真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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キングクリムゾン!


第二百二十四話

 

 

 

◆◇side一刀◆◇

 

 

 

あの世界から現代に帰ってきたから、既に二年が経過した。俺と純一さんは未だに華琳達の世界に戻れず、あの世界へ渡る方法を探していた。

 

聖フランチェスカ学園を卒業した俺は純一さんの薦めで考古学や歴史を専攻にしてる大学に進学し、講義を受けながら、純一さんの仕事をバイトとして手伝っている。

その純一さんは……

 

 

「一刀、コーヒー淹れて」

「しっかりしてくださいよ、名探偵」

 

 

事務所のソファーでゴロゴロと寝ながら雑誌を読む仕事をしない探偵となっていた。いや、仕事はしてるけど、今の姿は名探偵から程遠い。

 

 

「ったく……先月大仕事してから、ろくに仕事してないじゃないですか」

 

 

文句を言いつつも俺は事務所のキッチンでコーヒーを淹れて純一さんが寝ているソファー近くのテーブルに置く。すると純一さんは置きながらドヤ顔でコーヒーを飲み始めた。

 

 

「馬鹿を言え、先週も仕事はしてたんだぞ。裏ダンジョンの魔王を倒した」

「つまりゲームしてた訳ですね」

 

 

キメ顔で言う事じゃないでしょうに。

 

 

 

今はこんなんだけど純一さんは本当に凄い事をしてしまう。今の純一さんの職業は『探偵兼万事屋』

探偵としても働く最中、便利屋としても働いている。探偵になった純一さんは様々な繋がりを求めた。探偵と言う仕事柄、警察とも繋がりを持ち、様々な所から情報を得ている。

純一さん曰く、不思議な事や怪事件の情報を集めているそうだ。それが俺達の身に起きた、あの世界へ手懸かり集めの一環らしい。怪奇現象の中には別世界に行っていたなんて主張する人もいたらしい。主にそんな人達の話を聞きに行ったり、全国各地の伝承や昔話を聞き回りに純一さんは足を運ぶ。

 

純一さんは魏に居た頃同様に何かしらのトラブルに巻き込まれていた。

その一例として、ある県に浮気調査に行ったら対象者のマンションの部屋を間違え、更に間違えた部屋では麻薬の売買が行われていた。その場に居た売人達に襲われそうになった純一さんだが、あの時代で現場……戦場に居た人は覚悟が違った。逆にその場に居た売人達を叩きのめし、捕まえてしまったのだ。

因みにその騒ぎで警察が駆けつけ、浮気調査は失敗してしまったのが純一さんらしいと言うか……新聞には『探偵が麻薬の売買を潰す。武闘派探偵の誕生か!?』なんて見出しになっていた。顔がバレると探偵として成り立たなくなってしまうから新聞に顔は載らなかったが、探偵業界としては、とても有名になった純一さんだった。

 

そんな感じで純一さんは受けた依頼の10件に1件は何かしらのトラブルを巻き起こす感じになっている。気の力で自爆とか関係無く、トラブル体質だったんだな純一さんって。

 

 

「そう言う、お前はどうなんだ一刀?大学でなんか、それらしい話は聞けたか?」

「それが……全然……」

 

 

純一さんの一言に俺は俯いてしまう。大学で歴史や考古学を学んでいる俺だが、曹操が女の子だったなんて歴史は一切、見つからない。勿論、教授に直接そんな話を聞く訳にもいかないので、歴史の様々な説を聞いているのだが手懸かりなし。やはりあの世界での出来事は胡蝶の夢だったのではないかと思い知らされてしまう。

 

 

「なーに、暗い顔してるんだよ、高校剣道界の神童。全国一位の名が泣くぞ」

「痛っ……昔の事を掘り返さないで下さいよ」

 

 

顔を俯かせた俺の額にデコピンをした純一さんはキッチンに空になったコーヒーカップを持っていく。

因みに純一さんが言った高校剣道界の神童とは俺の事でフランチェスカ学園に戻った俺は剣道部に入部した。そして、入部した年の夏に剣道で全国一位になってしまったのだ。これには俺も驚いた。いや、本人が一番驚いたんだけどさ。純一さん曰く『あの時代で真剣での斬り合いを経験してるんだ。後は体が勝手に動いてくれるだろうよ』との事。

あの世界で、凪と特訓した事や春蘭に何度も斬られそうになった事がこんな形で活きてくるなんて……そう思ったら、あの世界での事は夢なんかじゃないと強く思える様になった。

純一さんの体に残らなかった傷や俺のボロボロになった制服が綺麗になった事であの世界での事が単なる夢かと絶望していた心に光が指した気分だった。傷跡や物は痕跡として残らなかったけど俺の記憶や体が覚えている。あれは夢なんかじゃない。

 

そして純一さんには感謝と尊敬をしていた。俺一人だったら絶対に挫けていた。道を示してくれたのは純一さんなんだ。さっきは少し仕事しないで情けないなんて思っていたけど、やっぱり純一さんは尊敬できる副長なんだ……

 

 

「あ、一刀。俺、今度の日曜は競馬に行くから留守番ヨロシクな。今度こそ、絶対に来るぞケンタウルスホイミ!」

「そんな神話と呪文が一体化した馬に賭けないでください!」

 

 

ああ、もう!素直に尊敬したいと思うのに、何処かでオチを作るんだから、この人は!警備隊の頃から変わらないよ本当に!

 

それはそうと日曜の競馬は阻止しないと。なんて思っていた俺だったけど、純一さんの本当の目的は競馬なんかじゃなかったと後々思い知らされた。

 

 




『ケンタウルスホイミ』

「PAPUWA」の登場キャラ。ハーレムがリキッドの全財産を勝手に賭けた馬。頭がスライム、上半身が人間、下半身が馬になっている奇っ怪なナマモノ。五年経過した後でも現役だったらしく、年老いた姿が描かれた。

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