ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

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特別編 IFプロローグ~後日談~

「と、いうわけでだ。セフィの奴が勝手にララとお前らのせがれを婚約者にしちまって、ザス達もララの護衛のために地球に居残ることになった」

 

 デビルーク星の王城、その玉座に偉そうに座るギドの言葉に、その目の前で跪くどころか首を垂れることすらせずに直立している赤髪を長く伸ばした女性がケラケラと笑う。

 

「いやー、ララちゃんも面白い事やってくれるねー。それにうちの息子もギドに直談判するなんて、アハハハハハ!」

 

「ったく。笑い事じゃねえぞ、ミーネ……しかしまあ、言われてみりゃアイツを婚約者に仕立て上げりゃ話は早かったな、なんで気づかなかったんだか……」

 

 女性――ミーネの笑いながらの言葉にギドが呆れたようにため息をつき、次にニヤリと笑った。

 

「まあ、これでララも納得しただろう。後は頃合いを見てアイツを後継者として王座を渡せば終わりだ」

 

「……ギド」

 

「あん? なんだよ、セシル」

 

 ギドのニヤリとしながらの言葉に、女性の隣に立つ、青色の長い髪を後ろで一本に纏め、コートを纏いそして口元を隠すようにマフラーを巻いた男性がギドを呼び、ギドもその相手――セシルの名を呼ぶ。

 

「お前が王座を誰に渡そうが、そいつが王に相応しい限りは俺に興味はない……エンザがそれに値するかはまた別の問題だがな」

 

「何が言いたい?」

 

 その言葉に、セシルがまるで水晶のように美しい青色の瞳からの鋭い視線でギドを射抜く。

 

「お前の我儘にうちの息子を、そしてこの国、この銀河を巻き込むな、と言いたいだけだ。お前がさっさと王座を誰かに継承して隠居し遊び回りたいと思っているのは知っている。だがお前が勝手に消えて国が揺らげば、最悪この銀河は再び戦乱の世に逆戻りだ……ギド、お前は銀河を統一した帝王だ。その座の重さを忘れたとは言わせん」

 

「チッ、めんどくせえな」

 

 セシルの言葉にギドは舌打ちを叩いて彼らから顔を背け頬杖をつく。外見は完全に拗ねた子供であった。

 

「お前に言いたいことは簡単な事だ。婿入りはせめてエンザの、そしてララ様の成人まで待て。そしてエンザの婿入り後は最低でも五年はお前かセフィ様の下につけて王の責務を覚えさせろ」

 

「まーアタシらは戦いが飯の種だけど、銀河大戦みたいな大きな戦いはしばらくごめんだしね。デビルーク王にはそれなりの者がなってもらわなきゃ、エンザみたいな未熟者に今のままじゃそれはムリムリ」

 

 セシルはエンザをデビルーク王の後継者にさせるならそれなりに成長を待ってまずは下積みさせろと、ミーネもデビルーク王という称号の重さを理解してそれに相応しい者としてエンザが成長する事を期待する。

 そんなエンザの両親二人の言葉にギドはふんと鼻を鳴らす。

 

「んな面倒くさい真似はごめんだ、と言ったら?」

 

「力ずくで言う事を聞いてもらう」

 

 相手の言葉をあらかじめ理解していたのか、素早く腰に差していた銃を抜くセシルと刀を抜くミーネ。なお近くで待機していたデビルーク王族親衛隊の面々は慣れているのかスルーである。というよりも彼らがかかったところで返り討ちが関の山のため放っておくしかない。

 そんな武器を抜いた二人と、それを鋭い目で見下ろすギドの間で火花が散り、場が膠着する。ピリピリとした威圧の中、その威圧を解くようにはぁ~と大きく息を吐くのはギドだった。

 

「わーかったよ。力を失っている(今の)状態でお前らと一戦交えるのも避けてえしな。お前の言う通り、婚姻の儀はあいつらの成人まで待ってやる」

 

 片手で頬杖をつき、もう片手でひらひらと手を振るギド。要求が通ったとセシルとミーネが武器を収めると、ギドは再び彼らを見下ろした。

 

「話は変わるが、というよりもこっちが本題だ。さっき言った通り、ザスティン、ブワッツ、マウルがララの護衛で地球に残ることになったからな。お前達には客員としてデビルーク王族親衛隊に一時入隊してもらう。もちろんそれなりの待遇は約束してやる」

 

「了解だ」

 

 ギドの言葉にセシルが二つ返事で頷く。ギドとセシルはギドの武者修行時代からの親友、デビルーク王族親衛隊という、その気になれば王の暗殺さえも狙える地位にその王であるギドが指名するのはそれほど長い付き合いからくる信頼である。

 

「あと、ついでに教官としての権限もやるから親衛隊の新入り連中を少ししごいてやれ。銀河大戦を実際に戦ってない奴らだ、それを生き延びた奴の力ってもんを体験させてやれ」

 

「オッケー! 任せといて!」

 

 続けての言葉にどんっと胸を叩き自信満々な様子を見せて頷くのはミーネ。

 最近の若いもんはと言うつもりはないが、銀河大戦を経験していない新入りはこの平和に慣れて若干平和ボケしている節がある。ザスティンは変なところでドジを踏むし、妙に甘い部分がある。そういうのがない彼らの訓練で刺激を与えるのも一興だろう。

 ギドはそう考えてクククと笑みを浮かべ、この場に待機するまあまあ中堅程度の経歴を持つ親衛隊隊員は、新入り達の未来を思って気の毒そうな遠い目を見せていた。




 一昨日特別編投稿して、昨日仕事中になんとなく後日談というかギドとミーネとセシルの駄弁りが思いついたから、昨日今日でさっと書いてみた。
 なんかギドだったらエンザという仮にも昔から知ってる奴相手なら隠居のために問答無用のごり押しでデビルーク王の座を押し付けてきそうだから、そのご両親に抑止力になってもらいました。
 ちなみに本編の方でも大体似たような経緯(地球に残ったザスティン達の代理)でセシルとミーネはデビルーク王族親衛隊客員剣士(銃士)兼デビルーク王族親衛隊教導官になっているという設定です。

 まあ今回はそんな感じでさっと書いてみた後日談程度で、語ることもあまりありませんので。そろそろ本編何かネタないか考えてみます。
 では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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