真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百四十五話

 

 

 

 

 

 

「あー……超ダルい……」

 

 

俺は馬車の荷台に揺られ空を見上げながら呟いた。何故か城を出た辺りから急に体調が悪くなり今は馬車の荷台で寝転がっていた。

 

 

「情けないぞ、秋月」

「そうですよ、純一さん」

 

 

秋蘭と流琉に言われるが返す言葉もない。

 

 

「なんでこうなるかねー」

「その体勢が当たり前になってきてるな」

 

 

俺の呟きに秋蘭が呆れたように話す。うん、俺の所定の位置みたくなってるからね。

 

 

「いっその事、俺専用の荷台を用意するか……」

「その計画は既に華琳様と桂花で話し合われていたな」

 

 

何やら俺の知らない間に俺専用の荷台計画が発生していた模様。

 

 

「とりあえず暫く寝るわ……定軍山に着いたら起こして」

「……やれやれだな」

 

 

俺はゴロンと寝直す。秋蘭の呆れた声が聞こえたが寝て体力の回復に努めよう。なんか妙に体が重いんだよな。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

あれから数日かけて定軍山に到着した。でも俺の体調は優れないままだった。

 

 

「まだ体調が悪いのか秋月?」

「ああ……」

 

 

とりあえずジャケットを着て立っているがダルい。ったく……なんなんだか。

 

 

「まあ、今回は偵察任務だ。無事に帰ろうではないか」

「そうですよ、それに帰ったら季衣が用意してた、お肉が食べ頃ですよ」

「そりゃあ楽しみだ。早く元気にならなきゃな」

 

 

そういや出立前に季衣が肉を買ってきてたな。偵察任務が終わる頃には食べ頃になってるか。

 

 

「では、各自散開して周囲の偵察を……」

 

 

秋蘭が兵士達に指示を出そうとした、その瞬間だった。複数の弓矢が飛んできて兵士達を貫いた。

 

 

「なっ!?」

「敵襲だ、散開しろ!」

「楽な偵察任務……って訳にはいかなくなったか……」

 

 

流琉が驚愕し、秋蘭が兵士達に指示を出す。俺は飛んできた矢の方角に視線を移す。其処には蜀の兵士達と思われる連中が弓を構えていた。

 

 

「ちっ、逃げるぞ!」

「し、しかし……」

「え……」

「秋月の言う通りだ!散開しながら距離を取れ!」

 

 

俺の叫びに兵士達は慌てた様子だが秋蘭の一声で一斉に動き出す。

 

 

「走れ走れっ!」

「純一さん、さっきよりも元気じゃないですか!?」

 

 

一目散にダッシュした俺に流琉が叫ぶが、こんな時に体調が悪いって言ってらんないっての。

 

 

「前にも敵が!」

「舐めんなっ!」

「ぎゃっ!?」

 

 

前を走っていた兵士が叫ぶと同時に俺は飛び蹴りで前方の敵を蹴り飛ばす。

 

 

「秋月、前を頼む!」

「おう、任せ……どわっ!?」

 

 

秋蘭の頼みを受け入れようとした瞬間。俺の足場が崩れて体勢を崩してしまう。って……ヤバイ!?

 

 

「秋月!?」

「純一さん!?」

「俺に構うな!生き残る事を考えろっ!」

 

 

崖から落ちる俺に秋蘭と流琉が手を伸ばそうとしたが俺は拒んだ。俺よりも自分の事を考えな。俺は山の斜面から転がり落ちながらそんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごふっ!?」

 

 

結構急な斜面を転がり落ちていたが崖の下に到着したのか俺の体に激しい衝撃が来た。

 

 

「ぐ……かふ……」

 

 

ヤバい……まともに呼吸が出来ない……俺は立ち上がれない体を起こしながらなんとか近くにあった岩に背を預ける。

 

 

 

「ふぅ……はぁ……随分と落ちたな……」

 

 

山の斜面を見上げると結構な高さだったと言うのが解る。よく無事だったな俺。

 

 

「痛ててっ……秋蘭達は逃げられたかな?」

 

 

痛む体を動かす。節々が痛いけど折れちゃいないな……

 

 

「兎に角……秋蘭達を探さないと……」

 

 

なんとか立ち上がろうとした時だった。近くの茂みがガサガサと揺れる。

 

 

「誰だ!……って……おい……」

 

 

茂みの置くから出てきた奴を見て俺の頬はピクピクと震えた。俺はこの局面で再会したくない奴と再会を果たしてしまった。


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