真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百九十一話

 

 

桂花をあの状態から持ち直させるのに一晩掛かった。ただ甘えてくるなら兎も角、不安そうな顔でジッと見詰めるのだ。その度に俺の中のスイッチが入りそうになり、この後メチャクチャ……となりそうになった。いや、最終的には、そうなったんだけど。

 

まあ、その後はいつもの調子に戻ったので安心したのだが……

 

 

「昨日は桂花に譲ったが次は私だ」

 

 

華雄が斧を持ったまま俺の肩にポンと手を置いた。徹夜明けには厳しいなぁ……だが、これも俺の勤めだよな。

 

 

「華雄、なんちゃってシルバースキンと新しい武器を装備するから待っててくれ」

「うむ……手加減はせんからな」

 

 

華雄が手加減しないとか、俺は確実に死ねるわ。最近じゃ春蘭との模擬戦との勝率が五分五分って聞いてるんだけど。

 

 

「さて……黄蓋との事や甘寧の事に言い訳はあるか?」

「祭さんとの事も本当だし……いや、甘寧の方は斗詩にも言ったけど事故だからね?」

 

 

なんちゃってシルバースキンと新しい武器を装備した俺は華雄と対峙していたけど、いつもより気合いが入ってる気がする。

 

 

「うむ、理解した。だが納得は出来ん」

「わあ、理不尽」

 

 

チャキッと斧の尖端を俺に差し向ける華雄。それに対して俺は構えた。

 

 

「私が勝ったら今日は秋月を好きにさせてもらうぞ」

「おおっと、負けても俺に良い事がありそうだ」

 

 

少し頬を赤く染めた華雄がそんな事を言ってくる。実に乙女だ。斧さえ構えてなければ……

 

 

「行くぞ、でやぁぁぁぁぁぁっ!」

「っと……あれ?」

 

 

斧を振りかぶった華雄だが俺は違和感を感じた。いつもより動きが遅く感じたのだ。

 

 

「ほっ!とっ!危なっ!」

「なん……だと……」

 

 

華雄の斧を次々に避ける。何故か、斧の軌道が見える。避け続けていたら華雄には凄く驚かれた。いや、そこまで驚かんでも。だが、そんなに驚いたなら、もっと驚かせてやろう。

 

 

「デュアッ!」

「え……ひゃあ!?」

 

 

俺はなんちゃってシルバースキンの帽子部分を両手で挟む様に手を合わせると、勢い良く前に飛ばした。すると帽子の中からブーメランが飛び出し、華雄を襲う。これぞなんちゃってシルバースキンに一時的に仕込んだ暗器、愛素楽観……ではなくアイスラッガー。相手の虚を突く武器として仕込んだのだが思ってた以上の効果だ。華雄から可愛い悲鳴が聞こえたし。

 

 

「くっ……秋月の性格や戦い方を熟知していたのに油断した」

「それでも虚を突くのが俺……危ない!」

 

 

尻餅を着いた華雄にドヤ顔をしたら華雄は顔を赤くしたまま斧を投げ付けてきた。咄嗟に避けたけど顔面コースだったよ今の。

 

 

「しかし、今の武器があるなら何故、甘寧の時に使わなかったんだ?」

「武器を使うために帽子に手を伸ばした瞬間に斬られるっての……そのくらいの速さだったからな」

 

 

甘寧の時に使っていたら使用の瞬間に斬られる事、間違いなし。卍丸みたいに速度に自信があるなら龔髪斧でもしてやるわ。そして、そこで思う。

 

 

「あれ……もしかして甘寧の速さに目が慣れていたのか」

「釈然としないが、それなら少しわかるかもしれんな。甘寧の速度と私の速度では差があるからな」

 

 

そう、先程の華雄の攻撃を避けられたのは甘寧の速度に目が慣れていたからだ。それと持ち前の勘と華雄の動きを常に見ていたから避ける事が出来たのだ。

 

 

「これから甘寧のイメージトレーニングをすれば、もっと強くなれるかも……」

「いめーじとれーにんぐとはなんだ?」

 

 

華雄が俺の言葉に首を傾げる。そりゃ通じないか。

 

 

「簡単に言えば……強い相手を頭の中に思い浮かべて、それを相手にする。そうする事で技術や戦術を向上させるんだ」

「なるほど……」

 

 

俺の説明に華雄は納得した様に頷いた。

 

 

「そう……頭に思い浮かべるんだ。例えば甘寧と戦った時の事を思いだし、戦う」

 

 

俺は甘寧との戦いを思い出す。ぶっちゃけボコボコにされたが、あの速さをイメージする。

 

 

「ふむ……過去に戦った者や自分より強い相手を想定するのか」

「ああ……そして、その対応を張り巡らせて、体を動かせる様にするんだ」

 

 

俺は甘寧の素早さを連想しながら戦う。その素早さは俺が捕らえる事は叶わない。ならばやはり、攻撃された際に捕まえて攻撃をするしかない。

そして思い出すのは、その後の光景。体を鍛えてる事でスポーティーな体。健康的な日焼け。凛々しい顔付きで顔を赤らめて、涙目……そして、あの胸。

 

 

「秋月、顔がニヤけているぞ。何を思い出した?」

「ああ、うん……甘寧に勝った事を思い浮かべたんだヨ」

 

 

華雄に怪訝そうな顔で睨まれた。うん、イメージトレーニングを真面目にしてただけだよ。

この後、何を考えていたのか読まれたのか、気合いの入った華雄にボコボコにされました。

 

 




『なん……だと……』
『BLEACH』で多用されるセリフ。驚いた時、信じられない事が起きた時などに使われる。


『アイスラッガー』
ウルトラセブンの頭にくっついている宇宙ブーメランの名前。 主に投げつけて使用する。飛ばした後はセブンのウルトラ念力で自在にコントロールできるので一回投げただけで敵を滅多切りにすることも可能


『龔髪斧』
『魁!男塾!!』の登場キャラ卍丸の必殺技。
卍丸のモヒカンの中に仕込まれた武器。ブーメランのように往復し敵を狙う。

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