なんちゃってシルバースキンの破損から数日。俺は大河や季衣達に技を教えていた。技や鍛練という事で凪も同伴していた。
「ここを……こうして、そう……」
「こ、こうッスか?」
「痛たたっ!?痛いよ、純一さん!」
現在は大河が季衣にコブラツイストを仕掛けてる状態。戦場じゃ使えないだろうけど一対一の戦いなら充分に威力を発揮する。
「これはコブラツイストって言う関節技でな。痛いだろ?」
「痛い、痛い!」
大河の肩に手を置いて軽く揺すると季衣が悲鳴をあげる。
「痛いよぉ……止めてよ純一さん……」
「師匠、流石に可哀想ッスよ」
涙目で俺に訴える季衣。流石に可哀想になってきたのか大河が俺に抗議を始める。流琉や香風も俺にジト目を向けている。もう完全に俺が悪者……というか俺が季衣に乱暴な事をしてる様な空気になってる。
「少し悪ノリし過ぎたな。ほら、技を解くぞ」
「ん……っ……痛かったよぉ……」
大河の手を掴んで季衣に絡んでいた体を解かせる。俺が抱き上げると季衣は涙目だった。
「悪かった、悪かった」
「ぐすっ……」
抱き上げてポンポンと背を叩くと涙ぐんだ声が返って来た。こういう所はまだまだ子供だな。
「季衣を泣かせたな、貴様ぁぁぁぁぁぁっ!」
「うおっと!?」
「うひゃあっ!?」
なんて思っていたら春蘭が大剣を構えて突っ込んできた!いや、俺を許せないのは分かるけど今の避けなかったら季衣諸共に斬ってたからな!
「だから待てって!先日もそうだが剣を納めて話し合えば絶対に被害は無いはずだ!」
「最早、問答無用!」
春蘭に対して、ちゃんと問答が成立した事の方が少ない気がするが……
「バーサーカーかアイツは……季衣、離れてろ。被害を食うぞ」
「う、うん……」
俺は抱き上げていた季衣を離すと大河達の方へ向かわせる。というかマジで春蘭がバーサーカーに見えてきた。
「ふふん、しるばーすきんとやらが無い貴様が私に敵うと思ったか?」
「甘いな……確かになんちゃってシルバースキンは今は無い。だが、こんな事もあろうかと!」
ドヤ顔な春蘭に俺は持ってきていた荷物から一振りの刀を取り出す。本当は一刀用に真桜に作って貰ったんだが今は俺が使おう。
「これぞ不殺の剣の最終型、逆刃刀……危なっ!?」
「その様な剣で私の剣を止められ……止めただと!?」
セリフの途中で春蘭に斬りかかられたけど、なんとか受け止めた。真桜に兎に角、頑丈にとお願いしといたけど助かった。
「ほう……今までの剣とは違うようだな」
「真桜に頼んだ甲斐があったな」
ギリギリと剣を合わせながら顔を付き合わせる。あ、春蘭って意外とまつ毛長いんだな。
「あら、春蘭。接吻寸前ね」
「っ!」
突如、背後から掛けられた声に春蘭に顔が真っ赤になっていく。熱くなっていた所で違う所に意識が向いたから一気に恥ずかしくなったみたいだな。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
春蘭は可愛い悲鳴を上げながら剣を捨てると俺の手を取り、反対に関節を決めると釣天井の様に固めた。
春蘭の可愛い悲鳴とは逆に俺はガチの悲鳴を上げた。っていうか教えてないのになんでロメロスペシャルを使えるんだよ!?
「はっ!すまん、秋月……つい」
「つい、で出る技の難易度じゃねーよ!」
恥ずかしがる春蘭とは裏腹にメキメキと関節が痛め付けられていく。この後、騒ぎを聞き付けた斗詩や呆然としていた凪が止めてくれるまで続いた。
因みに、春蘭が恥ずかしがった原因の一声を出したのは大将だったのが後程、判明した。後で覚えとけよチクショウ。
『こんな事もあろうかと』
アニメや漫画などで使われるセリフ。伏線等を一切無視し、あらゆるご都合主義を実現する。
主に博士や科学者、整備員のキャラが多様するパターンが多い。
『逆刃刀』
るろうに剣心の主人公・緋村剣心の愛刀として登場。
峰と刃が逆になっているため、逆向きに持ち替えない限りは人を殺せないとされている。
『ロメロスペシャル』
プロレス技の一つ。うつ伏せになった相手の腿の外側から自身の足で巻き込むように挟み、その状態で自身の両手で相手の両手を持ち、そのまま後方へと倒れ込み、寝るようにして相手の体を吊り上げる。