真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百六十五話

 

 

 

次の戦いは流琉VS香風。またもやチビッ子対決となったが油断はしない方が良いな……。さっきもそうだったけど俺の基準でこの世界の女の子を測らない方が良いのは散々身に染みたんだ。俺の試合も近いし、そろそろ気を体に集中……しようとしたら鼻先に何かがかすった。その直後、俺の右側にあった彫刻がゴシャ!と破壊されて破片が周囲に散らばった。

その何かが飛んできた方向に視線を移すと、呆然としている流琉と少しドヤ顔の香風。何があったかと凪に問うと、試合開始と同時に巨大なヨーヨーを香風に投げ付けた流琉だが香風は手にした鉞をバットの様に扱って巨大なヨーヨーを打ち返した。そして打ち返されたヨーヨーは俺の鼻先をかすめて庭に設置されていた彫刻を破壊した。あっぶねぇ……数センチ位置がズレてたら直撃だった。

この後の試合結果だが、流琉が武器である巨大なヨーヨーを手放してしまったので香風の勝ちとされた。

 

そして春蘭と霞の試合。

当初は大将に良いところを見せようとやる気になっている春蘭に対して、対戦相手が自分を見ない上に浮かれている事にやる気が出ない霞。試合前からグダグダな空気が流れていたが、一刀の霞への応援に霞のテンションはMAXになった。

一刀に応援されて気合いが入るとは霞も乙女……そして上座で不機嫌になってる大将も乙女だな。

 

 

「霞様は隊長に応援されていいなぁ……」

 

 

そして俺の隣にも乙女は居た。凪が羨ましそうに二人を見てる。後で一刀にフォローさせるとしよう。

春蘭と霞の試合は力押しで圧倒しようとしている春蘭に対して、速度と技の手数で対応する霞と互いの持ち味を競う形となり、最後は一瞬の隙を見せた春蘭の喉元に霞が寸止めして勝負ありとなった。春蘭は不満で大将に再戦を要求していたが既に勝敗は決したとして受け入れられなかった。事実上の魏の頂上決戦も終わったのでこのままフェードアウトしたいが、それは許されない訳で……

 

 

「では、これより純一対恋の特別試合を行う!両者前へ!」

「うし、やるか」

「……ん」

 

 

大将の号令に俺と恋は試合場へ。そして互いに向き合う形で距離を取り試合開始を待った。

 

 

「では……始め!」

「うおおおおおっ!」

「……ん」

 

 

恋相手に小細工は通じないと分かっているので、俺は気を全身に巡らせながら恋に徒手空拳での連打を見舞う。しかし恋はアッサリと見切ると俺の拳を避け続けている。だが甘いな……このラッシュは囮にすぎない。

 

 

「両断ブラボチョップ!」

「……ん、少し効いた」

 

 

俺の不意打ちで放ったブラボーチョップを方天画戟で受け止めた恋。正直、技を出した側の方がダメージがデカい気がする。方天画戟も傷一つ付いてないし。

 

 

「……行く」

「なんのっ!」

 

 

恋は俺が攻めないと分かると即座に攻勢に出た。俺はなんちゃってシルバースキンに気を通して防御力を上げると同時に、ここ暫く練習していた事を実践する事にした。

それは攻撃された箇所に気を送り込むことで、その一部分の防御力を上げる事。マクロスのピンポイントバリアみたいなもんだ。なんちゃってシルバースキンで全体の防御力を上げると同時に、ピンポイントバリアで攻撃されそうな場所をガード。

ちなみにこの戦法を思い付いたのは大河との日々の修行の中でだ。大河の素早い攻撃になんちゃってシルバースキンでは対処しきれない時がある。ならば全体の防御力を上げるのではなく本来のシルバースキンみたく、衝撃を受けた箇所の硬質化を考えた。

そこでリスク覚悟で体の一部に気を集中して防御力を上げると特訓をし始めた。最初の頃は酷かった……だって一部分の防御力を上げるということは他の防御力が下がる訳で。

例を上げるなら右ハイキックだと思って左上半身の防御力を上げたら、実はローキックで無防備な所をやられるなんて事になりかねない……と言うか実際にそれで失敗したのだが。

そんな失敗を経て俺は凪に頼んで気の流れの特訓をした。それにより気の流れの潤滑を上げて戦いの最中でも素早く行動できる様にだ。さて、説明が長くなったが、つまりどういう事かと言えば……

 

 

「……ん」

「おおおおっ!」

 

 

