真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第十六話

 

 

世話になった荀家を出た俺は早速、許昌を目指した。先日、お使いで行った街から離れた街だが行き方は聞いているし、大将から借りた馬も居るから移動は楽だ。

 

そして到着しました許昌。何、途中経過?何事もなかったよ珍しく。やめとこ言ってて悲しくなる。

許昌に到着した俺は城の警備隊に話をして、通行許可を待った。いくら警備隊の副長に任命されたからって、俺はまだ魏では名も知られてない男だ。余計なトラブルは避けるべく、ちゃんと手順を踏んで城に行くべきだと考えたからだ。そして待つこと、数分。

 

 

「純一さん!」

「北郷警備隊の隊長みずからお出迎えとは頭が下がります」

 

 

迎えに来たのは一刀だった。大将に言われてきたんだろうな。

 

 

「そんな言い方は止めてくださいよ」

「俺は部下。一刀は上司だろ」

 

 

俺の発言に眉を潜めた一刀だが俺が笑うと一刀も笑った。ノリが分かる奴は好きよ俺。

 

 

「華琳に頼まれてきました。玉座の間に案内します」

「おう、頼むわ」

 

 

俺は一刀の案内で城を歩く。思えば城って初めてだな俺。今までは街中彷徨くだけだったから。

キョロキョロと辺りを見回しながら歩いていると、一刀が足を止めた。此処が玉座の間らしい。

 

 

 

「中で華琳が待ってます」

「はいよ。一刀は?」

 

 

流石に俺、一人はキツいんだけど……

 

 

「あ、俺も一緒です。警備隊の話があるとかで」

「そっか。助かったわ」

 

 

一刀も一緒らしい。そして話の口振りから即座に仕事の話になると思うべきだな。俺はネクタイを絞め直すと一刀が先に入った玉座の間へと入る。

そこには玉座に座る覇王・曹孟徳。なんと言うか……絵になるな。女王様って感じが特に。

下座には夏侯姉妹と荀彧の姿も。あ、荀彧から視線逸らされた。

 

 

「待ってたわ秋月純一。荀家への挨拶は済ませたのかしら?」

「全て済ませてきました。荀彧にも宜しく伝える様にとの言伝も預かっております」

 

 

俺は頭を下げつつ、大将の話に応える。俺の返答に満足したのか大将はそのまま話を続けた。

 

 

「なら結構。秋月純一、アナタには天の御遣い北郷一刀の補佐を命じます。役職は北郷警備隊の副長に任命。後の事は一刀に聞きなさい」

「慎んで拝命致します」

 

 

大将から仕事の割り振りと役職を貰った。この間も思ったがド新人に役職を与える子……恐ろしい。

 

 

「私は仕事が出来る者に仕事を与えるわ。秋蘭からアナタの話を聞いたし、一刀の同郷なら彼を支える事も容易いでしょう?」

「は、了解です」

 

 

エスパーかアンタは?アッサリとこっちの思考を読み取ったよ。

 

 

「それと……この間はもう少し、砕けた口調だったでしょう?完全に砕けとは言わないけど話易い風で構わないわ」

「は、畏まり……いや、止めた。了解ですよ大将」

 

 

俺の仕事用の口調はNGが出された。一刀の事もあるし、普段通りに話せって事ね。

 

 

 

「今日は一刀に城と街を案内させるわ。明日から警備隊の仕事を本格的に始めるから備えなさい。一刀、後は任せるわ」

「ん、わかった」

「了解ですよ」

 

 

大将の名を受けて一刀が頷く。今日はまだ体が休められるらしい。馬に揺られてばかりだったから助かるわ。

その後、春蘭から「華琳様の為に励めよ」秋蘭から「これから宜しく頼む」と言われた。うん、此方こそヨロシク。

 

 

「荀彧もこれからヨロシクな」

「………ふん」

 

 

荀彧にも挨拶したのだがプイッと逸らされた。僕、何かしましたかね?

秋蘭は照れているだけだと言ってくれたけど内心は傷付いてます。

 

その後、一刀に案内されて城の中の一室を借り受けた。今後の俺の生活する部屋だ。大切にしよう、うん。

部屋に持ってきた少ない荷物を置くと俺と一刀は街へと繰り出した。これは街の案内と必要な物を買い揃える為である。

並んで街並みを歩く。やっぱ他の街とは違うな、活気もあるし何より人が笑ってる。

 

 

「良い街だな」

「はい。でも、その分……犯罪やトラブルも多くて。スリとか強盗とか、喧嘩とか……」

 

 

俺の言葉に一刀も同意するが一刀は疲れた様子で言葉を繋げる。苦労してんだな。

 

 

「だからこその北郷警備隊なんだろ。頑張ろうや隊長」

「はい……副長」

 

 

俺の言葉に一刀も笑って返してくれた。やはり同郷って事で馴染みやすいな一刀は。

 

その後、買い物を済ませた俺達は城壁の上を歩いていた。駄弁りながら俺達は互いの情報交換をしていた。

俺は会社の事や元々住んでいた場所の事。一刀は学校の事や家の事だ。島津分家と聞いた時は驚いたよ、流石に。

そして話は俺の『気』の話になる。やはり先日の『かめはめ波』は一刀の心を捉えたらしく一刀は少々興奮気味に話を聞いていた。

 

 

「気が使えるなら、武将とも渡り合えるんじゃないですか?」

「いんや、無理だな。俺の気は凪とは違う感じだし」

 

 

一刀は俺が武将みたいに強いのではと聞いてくるがそれは無い。何故かと言えば俺は気の『溜め』が遅いのだ。凪は気弾を蹴りと共に放つが俺は一発のかめはめ波を撃つのに約5~6秒は掛かる。つまりは……

 

 

 

『いくぞ、春蘭!かぁ……めぇ……』

『隙あり!でやぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 

かめはめ波を撃とうとした瞬間に斬られて終わるな。うん、ゾッとする未来だ。

そもそも今までの俺の戦いや技は壁にかめはめ波を撃ったり、離れた位置から黄巾の連中にかめはめ波を撃ったり、背後から不意打ちしたりと俺にとって条件が揃ってる時の話ばかりだ。仮にタイマンで戦うとなったら俺は戦力には加算されないだろう。今後の課題だな。それと、気を使った技をどんどん試してみよう。可能なら行動の選択肢も増えそうだし。

凪にも話を聞いてみるか。あの娘の方が気の使い手として完成されてるんだろうから。

 

その後、なんやかんやと話ながら一刀と盛り上がった。だが一刀はテンションが高いと言うか落ち着かない感じだ。聞いてみると部下を持つのが初めてだから緊張しているとの事だ。まあ、この間まで学生だったのが急に部下だなんだと言われれば当然か。

 

 

「気持ちは分からんでもないが落ち着け一刀。それにラムちゃんも言ってるだろ『あんまりソワソワしないで』ってな」

「……古いですよ」

 

 

俺のボケにツッコミを入れる一刀。俺は古い漫画も好きだからこの手のネタはちょくちょく入れよう。通じるのは一刀だけだけどね。

さて、明日から本格的に北郷警備隊の始まりだな。頑張ろう。


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