい。うん、だが完全には冷静になってないな。

 

 

 

「取り敢えず今日は帰りな。明日以降、今後の話を詰めようや」

「は、はい!」

 

 

 

俺なタバコを灰皿に押し付けながら、そう言うと一刀はまだ浮かれているのか、走って事務所を後にした。

うん……まあ、気持ちは痛い程に分かる。俺も桂花に会えるなら喜びが勝るさ、そりゃ。でもな、一刀……お前は色々と見落としているんだよ……

 

 

まず、あの世界へと行ける確証がない。あの銅鏡には確かに何かを感じた。だが、それだけだ。それイコール安全な切符を手に入れた訳じゃない。

 

次にあの世界へと行ったとしても、俺達が望まないものを目の当たりにするかもしれない。三年半も経過したんだ。大将達も世継ぎとか、権力者のお見合いとか……彼女達が望まなかったとしても、やらなきゃならない。そんな可能性は十分にあり得る。

一番ありそうなのが、俺と一刀が警備隊をクビになってる事だな。大将が三年半も戻らなかった奴の為に席を残すとは考えにくい。

 

 

 

 

 

 

実を言えばまだ、これ等は良いのだ。あの世界へと行けたらの悩みだ。目下、一番の悩みは……

 

 

「満月の日に、歴史資料博物館に夜中に忍び込んで銅鏡に触らなきゃならないんだよなぁ……」

 

 

そう、不法侵入に窃盗罪に問われる事をしなければならないのだ。これで、あの世界に帰れなかったら普通に逮捕されるわ。

魏の警備隊の隊長と副長が現代でお縄に掛かるとか笑うねぇ。

 

 

「ま、でも……今はこれに賭けるしか無いよな」

 

 

俺は事務所の窓から見える少し欠けた月を見ながらタバコに火を灯した。

 


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