真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百十五話

 

 

 

 

「大体ね、アンタは……っ!」

「いや、俺ばかりに責任がある訳じゃ……」

 

 

桂花と口喧嘩する俺。はて、どうしてこうなったんだか……と少し前を思い出すと俺は朝食を済ませた後に警備隊絡みの事で桂花と話をしていた。最初は普通に警備隊の話をしていた筈なのだが途中から桂花の機嫌が悪くなっていき、現在に至る。俺が何かしちまったのかと聞こうかと思えば飛んでくるのは罵詈雑言。原因の切っ掛けすら掴めない状態だ。

 

 

「た、種馬の癖に二人きりになったのに手を出さないって……どうなのよ!」

「………ほほぅ?」

 

 

罵詈雑言の中に本音が混ざってた模様。なるほどなるほど。

 

 

「あ、その……違っ……」

「そうだよなぁ……この間の手錠の時にも期待させといて結局何も無かったもんなぁ……」

 

 

俺はユラリと桂花に歩み寄る。桂花は自分の失言とそれを望んでいた事を俺に察知された事の羞恥で顔が赤くなって涙目になっていた。ああ、もう……可愛いなぁ。

 

 

「それはそうと……そんな罵詈雑言を出してしまう口はよろしないかもなぁ」

「な、何よ……もともとはアンタが……んっ!?」

 

 

何かを言おうとした桂花の唇を俺は自分の唇で塞ぐ。驚いて抵抗しようとした桂花だけど、すぐに落ち着いて俺に身を委ねてくれた。本当にこう言う時はすぐに素直になるな。

 

 

「……っは」

「ん……あ……」

 

 

俺と桂花の唇が離れると互いに息を吸う。急だったし驚いたから長くは出来なかったけど充分に……

 

 

「や、駄目ぇ……もっとぉ……」

 

 

次の瞬間『刺し穿つ死棘の槍』が俺の心臓を打ち抜いた。

桂花はトロンとした瞳と表情で俺の首に腕を回して抱きついてきたのだ。いや、もう……反則過ぎるぞ。

うん、朝だけど……いきなり大人タイムだなコレは。

そう思いながら俺は桂花を押し倒そうとした。

 

 

「桂花?先日決まった草案の件なの……です……が……」

 

 

なんてまあ……図った様なタイミングで栄華が訪ねて来た。

栄華は俺と桂花の状況を察すると分かりやすく顔の下から上へとメーターが上がるみたいに真っ赤になっていく。

 

 

「な、何をしてるんですかっ!?」

「うーん、男女の……へぶっ!?」

「答えないでよ馬鹿っ!」

 

 

栄華の問いに答えようとしたら的確に顎にアッパーが来た。

この後、めちゃくちゃ説教された。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

さて、説教受けてから警備隊の仕事を済ませた後、俺は鍛練場に来て気を高めていた。

 

 

「今の俺なら……出来る」

 

 

俺は両手から気を放ち頭上で気のアーチを作る。アーチをキープしながら更に力を込めていく。

気による戦い方のコツを掴んだ俺は次のステージへと向かうべく様々な事を考えた。

気を刃にして攻撃できるのであれば気を爆弾の如く破裂させて広範囲への攻撃が出来るのではないかと。気を爆発させる事は以前、熊相手に自爆技で実証済み。ならば、その爆発を相手に気弾として放ち、着弾と同時に爆発を引き起こせば大ダメージとなるだろう。

 

 

「よし……行くぞ!」

 

 

俺は上手く行くと確信していた。なんちゃてシルバースキンやなんちゃてパワーボールも上手く扱う事が出来たし、俺の気を扱う技術は向上している筈。

俺は両手から発して頭上でアーチを作っていた気の塊を頭の上で手を組み、合体させる。

 

 

「これぞ究極の爆発呪文イオナズンッ!」

 

 

俺は両手を突き出して気弾を放つ。俺の両手から放たれた気弾が放たれ……あれ?前に飛ばない?あ、なんか手元で光が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恐らく今回は……気を意図的に爆発させようとした為に気の制御が上手くいかず副長の掌から気弾が放たれる事がなく、更に『爆発させる』と意識していた為に爆発だけは上手くいった……と思います」

「冷静な解説ありがとよ」

 

 

鍛練場には爆発によるクレーターが大きく出来ていた。俺はその中心でボロボロになりながら音を聞きつけて来た凪の解説に耳を傾けていた。久々にヤムチャしちまったよ。気絶はしなかったけど。

 

 

「しかし凄い爆発でしたね。城が揺れましたよ」

「ドリフだったらアフロになるレベルの爆発を引き起こしたな」

 

 

一刀が驚いた様子で告げに来るが俺が一番驚いてんだよ。

しかし、まあ……今回の事で気の取り扱いが更に難解になったが……

今回の失敗は普段と違い『気を練る』『気を放つ』だけではなく『気を練る』『気を制御する』『気を放つ』『気を爆発させる』とした為に失敗。結果として『気を練る』『気を爆発させる』だけが発動。結果、自分の手元でイオナズンが炸裂した訳だ。

 

 

「とりあえず穴埋め作業しましょうか」

「………そーね」

 

 

手慣れた様子で俺の作り上げたクレーターの埋め立て作業を開始する警備隊面々。

 

 

「いつもすまないね」

「それは言わないお約束ですよ」

 

 

俺の言葉に苦笑いながらも作業を手伝ってくれる一刀。

この後、大将と桂花に呼び出されて、むっちゃ怒られた。

桂花は先程の事が途中で中断された憤りも含めて怒ってた気もするが。

 

 

 

 

 

 




『刺し穿つ死棘の槍』
fateシリーズのランサー『クー・フーリン』が編み出した対人用の刺突技。真名解放すると槍の持つ因果逆転の呪いにより「心臓に槍が命中した」という結果を作ってから「槍を放つ」という原因を作る。つまり必殺必中の一撃を可能とする。


『イオナズン』
ドラゴンクエストシリーズに登場する呪文で『イオ系』最上位呪文で、大爆発を起こし敵全体に大ダメージを与える。全シリーズを通して相手に与えるダメージがデカい呪文。
DQ9以降では更にこれを上回る呪文として『イオグランデ』が存在する。
『ダイの大冒険』でも魔王ハドラーが使用しており、呪文を放つ際には両手を使わねばならない。これは他の極大呪文にも共通していた(ベギラゴン、バギクロス等)


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