恋が方天画戟を横凪に振るうと同時に俺は前に出た。それと同時に、なんちゃってシルバースキンの防御力を右腕に集中して恋の一撃を受け止める。

 

 

「っ!」

「貰ったぞ!」

 

 

今までの経験から俺に攻撃を防がれる事がなかった恋の動きが一瞬止まる。だが俺にはその一瞬で十分だ!これが俺の戦法で相手に技を仕掛けさせて防御し、相手の動きが一瞬でも止まった瞬間に技を叩き込む。俺は左腕に残された気を集中して恋にラリアットを仕掛けた。

 

 

「喧嘩ボンバー!」

「っ!」

 

 

恋が気づいた時にはもう遅い。俺の左腕は恋の首に喧嘩ボンバーを……

 

 

「あむっ!」

「って痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

喧嘩ボンバーが恋の首に叩き込まれる瞬間。なんと恋は俺の左腕に噛み付いた。いや、確かに最短の避け方と言うか防御方法だけど……って、なんちゃってシルバースキンの上に気で強化してるのに噛まれてる腕が超痛いんですけど!?

 

 

「防御の為に右腕に気を回したのが仇になったわね。左腕に残された気じゃ恋に大した効果は与えられないし、そうやって噛みつかれて痛いのが気が少ない何よりもの証拠よ」

「解説どうも……って痛たたたたっ!?」

「……ぷはっ」

 

 

上座から大将の解説が聞こえたが、恋に噛みつかれた俺はそれどころじゃなかった。やっと放してくれたけど間違いなく歯形がついてるな左腕。しかし参ったな……今の戦法が通じないとなると俺に打つ手がなくなる。

 

 

「こうなったら……」

 

 

最早、禁断の最終奥義を放つしかない。なんちゃってシルバースキンと同様に気のコントロールの修行をする中で身に付けた新必殺技。

 

 

「……これで、終わり」

「そうはさせるか!行くぞ必殺エターナル……ネギフィーバー!!」

 

 

方天画戟を構えた恋に、俺はビシッとポーズを決めた後に両手を広げてPOWと全身から気を放った。これは以前、熊相手に失敗した自爆技の応用をしたのだが、気のコントロールで爆発を広範囲に行うのではなく前方のみに飛ばすように調整した結果エターナルネギフィーバーの会得に至ったのだ。

そして放たれた気は恋に着弾すると同時に周囲に土煙を巻き上げた。これで試合が決まってくれると嬉しいんだが。気を使いすぎてガス欠状態だよ。

 

 

「……やったか?」

「うん、少し……ビックリした」

 

 

俺の呟きに返事が帰ってきたと同時に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気を失った俺は後から事の顛末を聞いたのだが、恋は俺が放ったエターナルネギフィーバーを方天画戟で地面に叩き落としたらしい。あの時、発生した土煙は恋がエターナルネギフィーバーを叩き落としたものだったのだ。そして恋は、エターナルネギフィーバーが飛んできた方に距離を詰め俺を発見した後に俺を一撃で倒した。一応俺も防御したらしいのだが、ガス欠寸前でマトモな防御が出来る筈もなく俺は野球ボールの様に宙を舞ったらしい。

こうして武道大会はおおよその予想通り、俺の敗北で幕を閉じたのだった。

 




『両断ブラボーチョップ』
キャプテンブラボーの13の技の一つ。
一振りで海を何十mにも渡って叩き割る超強力チョップ。


『ピンポイントバリア』
マクロスが持っているバリア。艦全体に働くバリアではないが、専門のオペレーターが発生箇所を移動させて要所要所をピンポイントで守れる事からこの名前がついた。


『喧嘩ボンバー』
キン肉マンのライバル、ネプチューンマンの必殺技。超人強度2800万パワーを誇るネプチューンマンの「黄金の左腕」から繰り出される強烈なラリアットであり、その威力は自分よりもはるかに巨体な超人すらをも吹き飛ばすほど。
王位争奪編ではザ・サムライを名乗り正体を隠していた際には「居合斬りボンバー」という呼称を使用していた。 

『エターナルネギフィーバー』
魔法先生ネギまの主人公ネギの師匠となったラカンがネギの為に考えた必殺技。ポーズを決めながら魔力を練り上げ、全身からビームの様に放つ魔力砲。
ラカン曰く『適当に全身からビーム出したらスゴい技になった』との事。しかし適当と言う割りには近隣の山を一つ消し飛ばす程の破壊力を誇る。

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