真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百十五話

◆◇side華雄◆◇

 

 

 

何度目かになる私の金剛爆斧と孫策の剣の鍔迫り合い。しかし、私の金剛爆斧が孫策の剣を押し込め、そのまま孫策を斬れそうになるが、孫策は身を退き私から距離を開ける。

 

焦る表情の孫策に私は違和感を感じる。関羽の時も思ったが孫策はこんなにも弱かっただろうか?

 

 

「何よ……負け犬華雄が随分、強くなったじゃない?」

「貴様が弱くなったのではないか?」

 

 

私を挑発する様に孫策が言うが私は冷静に返す。すると孫策は宛が外れた様に舌打ちをすると再度構える。

 

 

「やんなっちゃうわね……」

「そう言う割には楽しそうに笑うじゃないか」

 

 

互いに斬撃を繰り出しながら戦場を駆け巡る。私の援護に血風連が付き添おうとする。

 

 

「華雄隊長!」

「貴様等は手を出すな!コイツは貴様等が敵う相手じゃない!血風連は一部を残して、他の部隊の援護に回れ!」

「「ハッ!」」

 

 

血風連の一人が孫策に斬りかかろうとするが私の一言に下がり、他の血風連も私の指示に離れていく。残った血風連は孫策の兵士達を相手取っていく。

 

 

「言ってくれるじゃない。今なら私に勝てるとでも言うつもり?」

「そのつもりだが?今の私は魏の為に……自分の愛しい人の為に戦うと誓ったのだ」

 

 

孫策の不適な笑みに私は今の私の誓いを口にする。すると孫策は目を丸くしてから楽しそうに笑った。

 

 

「愛しい人って秋月の事?……妬けちゃうわね」

「……言っておくが奴はやらんぞ」

 

 

孫策が秋月に惚れる可能性が出てきたな。秋月の事だから最初はやんわりと否定するが徐々に……なし崩し的に孫策と仲を深めそうな気がする。あり得すぎる未来に私は金剛爆斧を強く握りしめ、孫策に一撃を与える。

 

 

「妬けるのは……私の方の様だ!」

「きゃあっ!ちょっと、力が増してるんだけど!?」

 

 

今の内に始末した方が良いと私は直感する。思えば、秋月は黄蓋とも色々あったと聞く。本当に今の内に手を打っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side斗詩◆◇

 

 

「なんだよ、斗詩!無事だったならアタイ達の所に帰ってくれば良いのに!」

「そうですわ!今まで音沙汰無しだなんて!」

 

 

私は戦場で文ちゃんと麗羽様と再会をしてしまった。文ちゃんと麗羽様は蜀の客将として戦に参加していた。桂花ちゃんがこの事を言っていたけどまさか私が遭遇してしまうなんて……

 

 

「文ちゃん、麗羽様。今の私は魏の顔良なの……二人が蜀の将として戦うなら私も戦わなきゃいけない」

「なんですって、斗詩さんは私よりも華琳さんを取るんですの!?」

「アタイは斗詩とは戦いたくねーぞ!それにアタイが選んだ大槌はどうしたんだよ!?」

 

 

私の発言に二人は騒ぎ始め、私はため息を吐きたくなる。蜀でもこんな感じで我が儘を通していると容易に想像できる。真直ちゃんじゃ文ちゃんや麗羽様は抑えきれないだろうし……

 

 

「何をしてる麗羽!ボサッとするな!」

「白蓮さん!?」

 

 

私の意識が少し逸れてしまった所で騎馬隊を引き連れて白蓮様が突っ込んできた。白蓮様もやっぱり蜀に所属していたんですね。

 

 

「覚悟しろ、顔良!」

「生憎……別の覚悟をしていますので!」

 

 

私は白蓮様の攻撃を避け、トンファーで白蓮様の脇腹を突く。馬に乗っていた白蓮様は落馬してしまう。

 

 

「と、突撃した騎馬の一撃を避けて、馬から引きずり落とすとか普通じゃないぞ!?」

「魏には普通じゃない人が多いんですよ。動かないでくださいね」

 

 

騎馬からアッサリと引きずり落とされた白蓮様が私に叫ぶが、私はトンファーを突きつけて動きを封じる。

白蓮様が率いていた騎馬隊も血風連達の手助けで壊滅状態になっている。

秋月さんから騎馬隊封じの戦法を聞いていたけど、ここまで策通りになるんて……

 

『騎馬隊は機動力と突進力に特化してるけど逆にそれが弱点になる。例えば森とかの中だと馬は木を避けながら走るだろ?それは木々に指向性させられた走りになる。つまり、平地でも障害物や罠を仕掛ければちょっとした障害や同様で足が止まったり走る先を指定されてしまって騎馬隊を無力化出来る筈だ』

『それは騎馬隊も同じ事を考えますよ。そうならないように訓練するんですから』

 

『だろうね。だから、見たこともない罠を仕掛けるんだ』

『参考までにどんな罠なんですか?』

 

『土色に染めた縄を縦横無尽に地面に敷き詰めて騎馬隊が来たら一気に引くんだよ、人の腰の高さくらいに。そうすれば障害物になるし、騎手も動揺する。そんで動揺して動きが止まった瞬間に討つ』

『口で言うには簡単ですけど、そんな策を実行できるとは……』

 

『血風連が居るだろ?』

『そうでした……』

 

 

 

私は秋月さんとの会話を思い出す。秋月さんの毎回出てくる思い付きの策とそれを実行してしまう血風連の皆さんに私は白蓮様と騎馬隊に少し同情してしまう。

騎馬隊は突如現れた障害物に足を止めるか、それを避ける為に道を逸れた瞬間を血風連に襲われて壊滅した。こんな策を考え付いて実行する辺り、秋月さんは色々と規格外な人なんだと再認識してしまう。秋月さんは天の国の知識だと言っていたけど、それだけじゃないと思うってしまいます。

 

 

「ちょっと斗詩さん!?やりすぎじゃありません事!?」

「麗羽様、さっきも言いましたが今の私は魏の将なんです。お覚悟を……」

 

 

白蓮様を血風連の一人に任せて、私は麗羽様と文ちゃんと対峙する。倒して捕らえても秋月さんは殺すことはないと言いそうな気がする。私の時もそうだったし…………それを考えると少し危険な気がしてきた。

 

麗羽様の我が儘を秋月さんは仕方ないなと言って聞きそうだし、秋月さんの優しさに麗羽様も惹かれそうな気がしてなら無い。

文ちゃんも秋月さんを『兄貴』と呼び親しくなり、秋月さんも文ちゃんを妹扱いしそうな気がする。

真直ちゃんの事は「苦労してたんだな」って言って慰めてる内に互いに……何故だろう、麗羽様や文ちゃんや真直ちゃんを捕らえても、私には良い未来が見えない気がする。

桂花ちゃんや詠ちゃんが秋月さんの事を『種馬』や『またか……アイツ』なんて言って怒っていた理由が分かった気がする。

 

私は嫌な予感がしつつも麗羽様達を捕らえるべく武器を握りしめた。

 

 

 


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