第二百二十二話
「…………あ?」
城壁の上で桂花と別れた筈の俺は意識が浮上する感覚に違和感を感じながら瞳を開ける。
そこには見慣れた……いや、今は見慣れない俺の……魏の城の一室ではない、現代での俺の部屋だった。
ソファーで寝ていたのか、スーツを着たまま朝を迎えていた俺は辺りを見回す。
「夢……だったのか?」
今まで俺が見ていた光景は全て夢だったのだろうか?桂花との出会いも?魏の一員として戦ったのも?気の力を得て、かめはめ波を撃ったのも?
「夢……マジで……あ、無い」
俺は普段から懐のポケットに入れていた煙管に手を伸ばすが懐には何も入ってなかった。
「っ……出ない……か……」
俺はいつもの様に掌に気を込めようとしたが、何も起こらなかった。まるで『夢見んな馬鹿』と言われた様な気分になる。
そして、それと同時に気付く。月の自害を止めた時に出来た右手の傷が無かったのだ。
まるで見ていた物全てが単なる夢だったと再度、告げられた様で……思わず、目頭が熱くなった。
「あ、そうだ!一刀は……って携帯番号、知らねーっ!」
俺と同じく、あの時代から弾き飛ばされたであろう一刀に連絡を取ろうと思ったが俺は一刀の番号は登録していない。一応、番号を聞いてメモはしていたが、あの時代の持ち物は置き去りだったのか手元には無いので確認のしようもない。
「えーっと……後は……そうだ、一刀は聖フランチェスカ学園に通ってる筈だ!」
思い付いた俺は聖フランチェスカ学園の住所を調べ上げ、行く事にした。もしも、もしも一刀が居るならば俺と同じく、あの時代から帰還してる筈だから。一縷の望みにすがる様に俺は車を走らせた。
久し振りに乗る車は少し怖かったけど俺は聖フランチェスカ学園へと急いだ。
因みに仕事は休みますと連絡を入れた。ハゲ部長が電話口で叫んでいたが、無視して通話を切った。こっちはそれどころじゃねーっての。
◆◇◆◇
車を飛ばして聖フランチェスカ学園に到着。俺の住んでいた街からは結構、遠かったから時間は掛かったが通学時間帯に間に合った。
「一刀……来るといいんだが……」
勇んで聖フランチェスカ学園の前に車を止めて、外でタバコを吸っていた俺だったが、今更ながら一刀が登校してくるか確証はないのだ。俺は一刀に会う事を真っ先に考えていた。だが一刀は大将やあの時代に残してきた女の子達の事を考えて塞ぎ混んでる可能性が高い。あ、それを思い出したら俺も涙腺ヤバくなってきた……
「じゅ……純一さん……」
なんて思っていたら学生鞄を抱えた一刀が俺を見て震えていた。このリアクションから間違いなく俺を知っている一刀だと確信する。
「ちょっと、そこの喫茶店で話しでもしないか……隊長?」
「そうですね……副長」
俺の提案に涙ぐんだ声で答える警備隊隊長。さて、副長として、これからのプランの提示をするとしますか。