魏の武術大会から数日後。漸く体調が治った俺は街中を散策していた。褒美として貰った休みが今日が最後だからだ。明日からは溜まった書類との格闘になるし、今日くらいは羽を伸ばそう。
「しっかし……我ながら頑丈になったよなぁ……」
未だに気を失うケースは多いが気が枯渇しても復活は早くなったし、恋にぶっ飛ばされたにもかかわらず既に歩けるくらいにはなってる。タフネスになってると言えば聞こえは良いが……ヤられるのに慣れてきてるのも問題だとは思うが。
後は技の完成度を高める特訓かなぁ……色々と試してきたけど『かめはめ波』と『シルバースキン』が一番効果有りだったし……
「まあ、かと言って新技開発を止める気はないが」
俺の手には先ほど、鍛冶屋の親父から受け取った新兵器各種が手の中に。呉に行くまでに幾つかは試したいところだ。
にしても呉か……普通に考えれば赤壁なんだろうけど定軍山の事もあったから確証はない……というか歴史通りに動いてない部分が多いんだよなぁ。
董卓軍である月や詠、華雄、恋、ねねが生きている事や顔良である斗詩や高順である大河が魏に居る事。
いや……そもそも三国志の武将が大半が女である段階で色々間違ってんだけどさ。最近、普通に受け入れてたわ。そんな事を思いながら俺は城に戻った。
「…………で何をしてるんだ?」
「いや……華琳に」
「言わないでよ馬鹿!」
城に戻ったら何故か正座をしている一刀の前で仁王立ちの大将。大将は何故か、プリプリと怒っている。これは本気の怒りじゃなくて不機嫌とかそれ系の怒り方だ。
「まあ、落ち着け。何があったんだ」
「なんでもないわよ!」
俺が話を聞こうとしても大将は聞く耳持たず。
「ふむ……二人で城の中を散歩をしていたけど一刀の失言で大将を怒らせたか?」
「なんで、そんなに理解があるのよ」
適当に言ったのに当たったよ。なんか分かりやすいなキミ達は。
「そして大将の怒り方からすると色事かな?」
「見てたの?ねぇ、見てたのかしら?」
大将は俺の胸ぐらを掴んで睨んでくる。いや、ここまで当たってるとは思わなかったんだけどね。
「そう言う割には、まんざらでもないのか怒っているのか複雑な表情の様だが?」
「……うぅ」
大将は分かりやすく顔を赤くして俺を睨む。普段からこのくらい表情豊かなら一刀ももっと惚れるだろうに。
「まあ……許してやれよ。事情は知らんが一刀も悪気があった訳じゃないんだろうし」
「事情を知らないなら口を挟むんじゃないわよ」
まったく……と大将は掴んでいた胸ぐらを放してくれた。少しは頭が冷えたか?
「そうだな……一刀が何か助平な事をしたら『エロガッパ』とでも呼んでやれ」
「なんなの……『えろがっぱ』って?」
俺の発言に大将は怪訝な視線を俺に送る。
「エロガッパとは助平な事をした男に対する罵倒……とでも言っておこう」
「そう……よく覚えておくわ」
俺からの説明を聞いた大将はドSな笑みを浮かべながら一刀を見下ろしてる。楽しそう……と言うか愉しそうな感じだ。
その時だった。一陣の風が吹き大将のスカートがヒラリと舞った。
サッとスカートを押さえた大将だが時既に遅し、俺は大将の後ろにいたのでスカートの中は見えなかったが、大将の前で正座していた一刀は中をバッチリ見たわけで。
「この……えろがっぱ!」
「ぷろぁっ!?」
「おお、お見事」
大将は先ほど教えたばかりの言葉と同時にビンタを一発。ツンデレ少女の『エロガッパ』発言は妙にマッチするな。
この後、大将はフン!と鼻を鳴らして行ってしまう。
「見事なツンデレヒロインだな。そしてお前は何処ぞのラッキースケベ主人公だな」
「……純一さんには言われたくないですよ」
大将の背を見送りながら発した俺の発言に、一刀はツッコミを入れに来るが立ち上がれない様だ。流石、大将……ビンタでも腰が入ってる上に見事に下顎に命中させたみたいだ。
でも最近、戦続きで腹を抱えて笑う事が少なかったから……こんな日が続けばと思う日だった。