真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百六十八話

 

 

 

◇◆side真桜◇◆

 

 

 

この間の武道大会が終わってから副長は暫く休んどった。なんでも気が枯渇したのと恋の一撃で限界だったらしく、数日は休みにすると隊長や華琳様からのお達しやった。

ほんでそれから数日後には仕事に復帰しとる副長。前は1.2週間はかかってたのに回復早なったなぁ……

 

 

「お、なんだい副長さん。ここ暫く見なかったけどまた倒れてたのかい?」

「病弱って訳じゃないんだけどね」

 

 

警邏で街を歩く最中、副長は街の人達に話し掛けられてる。こんなに気さくに話し掛けられるの隊長か副長くらいなもんやで。

 

 

「そんな事言って……また女でも寝所に連れ込んだんじゃないのかい?」

「あっはっはっ……」

 

 

街の人の冗談めいた発言にただ笑う副長やけど……否定せんのかいな。この後も色んな人に話し掛けられとる副長の背中をウチはズッと見てた。初めて警邏に出たときや……初めて会った時から見ていた副長の背中……

 

 

「また戦なんだって?気を付けていきなさいよ」

「俺が怪我する事を前提に話すんの止めてくんない?でも、心配してくれてありがと」

 

 

また別の人に話し掛けられとる。今度は饅頭屋のオバちゃんに肩を叩かれながら心配されてる。

出会った頃は気は使えるけど情けない兄さんみたいな人やと思ってたけど、最近は気を使ってめっちゃ強なったな。

 

 

「副長、頼まれていた『かがくけん』が仕上がりました」

「おお……これで遂に稲妻重力落としが試せる……」

 

 

鍛冶屋の親父さんとなんか知らん単語ばかり使っての話やから分からんかったけど、ろくなもんやなさそうや。

副長が鍛冶屋の親父さんと話を終えた後は城に戻って書類整理。

 

 

「副長の書類仕事してるの久しぶりに見るわ」

「大概のものは一刀に任せてるよ。俺は街の人達との区画整理や商店との話を重点に置いてるんでな。後で栄華と会議だし」

 

 

ウチの言葉に視線と手を止めないまま書類仕事をこなしていく副長に驚く。隊長と副長が分担して仕事をしているのは知っていたけど、まさか街の経済に関わっていたなんて知らなかった。

 

 

「警備の主な部分は一刀に任せて、俺は商人同士の揉め事が起きないように調整してんだよ。街の経済が回れば国は豊かになるからな。因みに真桜が知らなかったのは基本的に一刀の部下だから警備や警邏を重点に仕事させてたからだ」

「あ、そっか……副長の補佐って華雄の姐さんや斗詩、大河がやっとたから……」

 

 

ウチは副長を慕っとるけど直属の部下やないから知らんかったわ。なんやろ……悔しいなぁ。

 

 

「ま、俺の行動も無駄ではないってことだな。街を回るのは街の状況を知れるし、服や物を作れば職人や商人との繋がりも出来る。そして俺が新技開発で怪我をすれば医師達の怪我の見本市として活躍できるって訳だ」

「いや、最後のはどうかと思うで副長」

 

 

笑いながら部屋を出ていく副長にツッコミは入れたけど釈然とせんなぁ。

この後も副長は華琳様や栄華様と会議をして書類を纏めたと思うたら書庫に行って桂花と話して、華雄の姐さんや大河と鍛練し、夜には月っちや詠、斗詩に混じって料理しとる。

久しぶりに副長と一日仕事してたけど……ウチ、知らん事ばっかりやった。副長は新技開発ばっかかと思ってたけど、ウチの知らんところで沢山仕事してたんやな。

 

ウチは副長が「風呂でも行ってこいよ」って言うとったから五右衛門風呂に浸かりながらズーッと考え事してた。そういや、この五右衛門風呂も副長と作ったんやったなぁ……なんやろ、随分前な気がするわ。

 

ウチは風呂に入ってサッパリしたのに何処か暗い気持ちで部屋に戻ろ思た。そんで部屋に戻る途中で副長と会ってまう。

 

 

「ふ、副長どないしたん?」

「ねねの所に行って碁を打ってた。最近は漸くマトモに打てるようになってな」

 

 

副長は右手で碁を打つ仕草をする。ほか……またウチの知らん事してたんやな……

 

 

「つーか、真桜こそどうしたんだ?今日は久しぶりに一緒に仕事してたのに元気ないから心配してたんだぞ」

「……ふぇ?」

 

 

副長の言葉にウチの口から変な声出てもーた。

 

 

「副長、気付いてたん?」

「そりゃ気付くっての。特に真桜は俺が魏に来てからの付き合いなんだ。見てりゃわかるよ」

 

 

風呂上がりで髪留めをしてないウチの頭を撫でる……アカン、ヤバい……ウチ、めっちゃ顔が緩んでる。嬉しゅうて胸がドキドキて早鐘みたいに鳴ってる。

 

 

「……真桜?」

「ふ、副長……お、お願いがあるから来てや!」

 

 

ウチの顔を覗き込もうとした副長の手を取るとウチは副長の部屋に急いだ。部屋に着くなりウチは思わず、副長の背中にポフッと顔を埋めとった。ああ……やっぱり広い背中や。

 

 

「おい、真桜?」

「副長……ウチな不安になってん。今日一日、一緒に居て……副長がえらく遠く感じたんよ」

 

 

振り返ろうとした副長にウチはそのまま話しかける。

 

 

「立場が違うのはわかってんねん。副長が桂花を一番に見てるのもわかる……でもな」

 

 

ウチの話を副長は黙って聞いてくれてる。

 

 

「好きやねん……副長の事。寂しいんや……もっと副長に触れたい」

 

 

ウチは副長の背に頭を乗せたまま話とった。多分……副長の顔見たら話せなくなる思うて。

 

 

「いつも明るく笑ってる真桜がそんなんじゃ周りも心配するぞ。そういうのは此処に置いていったらどうだ?」

「……ほんならウチは副長に甘えてええんやな」

 

 

ウチはそのまま副長の背中から前の方に手を回す。思ったよりも逞しい体にドキッとしてもうた。

 

 

「精一杯甘えろよ……もっとも………」

「え……ひゃっ!?」

 

 

そう言うと副長はスッとウチの手を引いて壁際にウチを追い込む。少し強引に壁を背にされたウチに副長はドンと壁に手を突いた。

 

 

「俺も真桜に甘えるから……そろそろ理性も限界だし」

「り、理性て……あ……」

 

 

ウチはそこで前に副長が呟いた一言を思い出した。

『ギリギリの所で耐えてんだよ阿呆』

あの頃、副長は耐えてたと言っていた……ちゅー事は……そんなウチの考え事を遮る様にウチと副長の影が重なって……

 

 

 

この日……ウチは初めて二人きりで副長と一夜を過ごした。

 

 

 




『稲妻重力落とし』
科学戦隊ダイナマンに登場するロボ、ダイナロボの最強の必殺技。上空から科学剣を構えて敵を切り裂く。

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